写真:産卵シーズンを迎えた根本海岸。梅雨はガラ空きです。
今年も梅雨と一緒にウミガメがやって来ました。
昨年の6月には一度も上陸が無く大変心配していた根本海岸ですが、今年はなんと6月だけで既に4回上陸し4回とも産卵した様子です。
数年前から巣の掘り出しでの卵確認はしなくなりましたので、確実ではないですが今までの経験から巣穴を掘って埋め戻した痕跡から産卵ありか無しかを判断しています。
母ガメがせっかく丁寧に埋めた卵を確認のためにわざわざ掘り返してしまうのでは、何のために記録を取っているのか分からないのでシーズンを通して卵には触らない方針としました。
卵には触らなくても卵を見ることがなくても分かることは沢山あります。
それを丁寧に拾い上げられれば十分だと感じています。
写真:6/11根本でのウミガメ上陸痕。写真手前に忘れ物がありますね。
という訳で長い事ウミガメ産卵調査をしていながら滅多にウミガメの卵を見る事の無くなった私ですが、先日久しぶりに卵を見る事ができました。
写真の6月11日の根本海岸での上陸の痕跡ですが、上陸点と海に帰った位置が全く一緒で、その海に帰った位置の波打ち際に卵がコロリと1個だけ落ちていたのです。
かわいそうなこの卵はまだ生きている可能性が高いですが、巣の中に戻してあげるには他の卵の環境を乱す可能性があります。
迷った挙句、巣のすぐそばに一応埋めておきましたが、巣の中のような条件が整っていませんから無事に巣立つことは無いと思います。
しかしなんでこういう事になったのか?私も初めての経験で良く分かりません。
まだ産み終えていないのに慌てて海に帰らなくてはならない要因があったのか、それともたまたま1個産み忘れてしまったのでしょうか?
いずれにしても早朝や夜間の海辺でウミガメに遭遇したら、どうぞ十分な距離を置いて遠巻きに見守ってあげてください。
写真:もう立派に飛んでいたトビのヒナたち。先月の日記の写真と見比べてみてくださいね。
ハヤブサの方はほとんど見に行くことが出来ず、行ってもトビの巣の様子が見られるだけで相変わらずハヤブサの巣の様子はよく分かりませんでした。
しかしトビの巣は観察がしやすくヒナもみるみる大きくなるので行ってハヤブサを待っていても飽きる事がありませんでした。
ふたつ見える巣のうちのひとつは2羽が無事に巣から飛び立てるようになっていました。
もう一つの巣は良く見えないのですが、どうやらヒナは1羽でまだ飛べないようです。
飛べるようになったヒナもまだ母親にエサをもらっているので母鳥が巣に戻ると急いで餌をねだり、狭くなった巣の中が大騒ぎになります。
激しくエサを取りあうヒナの勢いに負けてエサを置いて母鳥は慌てて巣から飛び去らなくてはならないような様子でした。
元気なのは良いですがお母さんは大変ですね。
ハヤブサの繁殖の様子もまだ気になるので時間が取れればまた様子を見に行きたいと思います。
写真:ハシボソミズナギドリと思われる死骸。オーストラリアから渡って来ながら多くの若鳥が淘汰され打ち揚がりますが、この個体は釣り糸が絡んだ事で死んだのかもしれません。
梅雨ですので雨が降り続く日も多くなりましたが、実際のところ今年は晴れている日が多いですね。
半日は土砂降りでも半日止んでいてくれれば、ツアーの無い日にはウミガメの調査の時間を雨の様子に合わせて調整して行っています。
ただし夏休みともなれば流石の南房総も人出が多くなり人の足跡でウミガメの足跡が掻き消されてしまいますので、そうもしていられませんが。
雨の日に海岸に行くと晴れの日には見られない光景があります。
まず漂着物に集まるハマダンゴムシをはじめとした掃除屋の小さな生き物たちが日中でも見られます。
普通の人は気持ち悪い…と思うかもしれませんので、雨の日に海岸に行かない方が良いのかもしれませんが、夜間に主に活動する彼らの様子をじっくりと観察するには雨の日が良いです。
海藻、海鳥の死骸、流木、なんでも齧って片付けようとしてくれています。
上の写真のようにすっかり痩せ細って死んだ、カラスも食べるところが無いと判断するような渡り鳥も骨と羽根(と釣り糸)だけを残して分解してくれます。
硬そうな青い竹を齧っているのを見た時は少し驚きました。
あとプラスティック製品を齧っているような個体もいたのですが、どうやらプラスティックが漂流しているうちにその表面に付着した藻類などの有機物を食べているようでした。
しかしそうやって微量のプラスティックも取り込んでいるのではないかな?と感じました。
その影響が出るか出ないかは興味深いです。
写真:滴を滑り台のような葉先に持っているケカモノハシと葉の掌に大きな水を掴んでいるハマニガナ。
もうひとつは雨に濡れた海浜植物の姿です。
海岸に棲息するという事は砂地か岩場に根を張るという事です。
栄養の豊富な土に中に根を張る植物からしたらとても厳しい環境です。
根から吸収する養分は漂着した有機物からのものですから、ちょうど先のハマダンゴムシと同じようなものです。
海から供給されるもので植物が生きてるというのは何となくちょっと不思議な感じがしなくもありません。
写真:ザラザラ処理されたツルナの葉の表面。工業製品でも水を弾くためにこういう処理がされている場合がありますね。
養分に加え真水を得るのも地中からでは足らないでしょう。
夜露や雨はとても貴重な水分になりますから雨の時に水を確保する、その事に対する工夫は水を少しでも自分のところに確保しようという努力の結晶がカタチになっています。
肉厚で葉の表面がザラザラしているものが多く、厚い葉に水分を蓄えながら、ザラザラの表面処理により水を滴にすることで表面積以上の水をその葉という手に乗せているように見えます。
滴はある程度大きくなったところで茎を伝って根の近くに落ちていくのでしょう。
なにしろその滴を纏った姿はとても美しいもので、カメラにマクロレンズを付けて歩けば飽きる事がありません。
やはりせっかくの梅雨ですから雨の海にも遊びに行って見てみてください。
ちょっと新鮮な発見があるかもしれませんよ。
写真:海岸を歩くといつもどこからか見ているシロチドリやコチドリ。今はヒナと一緒に歩き回っているので特に用心深いです。梅雨の晴れ間の海岸で。
メモ(本文に書ききれなかったその月の出来事を今月からメモとして加える事にしました)
環水平アークを3度確認。
オニハマダイコンを千倉などで初確認。
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