写真:ウミガメのシーズンを終えようとしている平砂浦海岸。
11月29日無事に日本ウミガメ会議inいちのみや千葉が終了しました。
また私の口頭発表とポスター発表も無事終えることが出来ました。
ありがとうございました。
日本ウミガメ会議は毎年各地のウミガメの産卵地で行われ、今回で26回目というものです。
私もウミガメの記録を取っていますので、前々から参加したいとは思っていましたが、日本の西〜南の諸島にかけての開催が多く週末開催であることもあって諦めていました。
しかし今回は自分の住む千葉県での開催という事と開催にあたっての実行委員が一宮でウミガメを調査している仲間でしたので、すぐに参加を決めました。
発表についてはすぐに決めませんでしたが、調査開始当時からアドバイスを頂いている秋山章男先生に「藤田くんは発表するんだよ!」と後押しして頂いたこともあり、2001年に調査を始めてからの15年分の資料を無理してでもまとめる良い機会だと思い決めました。
このような理由がないと、ただただ記録を溜めるばかりで、まとめて形にする事もなく時がさらに過ぎていったことでしょう。
記録は公開し利用されて初めて意味を持つものと思っていますから、このサイトでは少しずつ公開していますし、日本ウミガメ協議会には毎年データが登録してきていましたが、南房総の実際の状況を伝えたり足跡記録の方法を多くの人に知って頂ける機会はあまりありませんでした。
そういう意味で今回は大変有意義な機会となりました。
また日本各地のウミガメに関わる方々と実際にお会いしてお話しする貴重な機会にもなりました。
次回2016年は高知開催との事です。
フィールドにはクジラもカメもいる場所ですし、カヤックフィールドとしても興味深いので是非ともカヤックを積んで出かけたいものだと思っていますが…。
いろいろ頑張らないと行けないですね。
ちなみにウミガメ話を書いておきながら、以下写真はミユビシギたちが続きます…。
写真:ミユビシギシリーズ その1 つぶらな瞳
発表の内容は、数に関しては毎年報告していますので、自分がどのような事をどのように記録しているかという事について説明させて頂きました。
口頭発表では、これまでやって来た方法とそれで分かった事を千葉県枠の中の南房総からの発表として「南房総地域でのウミガメ上陸痕跡の傾向」というタイトルで発表させて頂きました。
タイトルは発表申し込みの時点で決まってしまっていたので、内容が後から徐々に変わってしまいタイトルと内容とがややずれている感もありますが…。
こちらの内容は近いうちにパワーポイントの画像に説明を加えて近いうちにアップする予定ですので、ご覧いただければ幸いです。
この際なのでもうひとつポスター発表も申し込んでおきました。
申し込んでしまえばやるしかありません!自ら追い込んでみました。
ポスターで発表するというのも初めてだったので、いろいろ大変でしたが、やはりこれも秋山先生にアドバイスを頂いたお蔭でなんとかなりました。
この内容についてはこのページの更新の前にウミガメのページでアップしましたので、是非ご覧いただけると幸いです。※1
これも様々な年齢層とウミガメ度に関わらず分かりやすいようにバリアフリー化したつもりです。
タイトルも「ウミガメによる砂浜の通信簿」と軽く、副題は「母ウミガメたちが残した産卵地の環境評価」といった感じです。
そもそも私が難しいものは好きではないので、「自分に合わせただけ」とも言えますが。
写真:ミユビシギシリーズ その2 採餌中
大学で研究をしていたわけではない私のような人間が「発表」をするにあたって、形式やルールのようなものが大きな壁に見えるな…というのが実感です。
実際にやってみれば常識的な範囲の事で特別なことでは無いですが、暗黙のマナーのようなものも気にしだすと全く想像が及びませんから、いっそやめたくなってしまいます。
しかしやってみないと分かりませんから、今回はとても良い機会になりました。
また今回は学会というようなものではなく、一般にウミガメに興味を持ってもらうための会だと思っていましたので、比較的気負わずに参加できたように思います。
そのため、発表内容も例えば中学生くらいの人が聞いたり見たりしても分かるし、大人でも「あ〜なるほどね」と思ってくれそうな内容にしたつもりです。
しかし実際には口頭発表は徐々に進むほどに研究者の場という空気になりましたし、内容も発表慣れしている方々で分かりやすい解説であったとはいえ一般的に予備知識なしで聴くと考えると結構難しいものでした。
僕もどうしても訊きたいことがあって質問もしましたが、壇上での発表よりも質問の時の空気がむしろ緊張しました…。
しかし初日の海上での観察会や海岸での秋山先生による観察会はとても分かりやすく楽しめる素晴しい企画でした。
海岸の観察会をお手伝いさせて頂きましたが、特に私がやれることもなく先生の人を惹き込む能力に圧倒されていました。
もちろんベースには長年のホームである一宮の海岸についての知識あり、それが想像以上に広くて深いのだと改めて実感することが出来ました。
長年海辺の自然について秋山先生に直々に教えて頂きながら、大して進歩していない自分が申し訳なかったです。
これからもっと真剣に取り組みたいと思いました。
秋山先生の自然観察会は時々一宮で行われているようですから、チャンスがあれば是非とも参加をお勧めいたします。
また海上での観察会では予定通り(?)スナメリも観察できたそうです!
なかなか時化ていたはずですが、ラッキーですね。
やはりフィールドが一番楽しいという事を示してくれたように思います。
写真:ミユビシギシリーズ その3 波と競争中!
しかし、それにしても約2カ月も発表に気を取られて、昼間でも気になることを思いつくとパソコンを開いて直したり、ついつい深夜に及んでしまったりと昼夜の行動パターンがかなり狂ってしまいました。
十分余裕をもって始めたはずでしたが、気になることがどんどん増えていき、出来た!と思ってもしばらくすると冷静になって直したくなる…の繰り返しで結局間近までやっていました。
そんなこんなでしたので12月はきちんとペースを直してフィールドに出る時間を増やしたいと思います。
MTBツアーも良い季節ですので、是非ご参加ください!
今月は根本海岸で8月26日に産卵された巣で孵化脱出が確認できていなかったので、気にして繰り返し見に行っていましたが、どうやら動きが無かったようです。
しかし孵化率調査をしていた頃に見られた事例では地中の巣内で孵化していながら、砂を掘り進め脱出することのなかった子ガメが何頭か見つかった事があります。※2
その巣は産卵されてから100日近く経っていました。
生きていたものは海に放しましたが、ほとんど動けないものや水に浸けたとたんに活発になったものがいました。
その時は海に帰すことが出来て良かったと思いましたが、後になって果たして生き延びられないものに手を貸すのが良いことなのか分からないと感じるようになりました。
写真:ミユビシギシリーズ その4 夕焼けの中。この後日が落ちてからも餌を探します。
その後、孵化率調査について疑問を感じはじめ、いっその事適切な時期に掘り出して海に帰すかそれとも自然の摂理として放置するか悩みました。
いずれにしても掘り出した時の状態が様々で対応できる状態の方が少ないのではないかと感じました。
泳げるはずもないような状態の子ガメがまだ生きていれば、まさか埋め戻すわけにはいきませんし、海に帰しても水温が既に低い時期になってしまっている場合もあります。
そう考えていくと、そういう個体は巣の中で自然死するのが正しいのではないかと思うようになり、今回のような場合も表面から見守るだけにしているわけです。
孵化率調査をやめてからは随分気が楽になりました。
「対象生物に触れない、直接関わらない」という方針で調査してきましたから、生きた子ガメに触れる、関わるのは避けたいのです。
しかし今回のようにいつまでも出てこない巣を見ていると中で何が起きたのか知りたいという気持ちがやはり出てきます。
ウミガメ会議での様々な報告を見た事も影響しているかもしれません。
孵化率調査を再開するか悩みます。
写真:8/26巣の様子。
この巣を掘れば多少は生と死に向かい合わないといけなくなりそうです。
やはり自然のままに巣の中で兄弟たちと一緒に死を迎える方が幸せなのではないかと思ったりもします。
砂の中で死ぬことがウミガメの生命が無駄になったという事にはなりません。
砂の中には様々な生物がいて、ウミガメの卵を食べることが分かっています。
今回の発表でも卵の食害についての発表がありましたが、孵化率調査をしてみると種の分からない線虫や、甲殻類の幼虫などが良く出てきました。
こうして、それを待っているものもいるのですから、子ガメの死は無駄ではなくサイクルの一端でしかないと言えます。
人間のように死んだら灰にされてしまうだけでは死は無駄に見えますが、自然界の中での死はとても意味のあるものです。
「かわいそうだから助けたい」という自然に沸く感覚と、自然界での死の意味の間にどんなものがあるのか、考えさせられます。
※1 ウミガメのページ内「ウミガメによる砂浜の通信簿」
※2 孵化率調査で生きた子ガメが出て来た時の事(2004年11月のカヤック日記)
youtubeチャンネル「6dorsals kayak services」
2004-2015年の「母亀が見たもの」他、海が向かう子ウミガメの動画などをアップしてあります。
再生リストから見て頂くと見やいと思います。是非ご覧ください。
※日本ウミガメ会議の口頭発表の際に言い忘れてしまったので先月に続き案内させて頂きました。
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