カヤック日記


2015年2月の出来事


ミサゴの急降下。




















写真:ミサゴの急降下。

今月は猛禽類をよく見かけました。
自転車で探索して歩いた沿岸山間部ではノスリが時々飛んでいます。
縄張りがあると思いますが、どれくらいの範囲を利用しているのか興味が湧いたので、今年からノスリを見かけた時にはGPSで座標を記録してみる事にしました。
以前からそうするべきだったのですが、気持ちよく自転車を走らせているとついそのまま走ってしまい、手間を省いてしまっていました。
これで南房総のノスリの分布密度が少しは分かるかもしれないと思っています。
ただノスリは空高く飛んでいる場合が多く、私には良い写真が撮るのが難しい事とそもそも翼の下面の模様に特徴が少ないので個体識別が難しいです。
そうなると行動範囲を正確に確認するのは難しく、そこが難点ですが少なくとも確認位置だけでも記録して無駄は無いかと思います。

海辺ではミサゴをよく見かけました。
ミサゴは魚を水面上高くの上空から見つけ、急降下して水面にほぼ潜るくらいまで足を延ばし魚を捕えます。
ミサゴは縄張りがないのか、複数が同じ場所で餌を探している事もありますので記録するにあたって個体識別の必要性が大きくなります。
魚を探している間は水面から数十メートルのところを翼を広げて飛んでいるので撮影しやすく、翼下面の撮影記録が可能です。
こちらも座標を記録し始めましたので、個体識別の記録と合わせて将来的に正確な密度が分かるように出来るかもしれません。
ただ翼の模様が生え変わりの際にどの程度変化するのかまだ分かりません。
とりあえず始めてみて、少しでも何か分かれば数が減ったと言われているこの鳥の房総での生活について記録できるのではないかと考えています。

ほかに海岸線の平地ではチョウゲンボウと思われる小型のハヤブサ類を時々見かけました。
小さくて通り過ぎるのを見るだけで撮影もできず、種も確定できないので座標も記録していませんでしたが、これも何かしら記録できたらと思っています。

一緒に飛んでいた2羽のミサゴ。翼下面の模様で見分けがつきます。























写真:一緒に飛んでいた2羽のミサゴ。翼下面の模様で見分けがつきます。

これだけの猛禽類が普通に見られると、その場所が健全に機能しているのだろうと想像でき安心感を覚えます。
猛禽類はよく生態系の頂点という表現をされますが、つまり食べるだけで食べられることの無い種という事ですが、最終的には死体食動物や微生物に食べられるので頂点という事ではなくて環の一部でしかないのですが、それでも彼らが食べることができるような大きめの生きものが、そこにはまだ十分いるということを教えてくれる大切な存在です。
環境指標生物となりえる猛禽類ですが、日本ではその多くが保護の対象になっています。
という事はつまり日本の多くの場所が健全な環境を維持していないという事になります。
今のところ房総ではまだ見られるこれらの鳥たちが今後どうなっていくのか、現状を記録することで将来の状態の健全性を確認することができるでしょう。

以下は上記猛禽類の日本での保護指定状況です。

ハヤブサ http://www.jpnrdb.com/search.php?mode=map&q=02070020124

ミサゴ http://www.jpnrdb.com/search.php?mode=map&q=02070010102

ノスリ http://www.jpnrdb.com/search.php?mode=map&q=02070010113

チョウゲンボウ http://www.jpnrdb.com/search.php?mode=map&q=02070020129

LEDに切り替えられた根本海岸沿いの街灯。




















写真:LEDに切り替えられた根本海岸沿いの街灯。

以前お伝えした南房総市白浜の海岸道路に設置された街灯のLED化がほぼ終わりました。
2014年11月の日記で書いたように南房総市とのやりとりではウミガメの繁殖に影響のある街灯についてはひさし(ルーバー)を設ける事で対処すると回答を得ていました。
ところが実際に現場を見るとひさしは見当たりません。 後から設置するのだろうか?と見守っていましたが、既に点灯を始めています。
よく見ると以前低圧ナトリウム灯にしていた場所などでは灯火のレンズに薄いオレンジ色のフィルムが貼られていました。
レンズの内側にセロテープでとめただけの簡易なものです。
照度の高いLEDでこの色では光そのものの色を変える事はできないだろうと思いましたが、念のため夜間の照射状態を確認したところ、やはりほとんど色も変わらず光量もたいして抑えられていませんでした。
そもそもひさしで対処すると言っていた担当者はウソを言ったことになります。
今年度の子ガメたちを犠牲にしてその効果を計るというのでしょうか?

オレンジのフィルムを貼っただけのLED灯。































写真:オレンジのフィルムを貼っただけのLED灯。

南房総市のホームページ広報ではこの街灯のLED化について以下のように書かれています。
「市では、省エネルギー化の推進による環境負荷の低減、光熱費や維持管理費を効果的に削減することを目的に、現在市内全域で、防犯灯約6000基および観光灯約1700基をLED防犯灯へ交換する工事を実施しております。皆様のご理解とご協力をお願い致します。作業の完了は2月末を予定しています。従来製品よりも明るさが増し、CO2は60%削減、電気料金も50%削減され、光源寿命も約7倍の60000時間となります。」 南房総市消防防災課http://www.city.minamiboso.chiba.jp/0000007170.html
環境を意識した施策という事になっていますね…。

以前、現場で話をした消防防災課の担当者に電話で問い合わせたところ、「フィルムを貼ったのでこちらでは問題なしとしている」という回答でした。
なんとその担当者は実際に夜間の点灯状況も確認していないとのことで、まるで真面目に対応しようとしていません。
また現場で話した対応と違う対処をしたにも関わらず、こちらには一報もありませんでした。
これでは何のために足を運んだのか分かりません。

一方、同じ千葉県の一宮町ではウミガメの繁殖への影響の配慮から間もなく海岸沿いの街灯を赤いLEDに替える事が決まっているそうです。
また一宮町では既にウミガメ保護条例も制定されており、今年秋にはウミガメの全国会議が開かれます。
同じ関東でこれほどの対応の差があることに南房総の住人として恥ずかしい思いです。

一宮町役場ホームページ内「一宮で11月ウミガメ会議開催」

一宮町ウミガメ保護条例 http://www1.g-reiki.net/ichinomiya/reiki_honbun/g062RG00000560.html

ここに写っているものどれ一つとして人が作り出すことはできません。




















写真:ここに写っているものどれ一つとして人が作り出すことはできません。

今回の担当者は「まず人ありきですから」と言いました。
環境無くしてヒトが暮らせるのか疑問です。多くの人が、僅かに残された海岸の自然を保ちたいと願っている時代に、人の思いを無視した対応をしながら人ありきとはおかしな話です。
しかも観光を大きな支えとしている町で自然環境を維持せずに観光に訪れた人々に何を見てもらうというのでしょうか?
毎年この季節に多くの観光客が訪れる花畑、菜の花を植えた海岸道路、スイセンで埋め尽くされた山、新鮮な海産物、どれも背景に南房総の本物の自然があるからこそ映えるものです。
混雑した道を朝早くから走りわざわざ多くの人が房総にやって来るのは、見るものすべてがヒトが造ったものしかない都市から人が造ることのできない貴重な自然を探しに来ているからではないのでしょうか?

そんな南房総市役所でさえ、もしウミガメで観光が盛んになればあっという間に態度を変えるのでしょう。
しかし南房総のウミガメ繁殖は観光に耐えられるほどの規模ではありません。
「ウミガメ観光」を目指しながら保護するのは、非常に難しい事です。
安易で収益以外の目的の無い「ウミガメ広報」は都市部から近い関東では、貴重な繁殖地が荒らされる事にもなる可能性があります。
だからと言って収益がなければ動かないような態度では観光地としてのイメージを貶める事にはすぐに役立つでしょう。
少なくとも今の南房総市には「我々の町はウミガメの貴重な産卵地です」と誇る権利がありません。

自転車ツアーの昼食。人の生活と自然環境の調和を感じられる場所。




















写真:自転車ツアーの昼食。人の生活と自然環境の調和を感じられる場所。

「人ありき」と言った担当者の所属は消防防災課です。
希少な自然海岸で、重要な観光地でもある千葉県南端の自然海岸に手を加えるにあたって環境保全課や観光課とのやりとりは全くないのでしょうか。
同じ役所内でそれぞれが勝手な仕事をしているのでは外から来た人が喜ぶように(結果として住民が心地よく暮らせるように)南房総をデザインすることはできません。

この産卵地の海岸道路を夜間に歩く人は地元の漁師、ごく少数の釣り人と夏にキャンプに訪れる人くらいです。
この人たちが本当にこのような高密度の街灯を必要としているのでしょうか?
そもそも役所は本当に防犯のために必要を感じてこの海岸に街灯を設置したのでしょうか?
交通量を調べたうえで街灯の数を決めたのでしょうか?
環境への配慮を考察、調査したうえで街灯のデザインや光量を決めたのでしょうか?
アセスメントなしに重要保護生物の繁殖地に障害物を設置することが、本当に人の為になるのでしょうか?

南房総市は、ここが自然公園内であり、ウミガメの産卵地でもある貴重な海岸だという事を自ら配慮することがありません。
今回のように問題を提示された場合にも確認を怠り、適切な対応を行いませんでした。
このような市が千葉県のような貴重な自然を残す地域を自治している事に千葉県は問題を感じないのでしょうか?
本来、関東で屈指のアカウミガメの繁殖地の保護は三番瀬の問題と同じように市ではなく県や国が関わる必要があるようなレベルの内容だと思います。
これらの内容は市に伝えるのではなく県か国に伝えなければ話が進まないのでしょうか?

千葉県の自然公園一覧































南房総の自然公園と街灯がウミガメ繁殖の光害となっている地域(矢印)
矢印左(西)から根本、砂取、滝口、滝口、名倉
千葉県ホームページhttp://www.pref.chiba.lg.jp/shizen/kouen/shizenkouen/chiba.html より引用改訂



お知らせ

海棲哺乳類のページにハナゴンドウのページをひとつ加えました。
昨年5月に館山湾で定置網に混獲されたハナゴンドウの群れについて紹介しています。
我々ヒトの生活と海の生物の関わりについて考えて頂くきっかけになれば幸いです。
ページ内「ハナゴンドウ2」をご覧ください。
海棲哺乳類のページ





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