カヤック日記


2018年10月の出来事



館山湾で丸木舟を漕がせていただきました!




















写真:館山湾で丸木舟を漕がせていただきました!

先月に引き続き、今月も館山で「3万年前の航海徹底再現プロジェクト」の丸木舟の完成を目指した試乗、改良が行われました。
私も時間が取れる日にお邪魔させていただき、丸木舟が性能を高めていく現場を見させていただきました。
そしてなんと、今回は漕ぎ手が足りない日と館山湾内で道案内が必要な時に丸木舟に乗せていただき、漕ぐ経験もさせていただきました。

館山市の北端の船形港に舫われていた丸木舟を館山港に移動する時には1時間ほど漕ぐ経験ができました。
カヤックで見慣れているはずの沖から見た館山の風景を新鮮な気持ちで見ながら漕ぎ進み、慣れない片側一つの水掻きのパドルをぎこちなく扱い、普段マイペースで漕いでいるシーカヤックとは違い、息を合わせて漕ぐことに楽しく戸惑いながら、初めてシーカヤックで館山湾を漕いだ時のような気持ちが蘇ってくるのが感じられました。
25年前に館山に移り住んだ頃に感じていたものが気づかないうちに随分と擦り減っているんだな〜と感じました。
忘れかけていた気分を思い出して、またカヤックを漕ぐ事が、というか慣れ親しんだ南房総の海を漕ぐという事がまた新しく感じられるようになりそうです。

写真:カヤックからカメラを水中に入れて撮影。気温が下がり、次に水温が下がってくると透明度が高まります。















写真:カヤックからカメラを水中に入れて撮影。気温が下がり、次に水温が下がってくると透明度が高まります。

そう考えると乗り物が変わるという事、移動手段が変わるという事が、人の視点と気持ちに大きく影響を与えるのだということを改めて実感しました。
それは私にとっては海から陸を見るという大きな視点の変化を得たシーカヤックを始めた時に最も大きかったのですが、慣れてくればそれは普通の事になっていきます。
しかし、パドルで人力で進む丸木舟のような、それほどシーカヤックとかけ離れたものではないはずの乗り物に乗っただけでこれだけ気持ちの変化があるというのは驚きでした。
最近シーカヤッカーがみんなSUPをやっているということは、つまりこういう事なのかもしれないと思い、それが自分にとっては丸木舟だったのだと思います。
SUPをしているシーカヤッカーはシーカヤックに乗った最初の頃の新鮮な気持ちを取り戻したくてSUPに乗り、そしてシーカヤックに戻るために今、SUPに乗っているのかもしれないと思ったりしました。
僕もマイ丸木舟を作って、SUPerのように丸木舟erになれたら楽しそうですが。

写真:沖ノ島から沖ノ島を見ることはできませんが、沖から沖ノ島を見ることはカヤックでできます!















写真:沖ノ島から沖ノ島を見ることはできませんが、沖から沖ノ島を見ることはカヤックでできます!

それにしても今回のプロジェクトの大切な準備段階をこの館山で行っているということは、もっと館山市でも千葉県でもなんでも、もっと大きく取り上げたら良いのにと思います。
黒潮の流れの上流で行われる実験航海の訓練と準備ための場所として、黒潮の下流である館山の海が選ばれたのは必然的で、台湾や与那国といった遥か西にある島々とこの館山が黒潮で繋がっているという事を実感する、とても嬉しい、もっと自慢して良い、素晴らしくラッキーな出来事だと思うのです。
「見物人が多すぎて作業がしにくい!」と楽しい悲鳴が出るくらい人が集まりそうな面白い出来事だと思うのです。
プロジェクトのフェイスブックやインスタグラムには幾度も「館山」の文字が踊り館山の風景が掲載されました、その度になんだかとても嬉しかったのは僕だけでしょうか?

こちら側とは比べ物にならない人口の多い対岸をバックに魚を探すミサゴ。













写真:こちら側とは比べ物にならない人口の多い対岸をバックに魚を探すミサゴ。

肌寒い日が続くと今年もミサゴの季節です。
いつもの決まった場所のいくつかで例年通りミサゴが確認できています。
しかし今月は運が今ひとつで、近距離で真下からという場面に出会えず、個体識別に使えそうな写真はまだ撮れていません。
まあいつも気長に一冬かけて行っている作業ですので、今年ものんきにやりたいと思います。
あまり気合が入っているとミサゴに感じ取られて、むしろ距離を置かれてしまいます。
野生動物には「君には興味がないんだよ」というくらいな態度がちょうど良いみたいですね。

しかし本当に興味がないと無頓着で相手に失礼な場面も見られます。
この夏以来、ある場所でトビに人の食べ物を与えている人がいます。
その食べ物はトビの健康に良いのでしょうか?トビがその場所に集まりすぎる事で人とのトラブルが増えないでしょうか?
過去の事例から、結果としてトビが迷惑な動物として扱われるようなことになると想像できます。
動物が好きでも野生の生活に無頓着だと彼らの生活の全体を見ないので、今その目の前で幸せそうだと思い、それで満足してしまうのでしょうか…。

カヤックツアーの昼食時に飛び入りの参加者。ウミガメではないですよ。















写真:カヤックツアーの昼食時に飛び入りの参加者。ウミガメではないですよ。

野生の生活はなかなか人には実感できない地味な生活で、動物でもそうですが、植物となれば、もう何も見えてこないという場合も多いでしょう。
よく見れば、特に時間をかけて見ていれば、その生活も見えてくるのですが。
先日、ミサゴを探しに行った南房総市の太平洋岸で白い花をつける南房総では珍しいハマゴウの群落が消失した現場に出くわしました。
まだユンボと作業員の人がいて、今さっき作業が行われたばかりというタイミングでした。
もし1時間でも早ければもしかしたら…と考えると非常に残念でした。

写真:ここ一面にシロバナハマゴウの群落が広がっていました。















写真:ここ一面にシロバナハマゴウの群落が広がっていました。

この群落は2009年にウミガメの産卵調査中に発見し、それ以降ウミガメ調査のついでに毎年記録してきたものでした。
台風などで幾度も厳しい状況になりながらも、その長年かけて育った太く丈夫な地下茎を基盤として次の年には何もなかったかのように芽吹き、花を咲かせていました。
しかし今回は地下茎も、まさに根こそぎとなってしまい、かなり難しい状況だと考えられますが、運よく隅っこに残された地下茎と葉がありましたので、この僅かな希望に期待して来年を待ちたいと思います。
これも作業を発注したお役所が海岸植生の特徴に興味を持っていれば気づけたと思うのですが、それこそシーカヤックで沖から海を見ることに慣れてしまう私のように、南房総のような海岸植生の豊かな土地に生まれ育つと、海岸にある草を見慣れすぎていて関心を持ちようもないのだと思います。
だから、それぞれが違う乗り物である身体で違うものを見て感じているのですから、それぞれに感じる事、知っている事を共有できる場所が必要だなと感じました。
まずはここで、こうやって発するのはまず第一歩かなと思ったりします。
それでこんな草に興味がある人間もいるんだということを少しでも知ってもらえればと思ったりするのです。
シロバナハマゴウの写真は群落を発見した 2009年7月のカヤック日記 をご覧ください。

写真:寒すぎず、晩御飯に間に合う時間に日が落ちる、夕焼けを楽しむには最高に季節になりました。













写真:寒すぎず、晩御飯に間に合う時間に日が落ちる、夕焼けを楽しむには最高に季節になりました。

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