またザトウクジラが漂着しました。
場所は館山市の西端に位置する洲崎(すのさき)灯台に近い内房側の岩場です。
写真のようにすぐ近くには別荘が立ち並んでいますが、北に面している為に特に冬の海からの風波が激しく、定住している人は少ない場所です。
サイズは国立科学博物館の石井さんと測ったところ8.4mでした。
今回は準備ができず解剖調査は無しでした。
2年前の同市沖ノ島のザトウクジラとサイズ、鮮度は大して変わりませんが外部寄生生物が全く見られず不思議でした。
7日に発見され、12日になって船に挽かれて同市塩見(シックスドーサルズの住所のあるところです)で埋められました。
こうして千葉県の海岸にはあちらこちらにクジラが埋まっていきます。
2010年1月に沖ノ島に漂着したザトウクジラは国立科学博物館等、多くの人達とかなり頑張って肉を削ぎ落とし、骨の配置が分かり易いように埋めたので骨格標本に適した状態になっている事が期待できます。
しかし当初乗り気だった安房博物館も館山市も全く興味を失ったらしく、先日には骨の埋められていた場所を示す杭も撤去されてしまいました。
大きな構造物、建築物には惜しげなく出費する館山市ですが、残念ながら人がどれだけ頑張っても造ることのできない貴重な自然物には価値を見出すことができないようです。
博物館は単なる建物ではなくて「中に何が入っているのか」で初めて意味が生まれるものの筈なのですが…。
ザトウクジラは冬に小笠原や沖縄で子育てしながら過ごし、春には日本列島よりもずっと北へ移動して行く旅の季節です。
今回の若いクジラは残念ながらその人生初の旅を完結できずに死んでしまいました。
ただでさえ厳しいはずのその旅は人間活動の海への広範囲で高密度の進出で更に困難なものとなっているのでしょう。
今回の事例が人活動によるものでないことを願いたいですが、東京湾外湾は多数ある定置網へのクジラ混獲が度々起きている海です。
クジラも中層で網にかかってしまえば溺れてしまうのです。
またクジラさえも小さく感じさせるような巨大な船舶も多く、衝突があっても不思議はありません。
我々陸で暮らす人には見えない沖を通り過ぎていくとはいえ、このクジラたちも一時は南房総に立ち寄る仲間です。
もう少し気を使ってあげられれば良いのですけれど。
今年初めから観察を続けていたミナミハンドウイルカは春のシケ続きもあり全く観察できませんでした。
3月の時点で岸寄りに来る事が減っていましたから白波の中では見つけることが困難になります。
それにしても時々の凪ぎの日にも見る事はなく、少し行動範囲が変わったと考える方が自然なようです。
季節的な餌の変化に伴う移動などがあるのかもしれないですが良く分かりません。
ちょっと範囲を広げて探していますが、今のところ見つける事ができていません。
また気長に探し見ようと思います。
逆に言えばどこにいても不思議でないという感じで楽しみが増えています。
今月はヒメウの大群が東(北)へ向かうところが頻繁に観察できました。(写真上)
特に千葉県南端の白浜町では、多くの群れが突端近くの海上を飛んで行くので密度が高く、日に何度も写真のような光景を見る事ができます。
遠目に切り取り線のように見えるその線は風や沿岸地形に影響されて次々に姿を変えていきます。
ヒメウは普段数の多いウミウの群れに混じって1羽でいることが多いですが、季節移動の際には寄り集まってウミウよりも大きめな群れをつくって飛んで行きます。
彼らも毎年繰り返される旅の途中です。
毎年春になると砂浜に咲くスナビキソウ(写真上)には「待ってました!」とばかりに「渡り」で有名なアサギマダラのオスがやって来ました。(写真のチョウ)
未だ何処から来て何処に行くのかはっきりしていない南房総のアサギマダラの調査を今年も始めます。
今年こそは何か発見があると良いな…とあまり期待せずしかし楽しみにやっていきたいと思います。
皆さんも海岸でアサギマダラを見たら翅に何か書かれていないか見てみてくださいね。
それでもしも何か書いてあったなら是非写真を撮って送ってください。
何かきっと小さな発見があるかもしれません。
コチドリ(写真左)はコロコロした石のような岩の欠片が転がる海辺で間もなく巣を作る様子、あちこちでなにやら忙しそうに動き回っています。
良く似たシロチドリもきめの細かい砂浜で住み分けて同じように子育ての季節を過ごしています。
巣らしい巣を作らずに地べたに卵を置くだけのシンプル生活ですので、皆さんが海岸を歩く時に卵を踏んでしまわないようにチドリがセワセワしてたら足元に御注意くださいね。
ウズラの卵そっくりな卵が3つほど産んであるかもしれませんよ。
下の写真は平たいナメクジみたいなイソアワモチ、案外かわいくて長々と眺めてしまいます。
彼らは空気呼吸なので潮が引くと活発になり、岩にくっ付いた藻類を食べるのでしょう、モソモソと良く動きます。
房総の海辺には地味で楽しい発見が有り余ってます!
御参考
2010年1月20日に沖ノ島に漂着したザトウクジラ(2010年1月の日記)
http://www.6dorsals.com/column/1001.htm
国立科学博物館、海棲哺乳類情報データベース「千葉県館山市でザトウクジラ漂着」(2010年1月20日)
http://svrsh1.kahaku.go.jp/m/mm/?p=2032
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※『』内「えねぱそ」サイトより引用
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