写真:大きく崩れた平砂浦海岸の砂丘。近づくととても危険です。
この10月は本当に台風の多い月でした。
夏の間、嘘のように台風が来なかった分、一気に押し寄せた感があります。
南房総は所々小さな土砂崩れなどありましたが、内陸では特に大きな損害は見られませんでした。
ただ海岸線はかなり影響を受け、ほとんどの海岸に痕跡が残されています。
例えば館山市の平砂浦海岸は南に面した長い砂浜ですが、過去に造られた人工砂丘が大きく一気に崩れているのが見られました。
高さがある波が幾度も砂丘に押し寄せては返すうちに削られるように崩れていったのでしょう。
過去にここまで急速に崩れたのは見たことがありませんでした。
これを補修するために数少ないコンクリート造成物のなかったエリアにコンクリートが積まれることになるでしょう。
他には南房総市東岸の和田町にある海岸線のサイクリングロードは何キロにも亘って写真のように漂着した流木、竹、ブイ、その他の漂着物でいっぱいになり通行不可能となっています。
自転車ツアーでの使用を考えていたところに思わぬ障害が発生してしまいました。
行きに砂浜を走り、復路ではクルマが通らず安全なサイクリングロードを利用しようと考えていたので、少々困りました。
やはり防風林の海側に道をつくるという事自体がおかしなことなのでしょう。
実際のところツアールートとなるこの道も、走りながら問題提起をしていこうと思っていたので良い事例が発生した感じでもあります。
海岸からウミガメがサイクリングロードへ落ちた事例を2例確認していますし、この道の分だけでも砂丘が盛り上がっていればウミガメの巣が流される可能性は格段に下がるはずです。
それにしてもこのサイクリングロードに漂着ゴミが流れ込むというケースも今まで見たことがなく、私が知っている約20年の間で最大の高波が寄せたということでしょうか?
写真:サイクリングロードの状況を確認しに漕ぎに行った時の写真。延々と漂着物。
南房総では不幸中の幸いで人的被害はなく済みましたが、すぐ沖に見えている伊豆大島ではとても残念なことに多くの方が亡くなってしまいました。
様々な条件が違うとはいえ、このたった40qくらいの短い距離で被害に大きな差が出たことで気を抜かないことが大切だと思いました。
南房総に住む人も、それこそ対岸の火事ではなく自分の土地で起きた出来事と思うくらいの姿勢が必要でしょう。
それがなければ、いつか次の機会に被害を受けるのは南房総かも知れません。
台風26号の時(16日)には館山湾に停泊していた約1万トンという大きな貨物船が流され浅瀬に漂着してしまいました。
実は館山湾には過去にも幾度か大きな船が漂着していますが、それはほとんど冬か春の北西の風に数日かけてじりじりと流されるもので、今回のように台風での漂着は記憶にありません。(忘れているだけか、私が越していくるより過去にはあったかもしれませんが)
船は次の台風が来る前に21日には沖へ無事引き出されましたが、以前館山沖に沈んだ船から流出した重油が岸辺に流れ着くのを見た経験から、今回も重油漏れが心配でしたが、問題なく済んで本当に良かったです。
こういうことがあると船の関係者も大変ですが、その海に住む漁業者と海の生き物たちの生活もいつも心配の種です。
写真:打ち上げられた貨物船
台風が来て秋が本格化し、さらには冬のような日もありました。
かと思うと次の日には半袖だったりと忙しない天気でした。
また海は台風の影響を受ける日が多く、時化気味でゆったりとしたパドリングを楽しむ機会が少なかったようです。
個人的には自転車のツアーを始めるにあたっての下見など実際に自転車を想定ルートで漕ぐことを繰り返していたので、私にとっては良いタイミングでした。
寒い日も急に暑い日も走ってみればいつも自転車日和で、特にひどい強風や雨以外では自転車はいつも快適でした。
これから冬、春に向けてカヤックを漕ぐには厳しい日が多くなりますが、そんな時にも自転車は心地よく楽しめるでしょう。
自転車で砂浜を走るときには潮間帯という潮位の上げ下げによって毎日繰り返し海になったり岸になったりする場所を辿って行きます。
ここは波が洗った後には水を適度に含んだ引き締まった砂地となり唯一自転車の走行を許してくれます。
それ以上の陸側では表層の砂は水分を含まず、自転車を走らすには柔らかすぎます。
それ以下の海側では塩水が満ちていて自転車では砂に潜りこんでしまう上に金属が塩の害を受けてしまいます。
写真:岩場を縫って走ると、あちらこちらに沢山の身を付けたグミが見られました。
この潮間帯を走ることで我々はタイヤの跡さえも残さずに砂浜の移動を達成することができるという利点もあります。
アウトドアでは立ち去った後に形跡を残さないのは、いろいろな意味で大切なことです。
ウミガメのコドモが巣から海に向かう時に轍にはまり、脱出できずに朝を迎え鳥の餌となるという話は聞きますが、それらは柔らかく潮が上げても水の来ない柔らかい砂地をエンジンの動力でクルマやオートバイを走らせた後です。
そのような場所は自転車ではほとんど漕ぐことができません。
動力が人間ではタイヤの回転を、半分は進むために、半分を砂を掘り進めるために使うのはあまりに無駄が多すぎるのです。そういう時に自転車では降りて押せばいいのですし。
結果として自転車は砂浜環境に悪影響をほとんど残しません。
強いて言えばチェーンに付いた油などを砂地に微量に残していく可能性くらいでしょうか…。
写真:寒かった雨の日にも餌捕りに忙しいミユビシギたち。
またこの潮間帯には表層に生物が少なく、無駄な殺生をしないで済むという利点もあります。
多くは潮が上げてくれば餌をとる為に水中に顔を出したりするものの、潮が退いて行けば砂の中に潜って暮らしていますので、自転車が走る時に踏みつぶしてしまう心配がほとんどありません。
元々自転車は道路を走っていても動物を轢くという事がほとんど無い乗り物です。
もし事故を起こせば相手がネコだったとしても転倒して自らがケガをする可能性が高いので車に乗る時と比べればとても慎重になるからですが、もっと小さな生物の事まで考えてみるとタイヤの細さも接触の確率を低下させてくれていると思います。
小さなことかもしれませんが、移動するだけで多くの生物を殺している乗り物が多い中では珍しく良いことだと思います。
このような自転車の特徴は、同じように人力移動であるがために、海の生物の脅威とならず、環境に足跡も残さないカヤックによく似ています。
シーカヤックは完全なオフロード(道なき路)を行く乗り物です、環境への影響を最小限に、人力のみでフィールドを移動し、自然の中に発見をするにも適したスピードなど、オフロードバイキングとシーカヤッキングには共通の面が多くあります。
シーカヤックを好きな人なら、自転車で砂浜を走るのはきっと同じように楽しめますし、オフロードバイキングを日常的に楽しんでいる人にはシーカヤックは究極のオフロードと映ると思います。
写真:台風の影響か水辺から随分離れたところで死んでいたコアホウドリ。ご覧のようにとても大きな鳥です。
14日には館山では比較的珍しいコアホウドリの漂着も見つかりました。
これもカヤックだけでは難しかった発見で、私自身はいろいろな事で自転車の効果を感じています。
シーカヤックが定着してきた頃ですので、次は砂浜や海岸線の岩場を楽しむマウンテンバイキング(シーサイドバイキング?)も定着したら、きっと海辺環境に触れる人が増えて、その環境に愛着を持つ人も増えていくだろうと期待しています。
ツアー参加に限らず、日本中のビーチでそれぞれがマウンテンバイクを走らせてみてほしいと思っています。
潮位に興味を持って走りやすい日を探すだけでも既に海に親しんでいることになります。
実際に近所の砂浜を走ってみたら砂質によってはとても難しい場合も多いでしょう。
それで走れなかったとしても、それだけでその砂浜がそういう砂質だったという事を体で知ったという事が大切だともいます。
海辺に住んでいても案外身近な砂浜に足を踏み入れたことがないという人は多いようです。
もし「自転車を走らせてみる」という事がその海岸に興味を持つきっかけになれば素晴らしいと思います。
お知らせ
海岸MTBツアーのページを加えました。
11月からスタートします!
どうぞよろしくお願いいたします。
海岸MTBツアーのページへ
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