写真:秋の海は最高です
台風が通り過ぎながら、秋を運んできてくれました。
水は澄んで、空気も適温の中、日差しもほどほどですが、南房総は海水浴シーズンを終えて静まり返っています。
これは最高にシーカヤッキングに適した季節ですので、是非ともツアーを再開したいところですが、同時に大きな地震もいくつか発生してしまい、まだ判断ができていません。
そこで、過去にシックスドーサルズのツアーに参加された方で、リカバリーの練習などもされた方に関しましては、ご相談のうえでツアーを開催したいと考えています。
もしご希望ございましたら、メールか、お問い合わせフォームよりご連絡ください。
よろしくお願いいたします。
今年の夏は房総半島はほぼ台風に縁がなく、ウミガメの産卵や孵化には条件の良い日々が続きました。
しかしこの9月には台風が順番待ちをするように発生し、北上してきました。
南房総に関して言えば、陸上の生活には大した問題はなく台風の被害を免れたという印象がありますが、海上はシケが続き、潮位が挙げた時刻には普段は波を被らない道路にまで波飛沫が上がるような状態も多くみられました。
そんな中、ウミガメの巣は多くが高波を受けたようです。
少なくとも私が主に調べている南房総市白浜町の巣はほとんどが波を受けました。ただ卵が流出したかどうかについては確認できていません。
恐らく館山市の平砂浦、南房総市の東岸の巣も多くが波を被っていたでしょう。
波を被ったからといって、即、卵が死んでしまうわけではありませんが、水の中にどれくらい浸かっていたかで生存率が下がると想像できます。
ただ実際にどれくらい水に浸かっていたら死んでしまうのか、水に浸かることの何が直接作用して死んでしまうのかは分かりません。
水に浸かっていても孵化できるという意見も聞いたことがあります。
実際のところはどうなのでしょう?
写真:波に洗われるウミガメ巣のある砂浜
写真で私がGPSを持って写っている写真は、台風が去った後の海岸で高波に洗われ続ける砂浜ですが、写真の中央あたりに巣があります。
この巣は8月12日に母亀の上陸がありましたので10月の半ばに孵化の予定の巣ですが、9月16日の前後に繰り返し波を受けています。
孵化の確認は最近は行っていませんが、ついでのある時などに巣の様子を見に行っています。
この巣も今月巣立ちがあるのか確認できれば良いですが。
台風は海浜植物にとっても試練となります。砂丘の最前線に暮らすスナビキソウ、ハマゴウ、オカヒジキ、ツルナは何度も波に沈んだりしながらも頑張っています。
ツルナやオカヒジキは根が浅く、繰り返し波に洗われながら剥がされてしまう事も度々です。
ただこれらの植物の種子は波に洗われて海へ旅立ち分布を広げる役目を持っているので台風が主な旅立ちのきっかけとなっています。
同じくスナビキソウ、ハマユウなど多くの海浜植物が海を旅してゆきます。
一方、陸の高いところ、砂丘の上部などへ持ち上げられるものも多く、その場合は親と同じ浜の中で分布を広げるという事に繋がります。
風に舞うタンポポの種子や、鳥に実を食べてもらい、糞となって他の地域で落とされる植物などと同じで、海浜植物の多くにとって海の水の運動が種拡散の大切な要素となっています。
この夏、海水浴場を整備するために重機が入る前に予め移植してみたオカヒジキがありましたが、一部は枯れ死し、一部は元気に花を咲かせ、種子をつけました。
しかし移植先が砂丘の中腹だった為、今回の台風の波は受けず種子の拡散は見られませんでした。
それでも数が減ってしまった種の維持には役だったかもしれないと思う一方で、ウミガメの卵の移植などと同じで根本的な事が解決しなければいくら移植をしても効果はないのと同じだと感じました。
写真:移植したオカヒジキ。ギリギリ波を受けていない
実際にはオカヒジキの種子は砂の中にたくさん残っており、例えば根本海岸では強い海風が吹き続けた後には海岸道路へ砂が大量に堆積するのですが、その中にも種子があります。
そのため、道路から除去されて砂丘の裏側に積み上げられた砂の上にはオカヒジキが密集していたりします。
更には風の当たらない波も来ない条件のため、巨大な株に成長しており、種子を維持する必要はなさそうです。
しかし、こういう場所でいくら多数の株が見られても種子が海へ旅立てないのであれば、種子の拡散は下流への供給はとまってしまいますし、海岸の生態系にも組み込まれず、ただ遺伝子が畑で育つ野菜のようにそこに残されているというだけになってしまいます。
オカヒジキの大きな株には様々な昆虫が見られます。
広い砂浜(後浜)では強い日差しから隠れる場所もなく、栄養源もあまり見当たらず、小さな生物が暮らすには厳しい場所ですが、オカヒジキはスケールはとても小さいですが砂漠の中の森のように見えます。
トンボ、クモ、ハサミムシ、ハエ、アブ、などの小さな生物がたくさん寄り集まってきています。
そんな小さな生物が広大な砂浜で暮らすことができるのはここくらいなものでしょう。
またその小さな生物が何かしら砂浜の生態系に貢献しているのも確かです。
写真:南房総市富浦で見かけたアカボシゴマダラ
20日には内房の海岸線でアカボシゴマダラというチョウを見ました。
南房総では珍しく、私も見たのは2度目です。
きれいな、白く大きなチョウで一目でアゲハの類とは見分けがつきます。
私もフワフワと飛んでいる姿を見つけた時には何のチョウかは分かりませんでしたが、この地域では普通見ない種だという事はすぐにわかりました。
写真はここに貼ってあるもの以外撮れませんでしたが、図鑑で調べて種を確認しました。
以前にも見たことがあることに気づきましたが、何年も前で、ファイルを探しましたが確かめられませんでした。
このチョウはもしかすると人が意図的に放してしまったがために定着、拡散してしまったと考えられていて、残念ながら完全に自然な出会いではないということのようです。
ずっと昔から動物、植物を運び定着させるという事をしてきているので、驚くようなことではないですが、自然と人為との境目がなくなってしまう残念さを感じました。
例えば人が歩くだけでも種子はついてきます、うちの庭には以前なかったコマツヨイグサが今年玄関の前に咲き始めました。
これは私がよく行く浜では多く見られる種で、恐らくは私の靴に付いた種子が目を出し花を咲かせたのでしょう。
靴に付いた砂と共にクルマに乗りやって来ました。
もしクルマでなく徒歩であったなら、もう少し海に近いところで種子は落下していたでしょう。
もともと外来種であるコマツヨイグサの子孫は我が家の庭の中でも生息範囲をどんどん広げています。
故意ではないけれど、結局人が関わると自然界では起きにくいできごとも、素早く起きてしまいます。
何か新しいものを見つけたときも「もしかしたら人間が?」と疑って記録しなければならないのは残念なことです。
写真:ウミネコの死骸にしがみ付いていたカニ
今まで見たことがない小さな出来事がふたつありました。
まずウミネコの死骸が海上に浮いていたのですが、これはそれほど珍しくはありません。
ただ、その体にカニがしがみ付いていました。
カニはしがみ付いているだけではなく、見たところウミネコの胴体を食べているように見えました。
持ち上げてしまうと行動が変わりそうですし、鳥インフルエンザなどもある時代ですので、素手で野鳥の死骸を触るのも危険ですから、観察して写真だけ撮りましたが、胴体でなくても何かしらを食べているという様子でした。
写真からカニの種を調べましたが、分かりませんでした。
なんだったのでしょう?
もう一つはオオスズメバチが海面で溺れていたことです。
ミツバチが溺れているのは随分見ていますし、摘み上げて刺されたこともあるのですが、スズメバチが水面に落ちているのは初めて見ました。
海上では冬以外には多くの昆虫が飛んでいます。
陸上のように餌を探している様子ではなく、真っ直ぐにどこかを目指してカヤッカーの目線の高さ前後を飛び去っていくものがほとんどです。
チョウや、ハアリは水面に落ちていることも多いのです。
このオオスズメバチを助けるのは少し怖いと感じ、かわいそうですが、そのまま見送りました。
今年は海食崖にスズメバチの巣を2か所見つけましたし、海上で飛んでいるのを見かけることも多かったように感じます。
写真:溺れるオオスズメバチ
砂浜でのウミガメ調査は8月で終えましたが、この9月には砂浜で自転車をこぐことが増えました。
館山市の平砂浦、南房総市の東岸から内房にある砂浜を含む素朴な風景を残した海岸線の細道などを調べながらこぎました。
これらの海岸線を今までカヤックから、海の方から見ることがカヤックツアーの主な楽しみでしたが、陸側の水際を丹念に広範囲に探索するには自転車が最適です。
またウミガメの産卵地でもある太平洋岸の長大な砂浜は、カヤックでアクセスするにも徒歩で歩くのにも難しく、時間や技術を要しましたが、潮の引いた太平洋岸の砂浜は、よく締まっていてマウンテンバイクでは手軽に走ることができます。
そこで、カヤックツアーでは見て頂ける頻度の低い、しかし砂浜ならではの自然が残された貴重なエリアをご案内するために11月よりレンタルバイクをご用意してマウンテンバイクツアーを行う事にしました。
カヤックツアーと同じく1日1組で最大4人までのツアーとし、仲間内だけで気軽に楽しんで頂けるようにします。
ギア付自転車の経験がない方でも広い砂浜では、交通ルール、クルマや歩行者の心配をせずにこげますので、安心して慣れて頂けることと思います。
また最大人数を少なくすることで環境への負荷にも配慮しています。
写真:太平洋岸の砂浜は広大
10月末までにはホームページ内でご案内できると思いますので、是非一度道路とは違って広々とした砂浜でのバイキングを楽しんでみてください。
また、空模様は良いのに海は時化ている場合にカヤックツアーが中止になった際にカヤックの代わりに参加して頂くにも最適なアクティビティと考えています。
海に出れなくても、海岸線を見て過ごすのはシーカヤッカーには大切な時間だと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
お知らせ
Onion新聞社発行「Onion express 日経版」にてシックスドーサルズの藤田が紹介されます。
千葉県の一部の日経新聞に折り込みとして配布されます。
どうぞよろしくお願いいたします。
http://onionnews.co.jp/introduction/index.html
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