今月はよく海上で昆虫を見かけました。
しかもほとんどの場合その昆虫達は観察地が房総半島の南端の地域であるにもかかわらず南寄りの沖合いから飛んできます。
多いのは何種かの蝶ですが、トンボも見られました。
いずれも海上では捕獲が難しく種類が確定できないのですが、内一種はウラナミシジミと思われます。
毎年秋になると海岸に生えるハマエンドウの葉にウラナミシジミが集まり産卵をしているところが観察されます。
今年もちょうど海上で蝶の飛来頻度が高くなった頃にその様子が良く見られました。
しかしウラナミシジミの本当の目的は南房総で冬に栽培されるソラマメのようです。
成虫はソラマメに産卵し幼虫はマメを食べますのでウラナミシジミはソラマメ農家には害虫とよばれてしまいます。
海上ではアカウミガメをすっかり見なくなりました、アオウミガメは夏とほとんど変わらない頻度で出会いますが数は減っているように感じます。
孵化の季節が終わったのでアカウミガメの巣の調査をいくつか行いました。
孵化の時期を半月から1ヵ月過ぎた巣を掘り返し、孵化率と孵化に失敗した卵の発生率を調べました。
今年は巣に柵を設置しなかったので、巣を再確認することが難しいのですが海女さん漁師さんが昔から使っている方法を使いました。
山立て(やまだて、やまあて、やまたて)といい、目印の無い海面で目的の場所と背後の景色の重なり具合とを何通りか記憶して交点に目的地点を見出す方法です。
海女さんなどは誰々さんの家と何処々の山の天辺の…とか覚えるそうですが、私は海亀の巣を全て覚えきれそうも無いので巣が見つかった日に巣の位置を示す目印と背景を含めて撮影し、掘出し時にはプリントした写真を使って同じように場所を探り当てる事が出来ました。
これが思った以上にピンポイントで巣を見つける事が出来ます。
まだ調査の終わっていない巣がいくつかありますが台風で流出してしまった巣を除けば良い確率で孵化が成功したことが確認できました。
孵化の季節に夜間、子亀が巣からの脱出を待つのはワクワクしますが、継続的に考えると巣から出てくる子亀には警戒されるかもしれないですし、労力もかなりのものになります。
しかし孵化の終わった後に巣を掘り返す方法であれば子亀は人間の気配に怯えることも無く自由に海に帰れますし、調査する人間の方も昼夜逆転の生活をしなくても済みます。
来年も多くの母亀が上陸し、多くの子亀が海に帰ることができるよう調査を進め、環境の改善を目指したいと思います。
参考文献:日浦 勇 著,1973.海を渡る蝶,蒼樹書房.
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