カヤック日記


2013年6月の出来事


新たに見つかった館山市のグンバイヒルガオ群落の一部 24日、館山市で新たにグンバイヒルガオの群落を見つけました。
海浜植物の一種で南西諸島では砂浜に普通に見られる種類です。 越冬が確認できている北限は房総半島なのではないかと思っているのですが、正確なところはよく分かりません。

夏になると時々漂着した種子が発芽しているのが見つかりますが、大きな群落になる前に台風で流されたり、冬にかれてしまうものがほとんどです。
今回見つけた群落は最長9.2mの幅がある大きな群落でしたので越冬しているのは間違いないのですが、今まで気づかずに通ってしまっていたことが悔やまれます。

写真は新たに発見した群落の一部です、大潮の海岸を自転車で走りながら見つけました。
アクセスが悪いために人の出入りがほとんど無く、打ち上げゴミも放置されているような場所です。
一見すると見苦しいですが、こういう場所こそゴミと同じく種子が漂着しやすく、重機を用いるような根こそぎ海岸清掃も無いお陰で種子が留まり発芽しやすい場所なのでしょう。

ハマボウフウの実 このように人にとっては興味の沸かない海岸こそ海浜植物の楽園になっていることが多く、人が自然に手を加えることが環境を退屈なものにしていることがよく分かります。
また大きく見れば海浜植物が見られない海岸は柔らかくて、しかし植生の根によって安定した砂丘が失われているという事ですから、ウミガメの産卵にも適さないという事が分かってしまいます。

以前から観察していた別のグンバイヒルガオ群落は周辺砂丘の造成などがあり心配していますが、群れの形態が変化してしまってはいるものの毎年8月には花を咲かせています。
今年は2ヶ所でその鮮やかな花が見られるので楽しみです。

関東ではどこの砂浜海岸にも人の手が加わり大抵のものが失われる方向に向かっています。 そんな中で以前は減少が心配されていたハマボウフウがいろいろな海岸で数を増やしてきていて、僕の知らない昔の南房総のレベルに達しようとしています。
ハマボウフウは若葉や根が食用、薬用に使われていた経緯から数を減らしていましたが、近代になってそういうものに興味を持つ世代が減ってきたことが回復の理由のようです。

若いヤマトマダラバッタ、砂に降りると保護色で見つかりにくくなります ある程度の数に戻ってきたら適正に活用するのは良いことだと思いますので、このまま増えていくと楽しみです。
食べられる海浜植物としてはオカヒジキがありますが、こちらは海岸によって状況が大きく分かれています。 人の手が加わらない海岸では別に心配することは無いくらいどこにでも見られますが、無いところにはとことんありません。

こちらは過剰採取が理由ではなく海岸清掃が関係しているようで、砂丘ではなく海岸の平地に分布する事から特に重機を用いる場所で数を減らしています。 他には海岸清掃の際に海浜植物まで抜いてしまうという不可思議な行為も影響しているようです。
以前たくさん繁っていたある海岸では海水浴シーズン前の海岸掃除の際に大量のオカヒジキが焚火にくべられていました。
なんでなのかまったく分からないのです、しかもその海岸は海水浴場ではなく観光で訪れる人はほとんどありません。
海岸で採取したオカヒジキやツルナで食事を作ってキャンプでおかずに添えたら良いのに勿体無い事ですね。 数の少ない海岸では採取をお勧めできませんが、海岸ごとに繁殖状況を判断して利用される事をお勧めします。

シロチドリの巣 海浜植物には思いのほか昆虫が多く、日本固有種で希少なヤマトマダラバッタをはじめ、先日沖縄から高尾山への移動が確認されて話題になったアサギマダラ、砂地に穴を掘って暮らすハチの仲間などはこれら海浜植物に強く依存しています。
海浜植物もそれらの昆虫になんらかの依存をしているでしょうからそれぞれを別個に考える事はできず、一緒に丸ごとある程度の規模で残していかなければ、そういう貴重な海岸は消えていってしまうでしょう。

海鳥の一種、シロチドリもそんな海浜植物の茂る海岸を好んで繁殖しています。 写真のように海浜植物の見られる砂丘付近でほんの少し窪んだだけの巣を作ります。
親は交代で卵を温め、日中暖かい日には放っておいて太陽に暖めてもらっています。
ヒナはすぐに親について歩き、天敵が現れると海浜植物の下や漂着物の陰に隠れてただただじっとしてやり過ごします。
そんなときにも海浜植物や漂着物は大切ですが、何より親が食べる餌が漂着物に集まる小生物ですから、まっさらで何も無い海岸では餌も見つからず繁殖に適さないのです。

海岸で最も目立つ花、スカシユリ 美しい花を咲かせる海浜植物は観光地に適したその有用性から保護されることもあります。 南房総ではスカシユリ、ガクアジサイ、ハマユウ、ハマヒルガオなどがそれにあたります。
きれいな花を優先的に残しても良いと思いますが、折角ですからその周辺に見られる地味で、食べられるわけでもない、役に立ちそうも無い(しかし必ず何かの役に立っている)植物もちゃんと一緒に見守ってあげられると良いですよね。

ウミガメの産卵の方もやや遅めながら順調に確認できています。
6月は5ケ所で上陸を確認しました。 また街灯の光害が問題となっていた根本海岸では過去に低圧ナトリウム灯への球換を行った場所で、光に惑わされずにまっすぐに砂丘へ向かって行く足跡が今回も確認できました。
母亀が光に惑わされて迷い無駄な体力を使う事無く、更に子亀も光に惹きつけられて道路で轢かれたりすることが減る事でアカウミガメの人活動の影響による繁殖の失敗を少しでも減らせる事ができたら良いなと思います。
来月以降もまだまだ増えるでしょう。楽しみです!


館山市から見る6月の夕日 お知らせ

先日FMラジオ、ベイエフエム(BayFM78.0)「ザ・フリントストーン」にてお話させていただきました。
放送内容は公式サイト内でお読み頂けます。
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