今月はとにかく風の猛烈に強い日が多くなりました。
春はまあ大抵そうなのですが、特にそれを感じました。
しかし今月になって続いている熊本から大分にかけての頻発地震の事を考えると、風が強いなんていうのは全く大したことではないと感じます。
月を跨いで半月以上も揺れ続け、未だに揺れ続けているので大変心配しています。
これ以上の被害の広がりが起きないよう願っています。
また被害に遭われた方にお見舞い申し上げます。
本当に風が強い日には海上保安庁から走錨注意というのが発表されます。
海が荒れて沖に出られない為に館山湾のような湾の中で風が止むのを待っている船が「錨を下しているにもかかわらず風下に流され挙句は浅瀬に座礁してしまうという心配がありますよ。」という注意報なのです。
錨が利かないのであれば湾内で風上に向かってゆっくり走り続けていればちょうど同じ位置が保てるんではないかな?とカヤッカーなら思いますが、コストを考えると無駄が多いのでしょう。
しかし実際に館山湾では幾度も大きな船が座礁していて、今では私もそういう事があっても驚かなくなってしまいましたが、積んである燃料の流出だけは勘弁願いたいといつも心配しています。
写真:強風の海を悠々と飛ぶオオミズナギドリ。
そんな強風の日には多くの海鳥は岩場や堤防などで難を逃れようと集まって時化を凌いでいますが、そういう猛烈な海況でこそ活き活きとする鳥もいます。
そういう鳥のひとつ、オオミズナギドリは強風の日でなくても水平線をしっかり見れば見つかる鳥ですが、強風の日には岸近くを独占して風を利用して滑空していきます。
水面すれすれを左右に身体を振りながら1m以上もある翼を広げて得意げに飛んで行きます。
そんな時のウミネコなどは風に煽られてオロオロと飛んでいますから、さぞかしオオミズナギドリが羨ましいことでしょう。
今月はほとんど常に館山湾の中にオオミズナギドリがいましたらから風が止んでも、また間もなく吹くという事を示しているようでした。
それでも半日はベタ凪を楽しめる日も多く、吹き始めの予想を間違えなければ素晴しいカヤック日和も沢山ありました。
写真:風の合間のベタ凪を満喫。
ある日のカヤックツアー中にはアメフラシの仲間が海面を漂っているところに遭遇しました。
アメフラシの仲間のタツナミガイに似ていますが、小さめです。幼体?
大時化の日には砂浜にいくつも打ち揚がる事もあります。
打ち揚がったところは良く見るものの、その前に海でどのような状態でいるのかを見る事は少ないので、そういうものを見る、探す時にはカヤックのゆっくりと水面にほとんど波も立てずにじっくりと水面を見ながら進めるという事が大きな利点になります。
と言っても今回のものは探して見つかることはほとんどないですし、水面上に出ている身体はほとんどなく滅多に見つかりません。
今回私もまだ数回目でしたし、過去に上手に撮影できた試しがありませんでした。
拾い拾い上げて掌の上で撮るのは簡単ですし、もちろん海岸に打ち揚がったものをもう一度海に浮かべて水に浸かりながら撮れば時間をかけて撮れるとは思いますが、やはり実際に沖合を漂流している姿を撮りたいと思っていました。
今回はツアー参加して頂いたお客さんがパドルで下から光を反射させてくれたお蔭で十分な光が得られて、初めて思っていたように撮ることが出来ました。
小さいことですが、とても嬉しかったです。
パドルブレードがレフ版になるという事が分かったので次回はカーボンの黒いのはやめて白いFRPブレードを選ぼう…と思っています。
写真:漂流していたアメフラシの仲間。
この貝殻が退化した貝が海を漂っているのはシケの頻度と関係があるのでしょうか?シケの時に浅い海底で波に揉まれ海底から剥がされてしまい、とりあえず浮く事で適当な場所に流れ着く事を期待している?なのに多くは砂浜に打ち揚がってしまい干からびてしまう?
もしそうだとするとシケの合間の凪にこれを見つけられたことに納得がいきます。
それにしても遊泳する能力は備わっていないのに浮かぶ能力は持っているという、その利点が分かりません。
水中で天敵に襲われた際に逃れるためにスーーーッと浮かんでしまえば遊泳能力の低い捕食者から逃れるには都合が良さそうです。
図鑑で調べてみたところ、やはり近縁のフウセンウミウシという種では「襲われると風船のように丸まり、波に乗って逃れる習性がある」との事でした。
今回のものとフウセンウミウシは色合いなどが随分違うので別種と思いますが、近縁なので他のアメフラシの仲間も幼体の時には同じような方法で危険回避するのかな?と考えてみたりしました。
時化で波に激しく揉まれるという瞬間は天敵に襲われたのと変わらないような状況になりそうなので、とりあえず浮いて対処するという事になるのかもしれません。
しかし、その後浮力を弱めて海底に戻る術が無いのでしょうか?
それでは海岸で干からびる運命です…。
写真:トビの巣を襲うハヤブサ。右下がトビの巣。
シケの日には岸からハヤブサの観察に出掛けました。
今回の巣が、その穴だらけの海蝕崖のどの穴なのか未だに明確に分かっていないのですが、だいぶ絞れて来ました。
海からでないと見ることが出来ないうえに高さがあり、ヒナの姿は見られそうもありませんが、そのうちあのデカい餌を強請る鳴き声だけは聞えてくるでしょう。
近所にはトビの巣が多く、それが迷惑に感じているのかハヤブサが執拗にその巣を襲っているシーンを見ることが出来ました。
ハヤブサは甲高い鳴き声を発しながら高速でトビの巣に向かってすれすれを霞めては飛び去るという事を繰り返し繰り返し行っていました。
巣の中ではトビがヒナか卵を護るために翼を広げながら悲鳴を上げています。
これがヒナを捕食するための親鳥を追い出す攻撃なのかもしれないと思いましたが、∞の字を描きながら繰り返された攻撃にもトビは堪えて子を護り通しました。
子を育てるというのは本当に大変そうです。
写真:見慣れたトビもこうやって見るとなかなか素敵な鳥です。
例年通りスナビキソウも順調に生育しています。
月末近くには北に面した館山の群落でも花が満開となりました。
アサギマダラも間もなくやって来るでしょう。
この館山の群落にはいつからか黄色い、色素の無い様な株が見られるようになりました。
今年も黄一点で目立っていましたが、ある時になぜか恐らく人の手でもがれてしまっていました。
なんの為なんでしょう?
その後どうなっていくのか興味がありましたので残念です。
しかしなぜ黄色いのか?もっと勉強しなくてはなりません…。
写真:黄色いスナビキソウ。
スナビキソウが生息するのに適した海岸は案外限られています。
一見何でもないような海岸ですが、まず種子が漂着しやすい場所である必要があります。
海を流れてきてシケの時に打ち揚がる、それには潮の流れと波の角度と海岸地形の複雑な関係があります。
ゴミの多い海岸は漂着種子の留まりやすい場所でもあります。
そのうえで波に洗われる頻度が高過ぎず、波の力が強すぎない事も大切で、十分に地下茎を巡らせる前にシケで枯れてしまったり流されてしまったりしても大きな群落になりません。
ですから、どの群落のある場所も砂浜でありながら、浅瀬には岩礁があるという特徴があります。
潮が上げている時の高波では波に運ばれた種子が漂着するけれど、岩礁のリーフがあるおかげで離岸する流れが弱いという事になります。
カヤックに乗るとこういうことが体感的に理解できるのが本当に良いところです。
種子になった気分が味わえるわけですね。
写真:館山のスナビキソウ群落のひとつ。
更に陸側の条件としては砂浜の最も奥の砂丘に至る直前のまだほとんど傾斜の無い場所で、大時化の時にだけ波を被る砂浜の植物の中では最も海寄りな場所の線上に主に生息しています。
時折波を被ることで自らも枯れますが、地下茎がしっかりしているために再起します。
しかし他の塩水に弱い他種は波を被る度に後退していくので、有利に分布を保つことが出来るようです。
そして何よりの大敵は人工的な構造物です。
それらが無い事、海に近すぎる道路の無い事が大切です。
実際に南房総のスナビキソウ群落はどれも道路から離れたアクセスの悪い場所にだけ残っています。
恐らくは上記の海岸条件であれば海岸整備さえなければもっと多くの海岸で普通に見られた種だったでしょう。
スナビキソウを見ておくことで、その海岸の健康さが一目瞭然です。
スナビキソウが無い海岸ではそれぞれのタイプの海岸で他の植物がその役割を果たしてくれています。
海浜植物の花は良く見るときれいな物ばかりです、環境指標としても鑑賞や撮影対象としても優れている海浜植物はもう少し注目を浴びても良いと思います。
写真:とある崖下で20mほども巻き上がる海水。大風の日にしか見られない光景。
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