カヤック日記


2015年5月の出来事


様々な光を纏った太陽が見られた22日




















写真:様々な光を纏った太陽が見られた22日

今月の特に後半は全国的にも個人的にも随分いろいろな事が起きました。
月末から遡ってみると、まず30日には小笠原近くの地下深くを震源とするマグニチュード8.5という大きな地震が起きました。
29日には口永良部島が噴火。
28日には2006年に初めて見て以来9年ぶりのカンムリウミスズメの雛を連れた親子を館山市沿岸で確認しました。
26日には東京湾内の金谷から勝山沖辺りで3-4頭のシャチの群れが確認されました。
25日には岩井沖でツアー中に今まであまり見たことがない様な非常に大きなオオミズナギドリの群れを見ました。 これはどうやら水中には膨大な数のカタクチイワシがいたようです。
この後、28日にも館山市の沿岸で同規模かもう少し大きなオオミズナギドリの群れをやはりツアー中に観察することができました。
22日には太陽の周りに出来る虹(日暈)が見られ、その下方には地平と水平な虹がありました、間もなくメディアでも話題となって環水平アークというものだと知りました。
結局、日が沈むころまで日暈が見られ、館山市の西に面した海岸で夕方に見た時には写真のように日暈の他に日中と逆に太陽のずっと上の方に虹があり、これは環天頂アークというもので、更に太陽の左にはもうひとつ太陽があるかのように光る幻日もありました。
1日でこんなに多くの現象を見たことがないので、新たな経験をしてなんだか少し怖い様な、しかし新たな知識も増え嬉しい様な不思議な気分でした。
月の前半には台風6号と7号が本州の南を通り、房総半島へも大きな波を届けました。

日中の暑さを避けて隠れていた後背地から海岸のスナビキソウ群落へやって来たアサギマダラ。




















写真:日中の暑さを避けて隠れていた後背地から海岸のスナビキソウ群落へやって来たアサギマダラ。

月の半ばまでは台風以外はいつもの5月で、毎年繰り返し見て来たスナビキソウ群落の様子の確認とそれに集まるアサギマダラのマーキング、某所のハヤブサ繁殖状況確認をいつものようにしていました。
ハヤブサは4月末に交尾を確認したっきり動きがなく、アサギマダラもそれほど数が現れず、スナビキソウは台風の影響も最小限でいつものように元気に育ってくれていましたが、太陽に虹が出るまではいつも以上に静かな5月と感じていました。

太陽、鳥、シャチ、噴火、地震とそれぞれが珍しい経験を与えてくれましたが、今回の噴火と地震は島に直接影響するものでしたので特に噴火に関しては現地の人々の生活への影響が気になりました。
M8.5地震の方は震源が非常に深かったために津波の心配もありませんでしたが、やはり島である小笠原のような場所でもしもの事があればとても心配です。
20年以上前ですが、私は小笠原父島で半年間アルバイトをしたことがあります。
クジラ、イルカ、ウミガメなど海の野生動物を身近に感じる貴重な機会を与えてくれた場所ですし、その時にお世話になった方々もいます。
その後もまだ小笠原近海で地震が続いていますから心配しています。 小笠原のすぐ近くの西之島の活発さも気になります。
地球が生き物で、出来た時からずっといつも活動してきたのですし、人もそこで暮らしてきたのですから地球のすることを見守るしかないのですが、小笠原のような本土から遠く離れた島という環境条件を考えると、異常がある場合には早めに避難してくれたらと思ってしまいます。

オオミズナギドリの大群。























写真:オオミズナギドリの大群。

シャチの東京湾出現は26日の昼にまず第一報を知り合い数人が連絡してくれました。
そして海上保安庁のメールサービスでシャチの確認された位置の座標も得られました。
その日は休みで陸にいましたが、早速準備をして勝山方面に向かい、15時頃には海上に浮いていました。
元々シャチやクジラを身近に見てみたいと思い、その手段としてカヤックを始めたのですから、シャチがホームウォーターである東京湾にやって来たとなると、それはもうかなり慌てていてGPSは忘れるは、デジカメの電池は入っていないはと酷いものでした。
それでも一眼レフは念のため2台持って沖に向かいました。
6qほど沖だったようですが、約3q沖を維持して南北に往復しながら水平線に目を凝らしシャチの背ビレを探しました。
あまり沖に行かなかったのは、本線航路が近いと安心して捜索に集中できない事と何よりシャチがむしろ沿岸側に移動していた場合に見えなくなってしまう事を心配しました。
沖(西)の方は水面と霞んだ三浦半島しかないので見渡しやすいですが、房総沿岸を望む東側は様々な人工物や陸地の背景で背ビレが見つけにくい条件になっています。
観察しやすいはずの沿岸にいるシャチに気付かずに入れ違っては台無しなので意外と岸側を注意していました。
あっという間に夕方になってしまい、日が沈むころまで浮いていましたが、結局シャチには逢えませんでした。
せめて遙か遠くに背びれだけでも見えたら良かったのですが。

アカエリヒレアシシギ。




















写真:アカエリヒレアシシギ。

その代り、この時には様々な生物に逢えました、主に鳥ですがまずここ数年あまり確認できずにいたウミスズメが多数みられました。
また数が少ないカンムリウミスズメも後で写真により少なくとも1羽確認できましたし、久しぶりにアカエリヒレアシシギにも逢えました。
沖ではオオミズナギドリとハシボソミズナギドリが常に舞っていて餌を探したり海面で休んだりしていました。
そのミズナギドリの下にはすごい数の魚がいて水面に飛沫と泡を立てながら泳いでいました。
下の写真でオオミズナギドリのそばに顔を出しながら泳いでいる魚がいますが、他の写真でサバと分かりました。
鳥と比較してかなり大きなサバですが、水面にかなり広範囲で見られました。カタクチイワシを追って泳いでいるのかな?と思いましたが、この写真を見るとむしろ追われているかのように見えます。
サバを追っている何か大きな魚を追ってシャチは東京湾に来たのでしょうか?
とにかく水面は賑やかで、飽きるとか孤独とかいう感じが全くなく、シャチが見えなくても十分楽しめるな…と感じた勝山沖でした。
普段この海域で沖に出る事は少なかったので、これほど濃い海域だとは想像できていませんでした。
また面白いエリアを見つけてしまったようです。

ちなみに今日6月1日時点でシャチが東京湾からいなくなったという情報は無いので、まだいる可能性があるかもしれないと考えて、もうしばらくは探すつもりです。
もしも見つけられればここで紹介できるのですが…。

オオミズナギドリには目もくれず激しく泳ぐサバの群れ。





















写真:オオミズナギドリには目もくれず激しく泳ぐサバの群れ。

カンムリウミスズメの雛連れは先にも書きましたが2006年以来で、千葉県では数えるほどしか確認されたことがない貴重なものです。
カンムリウミスズメの成鳥さえ頻繁に見られるものではないうえに、繁殖地はいくつか知られているものの、孵化から間もなく海に出た雛が親鳥とどこを目指すのかがほとんど分かっていない希少種です。
更に日本の固有種であり、ウミスズメ類の中で最も南で繁殖し、ウミスズメ類の中で最も個体数が少ないとされています。
つまりアカウミガメのように日本の海岸環境の影響をもろに受けて来た生物のひとつです。

とても小さいですから、大型の船舶では調査が難しく、特に前回今回と岸からとても近く浅い海域を好んで移動しているようなので、特に大きな船では確認が難しくなりますのでカヤックはウミスズメ類の調査に打って付けでしょう。
雛は観察した様子から、親のようには潜水ができず、更に飛ぶことも出来ないようです。
カヤックで接近した場合、成鳥は大抵潜水で離れていきますが、雛を連れている場合には潜ることがありませんでした。
ですから寄ろうと思えば寄れてしまいますが、そこをやり過ぎるとカンムリウミスズメにとって良いはずがないので、しっかり撮影記録したい気持ちと害を最小限にという気持ちの間でバランスをとらなければなりませんでした。
この日は一眼レフを持って漕いでいなかったため、あまり鮮明な写真を得られませんでしたが、種の確認は十分できました。
また雛の羽色も2006年に見たものと若干違う様子で雛の羽色の変化を知る手がかりになりそうです。

2006年のカンムリウミスズメの雛については 2006年5月のカヤック日記 と山階鳥類研究所から出版されている山階鳥類学雑誌に掲載された 報告 をご覧ください。

カンムリウミスズメの親と雛。今回は片親でした。























写真:カンムリウミスズメの親と雛。今回は片親でした。

6月1日から今年もウミガメ調査を始めました。
ウミガメの調査には自転車がとても活躍してくれていますが、自転車ツアーには暑くて厳しい季節になりますので夏季には一旦お休みします。
しかしまた秋には自転車ツアーを再開しますので、それまでにご紹介できるエピソードを蓄えておきたいと思います。
一方、カヤックの方は暑くて水に濡れたくなる季節ですから、どんどん漕いでください。
ただ大きな地震が発生していますから、十分注意をしながら楽しんで頂けるようにしていきます。
あと1ヶ月であっという間に水も暖かくなりますから、是非ずぶ濡れになりに来てください!

これも東京湾。























写真:これも東京湾。






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