写真:南房総市白浜町の産卵地。今年は自転車を例年よりも多く調査に活用しています。
6月に入り今年もシーズンのウミガメ産卵調査を始めました。
例年通り南房総市白浜の野島崎より西の海岸線に関しては毎日、野島崎の東側の名倉と千倉から和田港までの区間は大潮と大潮の間の一日、館山市の平砂浦は大潮の間に一日調べています。
いくつかの上陸を確認することができましたが、私が最も重要と考えている海岸の根本ではとうとう一度も上陸がありませんでした。
その分、7月、8月は忙しくなりそうですが、どうなることでしょう。
根本では7月の後半にはキャンプ場も開いてしまうので、ここに来るウミガメに限ってはできれば全ての産卵を6月中に終わらせてくれたら安心なのに…といつも思いますが、むしろここは大抵やや遅めの上陸傾向です。
とりあえず、この6月に確認した上陸は以下になります。
西から。平砂浦×1、根本×0、砂取〜滝口×3、名倉×1、白子×2、和田×2(和田のうち1つは5月に調査エリア外の和田港より北で偶然発見)
名倉海水浴場では今年も海の家「うみなり」さんが柵を設けてくれました。
他の海岸では盗掘やイタズラを避けるために柵は設けていませんが、名倉に関しては夏の間中うみなりさんが見ていてくれるので安心です。
南房総に遊びに来た際には是非名倉海水浴場へ足を運んで頂き、どんな場所にウミガメの巣があるのか見てみてください。
人々が暮らす、すぐ前の海、すぐ上には海岸道路。交通量の少ない南房総とはいえこんなところにもウミガメは産卵しに来るという事を実感して頂けるかもしれません。
海の家「うみなり」さんに寄ってみれば昔のエピソードなども話してくれるかもしれないですよ。
写真:アカウミガメの漂着死骸。甲羅に見られる白いものはウミガメに限って付着するカメフジツボ。
上陸を調べているとウミガメの死骸漂着にもよく遭遇するようになります。
今月だけでアカウミガメが4体、アオウミガメが2体見つかり、先のうみなりさんも名倉でアカウミガメを1体見つけて報告してくれました。
平砂浦海岸で見つかったアカウミガメの死骸には大きな写真の釣り針が顎に掛かったままでした。
知り合いに教えてもらったところによると、延縄漁の釣り針だという事です。
糸の先を見ると刃物で切った様子だったので、実際この丈夫な釣り糸をこのカメが切って逃げるのは難しいでしょうから、混獲した際に漁業者が切断し顎に釣り針が掛かったまま放流したという事のようです。
顎に掛かっていた釣り針は簡単に外す事ができました。
もし漁業者がこの針を取り除いていてくれたら、このカメの命ももう少し長いものだったかもしれないと思うと非常に残念です。
ただしこの針が掛かっていたことが直接死因になったという事ではありません。
それでも生活に支障が出たのは確かでしょう。
写真:平砂浦で見つかったアカウミガメの死骸に掛かっていた釣り針。
漂着したウミガメにはよくフジツボがついています。
写真のように大きなものが甲羅にビッシリとついていたり、首回りやヒレなどにも小さなものが食い込むようについていたりします。
彼らは泳いでいるカメに便乗して旅をしているわけですが、その他の漂流しているものにも同じような便乗者がいて、死んでしまったウミガメの場合と同じように浜に漂着した時には海から離されてしまい生存していくことができなくなってしまいます。
漂着した緑色のきれいなガラス浮きには大抵エボシガイの仲間がついていて、これもフジツボと同じように近くを漂うプランクトンを捕まえて食べています。
エボシガイはやや乾燥に強いのか打ちあがってからも生存している姿を時々見ます。
気の毒ですが、彼らにとっては家であった、しかしそもそもゴミであるそういう人工物を海に戻して彼らの生活を再開させるというわけにもいきません。
他にカニの一種も漂流物に付着して流されて生活するスタイルを持つものがいて、それがウミガメについていた場合には産卵上陸の際に歩いているウミガメから剥がされて足跡の上で死んでいる場合がよくあります。
写真:オキナガレガニと思われるカニたち。漂着したカゴから離れようとしない。
先日は長年漂流していたのだろうなと感じられる漁業で使われるようなカゴが漂着していて、見てみると多数のカニがなんとかしてカゴから離れないように、運よく海にまた戻れるようにと頑張っていました。
オキナガレガニだと思いますが、面白いのは非常に色のバリエーションが多く、一種とは思えないような感じだったことと、ほぼ透明な色をした個体が見られたことでした。
卵を抱えているものもいましたが、例えばここで彼らの生活と生命が終わる時に、卵を抱えたメスはなんとか海の中まで歩いて行って産卵を済ますのでしょうか?
更には他のカニ達も干からびてしまう前に海に歩いて戻り、泳いで新たな漂流する家を探すという選択をするのでしょうか?
その日1日そこにいられたら少しそれについて分かって面白かったかもしれませんが。
大シケの海でカニが漂流物の表面を歩くのを想像してみると、いつ剥がされても不思議がないように思います。
今回のカゴのような凹凸のある漂着物やウミガメなどでは隠れたりしがみ付いたりが可能ですが、表面の滑らかな物や生き物にも確実にくっ付いて生き延びていこうと考えたら、どうせ歩いても知れている狭い家ですからいっそのこと接着剤かボルトで自分を「家」に固定して確実にくっ付いてしまった方が安全だろうと思いますよね。
そういう試練を繰り返しているうちにカニはエボシガイに、さらにはフジツボにまで姿を変えたのでは?とか想像してしまいました。(彼らはみんな同じ甲殻類です)
体表が滑らかでとり付く場所も無さそうなイルカに付いた小さなエボシガイの仲間を見たり、ツルツルのガラスの表面にしっかりとくっ付いているフジツボの姿を見ているとカニよりは「うまくやっている」という感じがします。
写真:ガラス浮きの表面に付いていたフジツボ。
ウミガメの足跡を探して毎日砂浜を歩くという、貴重な時間には多くの貝殻にも出逢えます。
今月は特にヤクシマダカラというタカラガイの仲間を、欠けたのを含めるといくつか拾いました。
この種はタカラガイの中でも大型で、南房総で普通に拾えるタカラガイとしては最も大型のものです。
ただし殻が薄い割にサイズが大きいので破損の可能性が高く、完全な形で拾う事は多くはありません。
写真のものは久しぶりに艶が残っていて完全な形をした状態で拾えた、長さ7p+のヤクシマダカラです。
このヤクシマダカラをはじめ、南房総ではタカラガイは多種多数拾えます。
水温が下がり始め、貝が死に打ちあがりやすいと考えられる初冬もお勧めですが、梅雨や豪雨で川から大量の淡水が流れ出るこの季節にも貝が死に、特に河口近くでは打ちあがる可能性が高いのかもしれないと考えてみたりしましたが、どうでしょうか?
いずれにしても美しい貝殻はその貝の死によって得られる楽しみだという事は頭の隅に持っていた方が良いように思います。
能率の点でも、ありがたさを感じるという点でも。
写真:ヤクシマダカラの貝殻。
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