今月もウミガメの産卵がいくつか確認できました。
南房総市白浜町では上陸回数は4うち産卵は2、同市丸山町で上陸が1、館山市の平砂浦海岸では上陸が1確認できました。
白浜町は根本海岸から滝口までの区間をほぼ毎日と上陸が見つかった場合は卵の有無を確認しています。
館山市と南房総市の千倉町から和田町(和田港の南)にかけての調査は1ヶ月に2回のペースで行なっており、現場では上陸痕の確認、記録に留め、卵の有無も確認していません。
もう少し余裕があれば南房総全体を完璧に調べてみたいものですが、なかなかそうも行かずここまでの内容になっています。
産卵の調査は私がひとりで行なっていますが方法は毎日調査している白浜町では車でポイントごとに移動して砂浜は歩きます。
平砂浦海岸では大潮の時期を狙い、マウンテンバイクで潮間帯を走ります。
千倉から和田にかけての海岸も千倉の海水浴場まで車で自転車を運び海岸線にあるサイクリングロードを走りながら足跡を探します。
このサイクリングロードはなかなか気分の良い道で平砂浦海岸のように自転車が砂まみれにならないですし心地よく調査できます。
しかしウミガメの立場で見てみると、この道の為に砂浜と植生がキッチリと分断されてしまっているのが分かります。
一部は道の海岸側に植生が発達していますが産卵に上がった足跡が道路でUターンしていることもよくあります。
植生の薄っすらと生えた砂浜は砂の侵食が遅く台風で波を被った時にも根が張っているお陰で砂が流されにくいので産卵に適しているようです。
海岸に育つ植物はあまり何かの役に立っているようには見えないかもしれませんが海岸に砂を保持する事にひと役買っています。
海岸の植物にはきれいな花を咲かせるものがありますハマニガナやネコノシタは普段とても地味ですが夏になると黄色い鮮やかな花を栄養の少なそうな砂浜に咲かせます。
海岸植生の中でこの季節に特に目立つのはハマユウまたはハマオモトと呼ばれる白い花を咲かせるヒガンバナ科の大きな植物です。
種子は大波の時に海に流され漂着した先で芽を出し分布を広げて生きます。
また夜にはマツヨイグサの仲間が月に照らされて咲いています。
日中になると花がつぼんでしまいますが朝早くに行くとオオマツヨイグサ、コマツヨイグサの花が見られます。
今月は台風も接近しました。
台風4号(マンニィ)は日本の太平洋岸を洗いながら房総半島の沖をかすめました。
接近前には非常に警戒していたのですが館山市では不思議なくらい風も雨も弱く拍子抜けした感もありました。しかし砂浜ではやはりそれなりに高波が打ち寄せた形跡があり産卵巣もほとんど波を被ったようでした。
海岸では大量のカジメ(海藻)が打ちあがり波打ち際を埋め尽くしました。
白浜町の産卵地の一部ではカメが上陸できないだろうと思われる量に及びました。
海水浴場では海開き前に片付けるために砂浜に深い穴を掘り海藻を埋めるなどして対処していました。
漂着物は放って置いても微生物や波がいつかは片付けてくれるのですが海水浴場にするためには仕方が無いことなのでしょう。
大量の海藻を海岸に漂着したままでもウミガメは上陸しにくいと思いますが、それを片付ける為に海岸に重機が入り砂を柔らかくしすぎたり、やっと育った植生が根から取りさらわれてしまう事も気がかりでした。
海水浴場にするために海岸環境に手を加える事がどれくらい影響しているのかも気になります。
特に今年の根本海岸は車の安全を優先してかなり砂浜を硬くしていて、そこではまずウミガメの産卵は出来ない状態でした。
一方では柔らかすぎる砂浜とウミガメが上陸してきても適当な産卵場所が見つけられないのではないかと心配しています。
海岸のテントと自動車の間を縫って上陸するウミガメが結局適当な砂地を見つけられず海に帰っていくということが毎年のように繰り返されてしまっています。
もし機会があったら根本キャンプ場を見学に行ってみてください。
ここでウミガメの産卵が行われているという事に驚かれる事と思います。
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