カヤック日記


2013年7月の出来事


16日の根本海岸上陸痕































今月はウミガメ産卵調査の主な対象地域としている南房総市白浜町の産卵があまり順調ではありませんでした。 1日、2日と続けて上がってきたので最初は出だし好調!と喜んでいましたが、次に上がったのは随分空いて16日の根本海岸でした。
しかも連休明けでやっと人が減ったのを見計らったような上陸にも関わらず産卵せずに、穴だけ掘って帰ってしまっていました。 原因は海浜植物の密生する砂丘を掘ったものの根が多く、十分な深さに掘りきれなかったというような状態でした。
数日後にはまたやって来るかなと思っていましたが、結局上陸はありませんでした。
連休を待っている間に期限ギリギリになってしまったのでしょうか?

千倉から和田にかけての海岸線はマウンテンバイクフィールド





















17日にも近くの海岸で上陸が確認できましたが、やはり上陸のみで産卵痕がありませんでした。 とても短い上陸で、上がってすぐにUターンしていて、偵察?という感じでしたが、上がった所で何か良くない遭遇でもあったのでしょうか?
23日にも上陸確認することができ、少しホッとしました。産卵もしてある様子でしたが、今度は非常に長い足跡で一旦は諦めかけたのか水際に戻った後に再度砂丘に登ったりしていました。 この母ガメが何に迷いを感じたのか本当のところは不明ですが、砂丘が海に近すぎて傾斜が厳しかったのが関係しているようでした。
結局白浜町では上陸が5ヶ所だけ、うち産卵のあったと思われるのは3ヶ所という寂しいものでした。

開花した館山市のグンバイヒルガオ































その他の不定期調査エリアは10日に千倉千歳で1ヶ所、22日に館山市平砂浦で2ヵ所見つかりました。いずれも卵は産んでありそうでした。
この22日には先日新しく見つけたグンバイヒルガオでも開花が見られたりもしました。 24日は千倉から和田にかけての調査で1ヶ所、卵のあると思われる足跡と巣が見つかりましたが、あまり芳しくない結果と思います。
ちなみに館山市と千倉〜和田間の調査は6-8月の間の月2-3回程度の不定期調査に行なっていますので、発見日が産卵日ではありません。 しかも足跡は風が強ければ1週間もすればきれいに見えなくなる事もあるので、これらのエリアに関しては完全な記録が取れているとは言えません。

海岸に打ち揚げられる美しいカツオノエボシ





















しかし少なくともまだウミガメが上陸しているという事実の記録はできると思っています。 また元々白浜町以外の調査を始めた理由が、白浜町の街灯の影響のある海岸での産卵と、街灯の無いその他の海岸での亀の行動の違いを記録する為ですので、全数記録はできなくても目的は達成しています。
もしもこれらのエリアを当日全日調査するとなると完全な専業にしなければ無理で、その為に人員を増やす事も考えていません。 気長にひとりで出来る範囲の調査を続けていくつもりです。
この2ヶ所の不定期調査エリアは距離が長く、全体を歩いて見るのは厳しいので、マウンテンバイクを使い出来るだけ走りやすいように大潮の干潮時刻を狙って上陸痕を探索しています。

砂浜に産んだ卵を暖めているのではなく、直射日光から護っているシロチドリの親鳥





















この調査では過去に上陸痕の他に多くのウミガメの死骸や、グンバイヒルガオ群落や白いハマゴウなどの南房総では希少な海浜植物の記録、オーストラリアから渡って来たミユビシギの脚環確認、千倉町沿岸のスナメリ発見などにも成果を出していて、少々キツイですが新しい発見がありそうでいつもワクワクします。
長い長い海岸線をひたすら走るのは気持ちが良いですが、時に海に注ぐ川は大雨の後には増水していたり、遠浅の場所では砂に水が染みていてタイヤが沈み走れずにひたすら押したりもします。 自転車にとってもとても厳しい環境で、潮風と砂に晒され、時には塩水の飛沫を浴びてしまうこともあります。 それでもマウンテンバイクの良いところを活かしたツーリングとしては新しい楽しみ方かもしれません。
今まで私が走っていて海岸をツーリングしているバイカーは見た事がありません。 時々見かけるのは近所の漁師さんくらい…。
道路には最近自転車がたくさん見られるようになりましたが砂浜はまだ手の付けられていない新しいフィールドと言えそうです。
もし興味のある方は是非御相談下さい。 自車持込頂ければ御案内させて頂きます。

ハマトビムシを捕食中のヒョウタンゴミムシ





















砂浜は広大で磯のように隠れる場所も少なそうで生き物のいない世界のように見えるかもしれません。
しかし自転車を止めて足元を見たり、ちょっと砂丘に歩いていって草の中を見てみれば生き物だらけで、山では見ない昆虫や草花がたくさん見られます。
海辺の生物観察というと大抵は磯観察を行なうと思いますが、砂浜の生物観察をもっと子供たち、大人たちにもしてもらいたいと思っています。
シーカヤックツアーではいつも砂浜から海に出、上陸していますので、休憩で上陸した時には砂浜の生き物を見て歩いてもらったりしていますが、これからは徒歩やマウンテンバイクを用いた砂浜、砂丘観察をもう少し積極的に進めていきたいと考えています。
またシーカヤッカーが大シケで海で遊べない日のアクティビティとしても砂浜MTBはお勧めです。 普段あまり使わない下半身の筋力強化にも役立ちますし、シーカヤッキングは漕ぐだけでなく単に海を眺めるのも楽しみのひとつだと思いますから海に来てみたら思ったよりシケてて漕げないからといって、海に触れるのを諦める必要もないでしょう。

砂丘の花ハマユウ(ハマオモト)





















シーカヤッキングは海の様子や海岸線をしっかり観察するくせをつける事で、安全で面白いルート選択や判断ができるようになります。 それは岸からもできる事で、自分が漕ぎ出すレベルではないと分かっている海も観察を繰り返しておくと実際にレベルアップして、そういう海に出た時にはその経験が必ず役立ちます。 ですからツアーではシケで中止になってしまった日にも海に来て海を見ることを以前からお勧めしていました。
そんな中で長い海岸線はアクセスが悪く、所々で車を停めて見に行くという感じになりますが、そんな時にマウンテンバイクはとても有効な手段となります。 海岸線ツーリングを楽しみながら次回のシュミレーションをするのも楽しいでしょう。
シーカヤッカーが車の荷台にいつもマウンテンバイクを積んでいるのが普通になると面白いなと思います。







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