カヤック日記


2013年5月の出来事


真っ白なハヤブサのヒナ親鳥が離れた隙に顔を見せてくれました 4月に始めた某ハヤブサ巣の観察。漕いで行かないとアクセスできない場所なので海の様子と自分の都合に合わせて気ままに続けました。

この辺りに初めてハヤブサを見つけたのはいつ頃だったのか?ちょっと思い出せないのですが、繁殖の気配を感じたのは2004年の様です。 「様です」なんて曖昧な表現ですが、カヤック日記を振り返ってみると2004年2月に番らしい2羽のハヤブサを見かけています。
しかし、この頃はそれまで定着していたミナミハンドウイルカの群れが見つからなくなった頃と重なり、イルカを探すのにかなり時間を割いていた事とシロチドリの繁殖記録に興味が強くなっていて、同じ季節のハヤブサの繁殖確認には結局力を入れなかった記憶です。
更にはスナビキソウ群落にアサギマダラを見つけ、マークを書き入れる移動調査を始めたのもこの年でしたので、ハヤブサは興味深いけど余裕が無いという状態だったのです。
その頃使っていたカメラも崖上にいるハヤブサを記録をするためには十分とは言えないものでした。

巣からやっと離れ、羽ばたきの練習をしているハヤブサ幼鳥 そんなこともあり巣を見つけてからも継続記録はせずにたまたま漕いで行った時に見て、一応の写真を撮っておく程度の観察でした。 その後カメラとレンズを買い、継続記録を始めたのは2008年になってからでした。

それからは感情移入もあってか2009年、2010年と興味を持って継続観察していました。 しかし2011年の繁殖活動が始まる頃になって東日本大震災が発生してしまいました。
結局、地震頻発と高頻度の津波警戒を考えて海からアクセスしなくてはならないこの巣の観察を中断。 その後2012年も観察をしませんでした。
今年こそは再開しようと思っていましたがハヤブサ次第ですので、とにかくは親鳥の行動を…と観察していたところ2010年に繁殖した時と同じ岩穴を使って繁殖を始めていました。
私が見に来なかった2年間も同じようにヒナが巣立っていったのかなと思うと、勿体無かったなぁとも思いますが…。
とにかく2013年、この巣では2羽のヒナが巣立ちました。 1羽が巣穴の崖下で死体となって見つかりましたが、もう2羽はとても元気です。

巣近くの斜面で佇むハヤブサの親鳥(写真右上、白い鳥) 南房総のハヤブサの繁殖ついては人による地形変更や餌の不足などの心配も無いですから見守る為の観察の必要性は低いと考えています。 むしろ、繁殖に適した海岸の減ってきているシロチドリやスナビキソウ、そしてそれを目指してくるアサギマダラの記録と比べると優先順位が低いと考えています。
ですからハヤブサに関しては記録を取ると言うより単純にハヤブサの姿やヒナの様子などへの好奇心や一方的な愛着による観察、撮影というようなものと考えています。
それにハヤブサは美しく人気もあり、私が強く惹かれるようにカヤックツアーに参加してくれるお客さんにも愛される対象でしたから、出来るだけ多くの出来事を見ておきたいという事もありました。
そういう意味では意外と気楽な観察対象であったハヤブサですが、福島原発事故以降は放射能の影響がハヤブサの繁殖に将来的に出て来るのかに少し興味があります。
過去、農薬の影響で繁殖率が低下した例は聞いた事がありますが、同じように放射能の影響が出やすい生態系で高位にある動物として、南房総のハヤブサに影響が起きるのかという事にも注意して見ておくべきかと思っています。

マークを入れさせてもらったアサギマダラ できる事は限られていると思いますが、変化を記録していくのがまず大切と言うスタンスはウミガメなどと変わりません。
ウミガメの方も6月1日から産卵調査を始めますが、こちらの放射能の影響も相変わらず心配です。 雑食のアカウミガメの餌が食物連鎖の低位にあるものであること、卵を産む砂浜の浸透性を考えれば放射能の影響が残りにくいと考えたいですが…。 さて今年はどんな記録が残るのでしょうか?

アサギマダラは今年は気温が低い日が多い為か数がとても少ないです。 白浜町では4月に1頭を目視したのみで、その後はスナビキソウへの飛来確認もできていません。
館山湾のスナビキソウ群落では一度に数頭が見られますが、多いとは言えません。 どんな影響で数が少ないのか、本当に気温で遅れているだけなのか気になります。

まさかマーキングがいけなかった、なんてことにならないでほしいですが…。 他の地域ではかなり膨大な数のアサギマダラにマークを入れていますが、マーキングを始めた後から戻ってくる数に変化があったような話は無いようです。

ハマダンゴムシの脱皮殻に寄って来たケシウミアメンボ マークをした後もそ〜っとスナビキソウの上に置いてあげると、そのまま吸蜜を始める場合もあり、思ったよりは落ち着いている印象ではあります。 出来るだけ影響の無いようにしなくては調査そのものの意味が失われてしまうので慎重に扱っていきたいと思っています。
今年はまだ5頭しかマークしていませんが、どこかで翅に写真のように文字のあるアサギマダラを見たら是非写真を撮って教えて頂けたら嬉しいです。 例えば同じ房総のスナビキソウ群落での移動でもハシゴの確認になりますから行動の経緯を記録するには役立ちます。 どうぞよろしくお願い致します。

アサギマダラで始まった海虫への興味対象のなかでも特に撮影に関して手強いのが海のアメンボです。
地域によっては希少なウミアメンボ。 沖合いにいるものもいますが、身近な潮溜まりにも南房総では当たり前に見つかります。
普通に見られるのはケシウミアメンボですが、しょっちゅう見ているのにやっとまともに撮影に成功しました。 動きが早く、小さいのでピントが合わせ難く、私程度の技術では大変苦労し続けていました。

夕焼けに染まる内房の海面 全長は2o程度。 餌が落ちてきたと思わせる為に海岸で拾ったハマダンゴムシの脱皮殻を落としてみたところ寄って来てくれました。
淡水のアメンボのように飛んで行ってしまう事はないのでじっくり観察できますよ。
今度潮溜まりに行った時には是非探してみてくださいね。











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