カヤック日記


2016年5月の出来事



大きくなったトビのヒナ。




















写真:大きくなったトビのヒナ。

3月の日記で写真を載せていたトビの巣ではヒナが巣から溢れているかの様に大きくなりました。
トビの巣をちゃんと継続して観察したことがなかったのですが、今回はハヤブサの繁殖活動の記録を取るついでに観察が出来て楽しみがひとつ増えた感じです。
トビはハヤブサのように希少扱いされないですし、色柄も地味で、雑食な捕食活動はゴミ漁りのイメージで、生体を捕食するハヤブサに比べカッコ良さという点でも同じ猛禽類でありながらヒトからは大きく違うイメージを持たれています。
今回のようにトビのヒナが育つ姿を見てみると、私自身も印象でものを見るヒトなのだと改めて考えてしまいます。
しかし、トビの生態もハヤブサと同じように面白いですし、その実際も分かっているようで分かっていない事が沢山あるのですから同じように興味深い対象なはずです。
それでもハヤブサとトビを天秤に掛けてやはりハヤブサを取るのも、まあ自然な気持ちだとも思いますが…。

猛スピード夫婦なハヤブサ。




















写真:猛スピード夫婦なハヤブサ。

私としてはハヤブサの他にも南房総のミサゴの繁殖状況をもっとちゃんと知りたいという欲求があるのですが、どれもこれも出来るとは思えず、今のところハヤブサを中心に見ている感じです。
実際にはあれもこれも含めてその地域の自然がバランスしていますから、少しでも多くのものを対象にしていくことが大切なのですが、季節ごとに芯となるものを決めてそれを取り囲むものを見ていくという形が最も効率が良いように思っています。
「海に関わる猛禽類の繁殖」という事で今年はハヤブサ、来年はトビ、再来年はミサゴ…とやっていっても良いかもしれません。
しかし私の場合、一旦ハヤブサで始めた場合には芯はハヤブサにした方が観察の経験値が上がって来て、年を追うごとに効率が良くなり、結果として周辺環境へ目を向ける余裕が出てきますし、対象生物と環境との関わりが分かってくると思っています。
もし対象生物を変えてしまうと視野は広くなるけれど、時間的経過の記録は取れないので継続的な変化を知ることが出来なくなってしまいます。
ひとりで欲張っていろいろ手を付けるよりもある程度身近になった「いつもの彼ら」を見ながら、その周辺でいつもは見かけない者やちょくちょく視野に入ってくるものをオマケで記録していくというのがやり方になっています。
もっと先まで何年も続けて行って、もしあのハヤブサたちが引退したりして会えなくなった時には、それがミサゴに切り替える時かもしれませんから、それはそれで楽しみです。

アサギマダラを見に行った時に見かけたミサゴ。捕獲した大きな魚を巣に持ち帰るところでしょうか?




















写真:アサギマダラを見に行った時に見かけたミサゴ。捕獲した大きな魚を巣に持ち帰るところでしょうか?

しかし実はミサゴは冬の間に個体識別を始めましたので、既にその準備を始めているという考えでもあります。
個体識別を基盤にして行動範囲などを把握出来るようになれば、将来始めるかもしれない繁殖調査に役立つだろうと思っています。

6月に入り今日からウミガメの産卵上陸調査を始めていますので、今月以降ハヤブサは2番手になり出来る範囲で追う程度になってしまいます。
季節が変わって、南房総に来る動物が変わり、私の行動パターンも変わる感じです。
南房総の中だけでもこれだけ見続けられる対象がありますから、ひとりで出来る範囲をもう既に越えてしまっている感じがしています。
ものの見方が近視になっているので「南房総は広すぎる!」と最近よく感じます。
俯瞰しながら近視眼的に見る為にハヤブサやトビのような翼と非常に良い視力が欲しいものです。

よく見ればカワイイ?フナムシ。背景はペットボトルの漂着ゴミ。クジラの胃からプラスティックが出てくると話題ですが、フナムシがプラスティックを齧ったりしていないか?と心配する必要もありそうです。




















写真:よく見ればカワイイ?フナムシ。
背景はペットボトルの漂着ゴミ。クジラの胃からプラスティックが出てくると話題になりますが、フナムシがプラスティックを齧ったりしていないか?と心配する必要もありそうです。

今年はいろいろやることが多くてスナビキソウとそれに集まるアサギマダラのマーキング調査を省きました。
アサギマダラというこの写真の蝶は移動性が高く、「マーキング調査」という「翅に印を書いて放蝶し、他の土地で再捕獲されて移動を確認する」という調査が行われていて、私も南房総の海岸に生えているスナビキソウでアサギマダラを確認した年からマーキングを入れる事で調査に参加している形でした。
しかし、近年スナビキソウ群落に飛来する数が減って来ている様子で、そうなって来ると数少ない個体を捕獲しマークを入れるという行為で多少は生存率を下げている可能性があるのではないかという心配もしていました。
アサギマダラは全国的に見れば希少種ではないですが、地域的に見れば「南房総の海岸に立ち寄る」という性質を持った遺伝子を受け継ぐ個体の数は少ないのですから、十分注意しなくてはいけないと考えています。
また数が多い年があればそのうちの一部にはマークさせてもらっても良いでしょう。
今年はお休みして、気長に数が多い年を待とうと思っています。
自分の時間的余裕がなかった事と、アサギマダラの数の少なさがちょうど都合よく重なった感じです。
こういう日和見的な調査努力量の柔軟さは、受け取ったお金から発生する義務によって行う調査には無い、個人調査の良さだと思っています。

スナビキソウの枯れた葉を吸うアサギマダラ♂。




















写真:スナビキソウの枯れた葉を吸うアサギマダラ♂。

それでも撮影、観察は時間を作って出掛けました。
捕獲する気が無いと、不思議と近くで観察することが出来る事が多く、例えば写真の個体は手で翅をつまんで捕獲できるような状況で撮影させてくれました。
まるで網を持っていないのを知っているのかも?という感じです。
この写真の個体はオスで、花から蜜を吸うのではなく、枯れたスナビキソウの葉からある成分を吸っているところでした。
その成分はピロリジディンアルカロイドというもので、繁殖に必要な成分と言われています。
彼らが枯れた葉を吸ってボンヤリしているのは、僕が思うにはアルカロイドで酔ってしまっているのではないかと感じています。
酔っぱらいのチョウチョなオスたち。
多分、アサギマダラのオスが長旅の疲れを癒しに集う海岸の酒場なのですかね。

日が長い季節ですから、夕焼けを見るにはお泊りがお勧めです。




















写真:日が長い季節ですから、夕焼けを見るにはお泊りがお勧めです。



お知らせ

ハヤブサのオスが空中でメスの餌を渡すシーンをYoutubeにアップしました。
是非ご覧ください。

Youtube 6dorsals Kayak Services「2016年5月 南房総でのハヤブサ番 エサの受け渡し」





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