写真:秋の館山。
南房総のウミガメ産卵痕探しを今シーズンも無事終えました。
まだ孵化から脱出を確認するという作業はありますが、基本的に完全を目指しているのは産卵状況の記録ですので一応主な目的を終えたという感じになります。
上陸確認の結果は以下になります。
0530花園、0612滝口、0617滝口、0623名倉、0623白子、0623白子、0623和田、0626平砂浦、0629滝口、0704白子、0704和田、0704和田、0708滝口、0713砂取、0714平砂浦、0720名倉、0721滝口、723滝口、0723白子、0723丸山、0724滝口、0726平砂浦、0729滝口、0802滝口、0807根本、0814滝口、0815和田、0827滝口、0831白子。
(花園は調査以外での発見。平砂浦、名倉、白子、丸山、和田に関しては不定期調査のため、産卵日ではなく確認日。)
合計で29回、そのうち産卵の形跡の無かったものが2ヶ所、既に誰かが発見し簡単な柵や目印をしてあったものが7ヶ所ありました。
他の方が既に確認されている痕跡のある上陸痕(巣)については二重報告の可能性や、もし発見者が所有権(発見権)のような考えをお持ちの方だとトラブルになりますから例年ウミガメ協議会には報告していません。
特に白子から和田にかけては地元のサーファーの方などが見つけた時に、その後巣を踏んでしまわないようにという配慮からそれぞれが自発的に行っているようなので、それぞれの発見者に断わることが難しくなっています。
しかしもしもここをお読みの方でそれらの柵や目印を施されている方がいましたら、是非ご連絡頂けると少しでも実際数に近い数を記録、報告できますので、どうぞよろしくお願いいたします。
写真:9/29。8/2に白浜滝口で産卵された巣から子ガメ脱出を確認。しかし多くは街灯のある山の方角へ向かっていました。撮影者後方左に巣、砂面の小さな窪みは子ガメの足跡。正面遠方にLED街灯の設置されている電柱。
7月20日に産卵、移植した名倉海水浴場の巣については特に気がかりでしたが、15日の朝、ツアー前に寄ったところ子ガメが脱出した穴が確認できました。
子ガメの足跡が既にきれいに消えている事から数日経っていたかもしれません。
ツアー後、夕方に再度寄って脱出穴の状態を確認してみるために数センチだけ砂を避けてみると子ガメが2匹出て来てしまいました。
少し待つと元気に歩き出し、自然に海の方へ向かいましたので、そのまま歩いて行かせ出来るだけ通常の状態に近い状態で海へ放流しました。
子ガメが出て来たことで、まだ巣内に残って自分のペースで脱出するつもりの個体もいるかもしれないと判断し、自然で自発的な脱出を期待し、とりあえず18日まで放っておきました。
18日には残留子ガメが残っている可能性はあるけれど、助けるという事が主題ではなく、恐らくあの2匹で無事に脱出が終わったのだろうと期待しており、単に孵化率調査を行うために名倉に向かいました。
ちなみにこの何年かは孵化率調査をしなくなっていましたが、今回は自ら移植した巣であることからある程度責任を感じているので、最終的な状態の確認の必要性を感じていたからでした。
他の自然状態の巣では今シーズンも孵化率調査は基本的に行いません。
写真:上の写真と同じ巣内から取り残された子ガメが一匹見つかり巣穴の場所から自力で海へ放流したところ。
巣穴に沿って手で掘っていくと、すぐに子ガメの死骸が出てきました。
これはありえることなのでガッカリはしたものの自然な事と考えましたが、最終的に46個体の死を確認しました。
卵は128個中、食害で割れて腐ったものが9個、発生しなかったと思われる割れていないで腐っている卵が11個だけあり、あとの108個は無事に孵化の済んだ殻を確認できています。
そのうち46個体もが巣から脱出できなかったことで死んでしまったという残念な結果でした。
これはやはり卵を移植した人の掘った、巣穴を模しただけで実際的な機能性を持たない穴が原因だったのだと思います。
子ガメが脱出しやすいようにと単に穴を浅くするだけでは動物からの食害や温度、湿度などに問題があるかもしれません。
本来巣の中には卵と卵の間に想像以上に空間がありますが人が移植するとその隙間をうまく作れないような気がします。
空間があると子ガメが孵化した時に砂が一気に崩れ地上へのルートが自動的に開かれる仕組みなはずで、母ガメの巣穴を本当にコピーすることはとても難しく、やはり結果的には移植は母ガメの命がけの仕事を無駄にする行為でしかないと改めて確認した出来事でした。
写真:9/3一宮のウミガメ上陸痕。
月の初めには九十九里は一宮のウミガメ産卵地の見学に行ってきました。
この地域では「一宮ウミガメを見守る会」の方々が活動しており、発見した巣には柵と看板が設置されています。
今回は南房総との環境の違いとウミガメがその中でどういう場所を選んで産卵しているのかを見てみたいと思っていました。
この日の朝には会の知り合いの方から9月に入ったところなのに産卵があった事を教えて頂き、運良く足跡も見る事が出来ました。
その足跡は蛇篭と呼ばれる一種の簡易護岸のようなものに向かって真っすぐに進んだ後、蛇篭につき当り右に折れてから蛇篭に沿って進み、他の巣の中を通ったりしながら迷った挙句、いかにも仕方なさそうに蛇篭の前で巣をつくっていました。
南房総でも館山市の平砂浦では同じようなケースが多々あります。
ただし平砂浦に比べると一宮の一部の海岸では砂浜の奥行きがまだ残っていて、平砂浦のようにほとんどの場所で砂浜の直後に護岸や人工砂丘があるというような状態ではありませんで、良くはないですが、それでも少し羨ましかったくらいです。
平砂浦に関しては今ある古い人工砂丘や海岸松林をいっそのこと大々的に加工しなおして、海岸道路の際までを緩やかな後浜と砂丘に作り直して自然の状態に近くした人工海岸に出来ればよいのではないかと良く思います。
今道路が通っているところよりも山側に海岸松林を移転し、道路より海側は浜の一部にすれば館山もウミガメの国として自慢できる環境を取り戻せるかもしれません。
ただし海岸道路や海岸道路に接する施設への飛砂は多くなりますので、実際に行われる可能性はないでしょう。
道路から海が見えるようになるという観光的な利点はありそうですが。
写真:トウネンの群れ。黄色いフラッグと呼ばれる印が脚に取り付けられている。
一宮では運の良い事にふたつも珍しい出来事に遭遇できました。
ひとつはコグンカンドリとの遭遇で、逆光での写真しか撮れませんでしたが幼鳥の特徴を備えていることを確認できました。
その個体はゆらゆらと海岸線を南下していて、自転車に乗っていましたので追えるところまで追ってみましたが、間もなく見失いました。
北に来過ぎたことに気付いて南へ帰ってゆくところだったのでしょうか?
コグンカンドリは南房総でも2件見ていますが、出先で遭遇できたのには驚きました。
もう一つはトウネンという小さなシギですが、群れの中の1羽に脚輪が付いていました。
これは鳥の調査機関が世界的にネットワークして取り付け放鳥しているもので、この個体は脚の印の組み合わせからカムチャッカからの飛来とされました。
南房総ではウミガメ産卵調査時期にミユビシギというシギで同じものを幾度か確認しており、これらは全てオーストラリアからのものでした。
このような小さな鳥が海を渡って遙か南半球や遠い北の国から飛んできたりするという事実を実感することができ、改めてそれらの動物に尊敬のようなものを感じてしまいました。
人であれば飛行機のような大げさなものを使わないとできない事ですが、彼らは毎年その小さな身体でそれを繰り返しているのです。
知識としては知っていたものの、目の前のこの個体にそれを実行した証を見せつけられると、やはり改めて驚かずにはいられませんでした。(彼はこの印をつけられてることについては不満だと思いますが…)
もしも皆さんがこのように脚に色の付いた印が付いた鳥を見た場合には、できれば写真を撮って頂き、山階鳥類研究所へ報告して頂ければ今後の彼らの生態を知る上での貴重な記録となります。
生物の種毎の生態を知らないとそれが見られなくなった時に何をどうすれば取り戻せるかも分からない状態になってしまいますが、いるうちに出来るだけ知っておくことが、その時の為に大切なことになると思います。
写真:南房総白浜の産卵地の夕景。
ここのところ台風が次々やって来ますが、10月は波が収まった日にはとても快適なパドリングが出来る季節です。
是非、秋の南房総へ遊びに来てください!
一宮ウミガメを見守る会(Facebookページ)
渡り鳥と足環 - Bird Banding - 環境省/山階鳥類研究所
以前のコグンカンドリ遭遇について(過去の日記)
カヤック日記2012年8月
カヤック日記2004年9月
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