カヤック日記


2019年1月の出来事



強風の合間の凪の日に。カヤックの下に広がる世界。















写真:強風の合間の凪の日に。カヤックの下に広がる世界。

今月も風の強い日が多かったですね。
それでも合間には凪もありますから、凪の時でなければ得られないものを探しにいきます。
もちろん時化ていても、時化ているからこそ見つかるものもあります。
普段は沖合にいる海鳥が湾内に避難して来ていて見つかるとか、そういう時化の景色自体がそういうものです。
海には凪と時化は両方ある方が楽しいのです。
何日も続いた凪ではなくて、大時化の合間の一時の凪だから見つかるものもあるはずです。
ビーチコーミングで出逢うもののバリエーションが増すのもそういう時です。
時化の間に打ちあがったウミガメや鯨類の漂着が見つかるのもそういう時だったりします。

写真:波の立つ日は立つ日なりの遊び方。波の中でしか見られないものもあります。















写真:波の立つ日は立つ日なりの遊び方。波の中でしか見られないものもあります。

風が何日も吹き続けていると、凪の日が欲しくなりますが、毎日凪いでいると、時化も時々は無いと物足りないな…と無い物強請りが発生したりします。
シーカヤッカーは両方楽しむので、凪は凪なりの楽しみ、時化は時化なりの楽しみを見出します。
もちろん時化の度合いによっては海に出ないという選択は多々ありますから、そういう時には海岸を散策して海を眺めて貝殻を拾えば、シーカヤックを浮かべなくても楽しめるわけです。
というわけで、今月は海岸散策に費やす時間が多くなりました。
海に出られなくても、自転車があれば海岸を広範囲に見て回れます。

写真:半島の利点。風が当たっている裏側の海岸線に行けば暖かいのです!















写真:半島の利点。風が当たっている裏側の海岸線に行けば暖かいのです!

カヤックを漕いでいると海岸線をくまなく知ったつもりになりがちですが、陸側をじっくり調べていくと知らなかった事が想像以上に多い事に気づきます。
陸側から知った海岸の情報は例えば緊急時の避難上陸に使える海側からは見つけにくい入江などカヤックを漕ぐ時に有用な情報があります。
また私の場合であれば上陸しにくい岩場奥の海浜植生の分布や、漂着物の傾向などは主な興味の対象です。
それに加えて、カヤックに乗っているだけでは偏りがちな運動を、歩いたり、自転車を漕ぐことで補えるのも良いところです。
逆に言えば、普段は山登りやビーチコーミングでよく歩いている人、自転車をよく漕ぐ人がカヤックを漕げば普段とは違う運動ができて良いかもしれません。
ビーチコーマーなら、カヤックに乗ることで新たなポイントを見つけられるかもしれません。是非一度試してほしいのです。

写真:とても澄んだ冬の海ではカヤックを漕ぎながらサンゴも見つかります!















写真:とても澄んだ冬の海ではカヤックを漕ぎながらサンゴも見つかります!

海岸線を散策しているとミサゴに出逢いますが、今月は個体識別に使えそうな写真はあまり撮れませんでした。
いくつか撮れた写真も過去の写真と照らしても合致するものはありませんでした。
しかし、海岸線を広く探索する時間が多く取れたお陰で、今までミサゴと遭遇したことがなかったポイントでミサゴが見つかったりする幸運にも恵まれ、チェックポイントがまた増えました。
カヤックで漕ぐよりも移動速度が速い自転車の方が、遭遇の可能性はやはり高まるのです。
それに数百メートル先に飛んでいるミサゴを見つけた時にも自転車は急いで漕げば近くに寄れる場合も多くなります。
ただ、ミサゴは海の上で魚を探して舞っていますから、岸からでは真下からの撮影ができない場合が多く、個体識別には写真が使えない場合が多くなります。
それでも、そこにいたという事実は良い記録になります。
2月はもっとミサゴの写真を撮れれば!と思っていますが、ミサゴ次第ですから、ひたすらに通うしかありません。

写真:紅葉したイソギク。















写真:写真:紅葉したイソギク。

本来カヤックは北極圏の人たちなどが、食べるための生き物を捕らえるために創ったものでしたから、私のように生き物を観察したり、写真を撮ったりしている姿をその昔のカヤッカーのご先祖様たちが見たら呆れていたことでしょう。
実際、現代でも船に乗るというのは漁業か輸送のためというのがほとんどで、その他に様々な作業用やレジャーとしてヨットやクルーザー、カヌー、カヤックといったものまであるわけですが、海岸でカヤックを海に浮かべる準備をしていたり片づけをしていたりして、まず訊かれるのはやっぱり「何か釣れましたか?」なのです。
船に乗るというのは目的として漁獲があるのだと、少なくとも陸に暮らす人には思えるのだということが分かります。

カヤックで釣りをするというのは、ひとつのカテゴリとして安定した遊びなのですが、カヤックに乗って移動を楽しむツーリング、そしてテントやらを積んで宿泊までするキャンプツーリングといった、仕事でいえば漁業よりは輸送に近い(自分を運ぶ?)遊び方もあり、実際のところはこのツーリングが近代シーカヤッキングの主な姿だったのです。
そのなかで私はその積載性能や機動性、コストの安さ、免許の不要といった長所が、海上での生物観察にはなかなか手を出しにくい個人にとって最高の手段だと思ったのでした。
もちろん、以上のような実際的な長所は後から並べたものでしかなく、当初は「こんなに楽しく自転車のような感覚で海に出ることができる方法があったのか!」という実感でしかなかったのですが。

写真:時化の後、水際にできた貝殻の帯とカヤック。















写真:時化の後、水際にできた貝殻の帯とカヤック。

そもそも海の生物を捕獲しようという目的で、今となってはいつだか分りもしない遠い昔に発案されて、膨大な回数の改良が加えられて完成されてきたカヤックという乗り物とその操船術ですから、生物を捕獲する手前の、写真を撮るというような、銛の照準を合わせる程度の作業をするのは簡単な作業なのです。
しかし実際のところは、それがいつになってもまだ難しいところがあって、そこがまた楽しさにもなっているのですが。
もしクジラに銛を投げていたような昔の「本当の」カヤッカーがカメラを持ってシャッターボタンを押したなら、どんな写真を撮っただろうと思います。
生き物を探して捕獲するために、パドルひとつで海を往く能力を備えたカヤックという乗り物に乗るのなら、やはり何か収穫を得るために海に出た方が自然な感じがすると思います。
その収穫は魚を釣ってもよいですし、海の上で撮った海鳥の写真でもよいですし、頭の中に残した景色だけでも良いのだと思います。

写真:自転車で和田のクジラ解体場に立ち寄り見学。















写真:写真:自転車で和田のクジラ解体場に立ち寄り見学。



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