カヤック日記


2017年3月の出来事



今月もいろいろなソラが見られました。













写真:今月もいろいろなソラが見られました。

先月はカモメウォッチングもそろそろ終わりと書きましたが、それに加えて書いたように珍しいミツユビカモメに2回も遭遇することができました。
かなりの強風が吹き続けた時に緩やかな群れになって岸辺にやって来ることが多い種なのですが、今回の2羽は群れについていけなかった逸れ個体だった様子です。

うち1羽は翼の模様から若い個体だとわかりました。
千葉県南端の野島崎の岩場の浅瀬に降り立った後、水中を探るような様子を少し見せながらも餌を探すでもなく、しばらく浮いていて間もなく飛び去りました。
これは南半球から飛来したハシボソミズナギドリが疲れ果てて淘汰される直前の様子に良く似ていました。
凪でしたが、これを見ていて細長いミツユビカモメの翼はミズナギドリのようにむしろ風が吹いている方が飛びやすいのかもしれないと感じました。
風に乗って飛べるように適度な風速のある場所を追いかけながら飛ぶには群れに加わり経験のある成鳥と共に群れと逸れないようにする注意が大切なのでしょう。
経験不足の若者が単独行をするには、彼らの季節移動は厳しすぎるのかもしれません。

写真:日の落ちた暗い館山湾を飛ぶミツユビカモメ。













写真:日の落ちた暗い館山湾を飛ぶミツユビカモメ。

もう1羽はウミネコに混じって釣り人が撒く撒餌に寄って来てオキアミをついばんでいました。
よく見るとこの個体は翼の先の羽根がふたつに分かれてしまっていて、胴体の羽毛もなんだかバサバサとしていて水弾きの悪そうな感じです。
羽根を繕う余裕が無いような体調なのでしょうか?
持ち合わせた飛翔能力の高さはウミネコよりも小型な点が有利なようで、明らかにウミネコに優った機動性を見せていますが、本調子のミツユビカモメであれば、こんなところでそんな餌を漁らなくても良いだろうと思います。
元気な個体が大嵐の中を自由に舞う姿を思い起こせば、この個体は本調子ではなさそうです。
それでも高齢ゆえに経験値が高いのか撒餌がウキの近くに落ちてくる事を知っているかのようでしたし、ウキのそばに陣取って真っ先に撒餌を得てからは自分より身体の大きなウミネコの競争に巻き込まれないようにすかさず飛び立って距離を置き、ウミネコの喧騒が収まったところを待ってまたウキのそばに降り立つあたりはかなりの賢さが感じられました。
今まで苦労した分、いろいろな事を学んできたのかなあ…と感じました。

写真:ウキの前を陣取るミツユビカモメ。













写真:ウキの前を陣取るミツユビカモメ。

写真はその個体です。
ミツユビカモメの写真はかなり少ないので、既にかなり暗くなっていたのですが沢山撮りました。
感度を高くしていたので荒い写真ですが、嬉しいので何枚も載せてしまいます。
ウミネコの、魚のような表情の薄い眼やオオセグロカモメのような強気そうな眼でもなく、なんとなくやはり知性を感じさせる眼でした。
小さいですけど気も強そうですね。
大きな長い翼で羽搏くと胴体のわりに大きく堂々と見えます。
この個体がその後どんなふうに過ごすのか興味深いですが、恐らく繁殖地へ移動中でしょうし、こういう鳥の継続観察は難しいです。
以前、同じ場所で弱ったウミスズメが単独で泳いでいるところを見たことがあります。
その個体は私が見ている短い間にハヤブサに捕らえられてしまいました。
このミツユビカモメも弱っていればハヤブサの餌となる可能性もありそうですが、もうしばらく元気で過ごしてほしいなとなんとなく感情移入してしまいました。

独特の羽搏きのしなやかな翼。













写真:独特の羽搏きのしなやかな翼。

沿岸の海鳥の種毎の関係は(矢印は働きかけの関係)

ハヤブサ(鳥捕食者)→トビ(魚泥棒、死体食者)→ミサゴ(魚捕食者)
↓                        ↑(稀?)
ウミウ、ウミスズメ、サギ類(魚捕食者)←カモメ類(魚泥棒)

といった感じです。

ハヤブサはトビとは巣の適地を争ったり巣の中のヒナを捕食したりしている様子です。
トビはカラスとも巣の適地を争っているようですですが、ある程度距離を置かないと精神的にストレスを感じてトラブルになっているようです。
ハヤブサがウミウやサギを食べているところを見ていませんがウミスズメは食べましたし、少なくともウとサギもハヤブサを警戒する様子は見られます。
ヒヨドリやハトは海辺でよく見られハヤブサに捕食されますが、海のほかの鳥との関わりが薄いです。
そもそもハヤブサも普通は海鳥とは言いませんし、主に陸の生き物を食べているのでここに加えるのは難しいかもしれないのですが、実際には海辺で多々見かける鳥のひとつですので、私は海に関わる鳥のひとつと考えています。
水中で捕ってきた魚の成分を陸に運ぶ役割としてはミサゴやウミウが大きいと思いますが、ハヤブサも間接的にかなり影響していると思います。
しかし、その役割はやはりミサゴが一番でしょう。

トビと一緒に旋回するミサゴ。













写真:トビと一緒に旋回するミサゴ。

ウミウやウミスズメが潜水して魚を捕り始めると、冬から春であればまっさきにユリカモメが集まってきて彼らを脅かして魚を奪おうとし始めます。
しかしオオミズナギドリが潜っている場所には集まってきません。
ユリカモメがウミウが既に飲み込んだものを吐き出させるような様子からすると、ミズナギドリは水中で魚を飲み込んでしまうからというわけでもないと思います。
やはり身体のサイズで敵わないからなのでしょうか、ウミウは気が弱いと知っているからでしょうか?
更にユリカモメが集まっているところを見てウミネコがやって来て、自分より小型のユリカモメを圧倒し始めます。
ウミウやウミスズメには災難な場面です。

ミサゴの魚を狙っているオオセグロカモメ。













写真:ミサゴの魚を狙っているオオセグロカモメ。

ウミスズメの群れがいる場所はユリカモメたちの様子でわかる場合があります。
双眼鏡で沖を見てカモメの仲間が集まっている場合は水中に潜って魚を捕ってくる能力のある鳥が水面にいます。
カモメ類は潜る能力がないので、水面より上に魚を持ってきてくれる者が必要なのです。
ですから同じ鳥の群れでも潜水能力のあるオオミズナギドリが群れていても、そこに魚はいますがウミスズメはいません。
ミサゴも水中の魚を捕獲する能力がありますが、他の鳥と違って泳ぎながら捕獲するのではなくて水面の上を飛びながら魚を見定めて水面に足から突っ込んで行き、鋭い爪で捕まえます。
さすがにミサゴからは魚を盗もうとする者はいないかと思いますが、同じミサゴやトビに狙われて落ち着いて食べていられないという場面はよくあります。
先日は珍しくオオセグロカモメに魚を狙われているミサゴを見ましたが、カモメはなぜ自分で潜って魚を捕るということを始めなかったのでしょう?
もっと昔にカモメ類の祖先が頑張っていてくれていたら、今頃彼らは他の鳥の食い残しばかりではなくて新鮮な魚を食べていたかもしれないのにですね。

ウミウたち。













写真:ウミウたち。

鳥を見ていると、それぞれの種ごとの生活の仕方が、人でいう職業の違いのように見えたり、国の違いのようにも見えてきます。
ユリカモメは搾取ばかりしているように見えますが、実際は大きな輪の中のどこかでウミスズメに利益を還元しているのかもしれないですね。
自然界も人間界もそうでなくては続かないのでしょう。

大時化で館山湾に避難していた多数の船もあっと言う間にベタ凪に。













写真:大時化で館山湾に避難していた多数の船もあっと言う間にベタ凪に。





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