カヤック日記


2011年10月の出来事


カヤッカー 今月は7月に一旦ツアー予約解禁した際にご予約頂いていたツアーを数回行ないました。
海はどの日も良く凪いでのんびり海を楽しめる日になりました。
それでも津波対策として「上陸できる海岸が続く海域で更に上陸後に走ればすぐに十メートル以上の高さに到達できる」という条件を選んで漕いで頂きました。

津波とか考えずに心の底からのんびりできる日が早く来て欲しいですが、なんだかまだちょいちょい揺れるのが気になります。 さらに房総沖ではスロースリップなる事象も観測されたそうで、まだまだ油断できないという感じです。
こういうネガティブな情報は仕事上は当然マイナス要因なのですが、それが事実である以上は受け入れて判断していく必要があると思います。 つまりカヤックツアーに参加されるお客さんの安全を確保する為の情報は出来るだけ仕入れて、お客さんの不安要素も出来るだけ理解したうえで説明し「出来るのか、出来ないのか」を判断するのも仕事だと思うのです。
前日夜に天気判断をして決行か中止かを判断するのと同じなのだと考えています。

秋な海辺

こういう欲しくない情報がどんどん減って、本当にカヤックと海を心から楽しめる時が必ず来ると思いますので慌てず待ちましょう。
来年の夏が今から楽しみだったりしています。(気が早い…)

海岸はすっかり秋の景色、ハマススキかススキなのか分からないけれど海岸沿いには所々に群れがあり秋らしさを演出してくれています。
ハマススキは「サトウキビの類なので茎は甘みがある」と書かれていますので齧ってみれば分かるようなのですが、以前海岸でススキを見ては齧ってみて、その度苦いだけだったので(ススキだったのでしょう…)最近はどちらでも良いような気がしてきてしまいました。
好む場所が重なるセイタカアワダチソウに生息地を追いやられている様子のススキですが、セイタカは潮風が嫌いな様子で海岸ではあまり見かけません。
お陰で海辺は昔ながらの日本の秋を感じられる幸せな場所です。

10月に入るとユリカモメも良く見られるようになりました。 他にもオオセグロカモメが先行して飛来していたウミネコに混じって群れを作っています。
ウミネコは震災で繁殖地が崩落などしたという事でしたが、実際飛来するもので幼羽の個体が少ないようです。 親鳥の個体数が減る事は無かったと思いますから来年の繁殖期には今年の分も沢山増えると良いですね。

ユウヤケユリカモメ







この季節の海はヒカリがとてもきれいです。
良い角度で海面を照らす時間が長いですし、雲の形も様々飽きません。 夕日も柔らかくも鮮やかな絶妙な色合いを楽しめます。
風が強かった日の次の日には砂浜の模様が斜めからの光に照らされてくっきりと浮かび上がります。
日照時間が短くなってプランクトンが減り、水の透明度も高くなりますので水の中に入った光が鮮やかな青を見せてくれます。

海岸で見る景色も素晴らしいですが、やっぱり海の上は格別です。 やっぱりカヤックで海に出ないと感じられない事が多く、岸を歩くだけでは物足りなさを感じます。

スナビキソウ 水の上にいられる事が当たり前になり始めていた頃に、当たり前でないと感じさせる出来事が起きたのでこれから先もまたそのありがたみを噛締めながら漕ぐ事が出来そうです。
だからと言って大地震に感謝する気にはなれないですが、まだカヤックを漕ぐ事が出来る環境がある事に改めて感謝したいものです。

台風の高潮で波を被り枯死した海浜植生の中で早々に再起してきたのはやはりスナビキソウでした。
表面的には死んだようでもこの植物には潮に強い地下茎という強力な生存戦略があり、少しすると新芽がニョキニョキと芽吹いてきます。
それは秋なのに春っぽい風景です。

地下茎を持たない植生はこの時に山側に追いやられてしまい、分布拡大速度の遅いスナビキソウはこの隙に勢力を取り戻します。
シケ大歓迎というわけです。


クコの花 一見すると速度が遅く他の植生が広がるとすぐに埋もれてしまう様子は貧弱ですが、実は密かに地下に力を蓄えて着実に広がっていく姿は堅実で見習いたい自然のひとつです。
ウサギとカメ的な感じもありますね。

春になると毎年やっていたスナビキソウに集るアサギマダラというチョウの調査は今年のいろいろな出来事のために行ないませんでした。
来年の春にも変わらずスナビキソウが花を咲かせアサギマダラが集う姿が見られるのでしょう、来年はしっかり調査再開したいと思います。
春も楽しみですね〜。

今、海岸ではクコの花が控えめにきれいに咲いています。 是非見に来てみてくださいね。


引用図書
野山の植物 (自然観察シリーズ)



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