写真:ハマダイコンの花。
海岸にはハマダイコンが満開です。
今年は特に勢力があるように感じたりもしています。
ハマダイコンは南房総の海岸には普通に見られる海浜植物ですが、そもそもは畑の大根が逃げ出した(?)という説もあるようです。
ヒトの食べ物として畑に囚われていた時代があったのだけれど、何かのチャンスに逃げ出した勇気のある大根がいたのですね。
ハマダイコンは自由を勝ち取った大根なのですね。
そんなハマダイコンは南房総では当たり前に見られるために、あまり地元の人たちには興味を持ってもらえないようです。
さらには海岸に盛大に咲き誇っている姿を目にしても「雑草だらけ…」くらいの反応しかもらえていないように感じます。
残念ながら観光で遠くから来られた人にとっても同じようで、道沿いに観光イメージの為に植えられた菜の花とは対照的です。
野草を愛でる目をいつから日本人は失ってしまったんだろう?と思ったりもします。
人が好きで植えた植物も良いですが、健気に厳しい海辺の環境で生き抜いている花々の逞しさとか、それが育っている環境が残っているという事の素晴らしさとか…。
写真:館山湾の雀島と富士山。カヤックで新たな被写体を探してみてください。
私は東京生まれですから、雑草がある場所は子供の頃から貴重でした。(あえて雑草と書きます)
バッタやカマキリを捕りたければ、あの空き地、なになにのチョウの幼虫を捕まえたければ、あそこの畑のあの植物と限られた場所で限られた昆虫を捕っていました。
雑草が残っている場所は既に貴重でした。
ところが南房総はどうでしょう!雑草だらけ、昆虫だらけ。
子供の自分にとっても、今の自分にとっても羨ましい限りです。
さらには海辺があって、潮溜まりだらけ、砂浜だらけ…。
実は私の家族は時々館山の海に遊びに来ていました。
ある時には海岸沿いの販売機で珍しいコガネムシを捕った記憶があります。
今考えるとそれは多分シロスジコガネで今の館山ではもう沢山いるわけではありません。
同じ関東でこれだけ違うわけですが、シロスジコガネの例で実感できるように自然状態が維持された海岸は館山でも減ってきています。
私が館山に越してきた25年前と比べても随分と減りました。
写真:マウンテンバイクツアーで。道草を食いながら、いや愛でながら…。
それも既に過去に人が手を付けて、その後放置されて自然的海岸に戻ったという場所が多いですが、それでも海浜植物の多くは種子が埋まっていますし、流れ着く場合もありますから戻ってきます。
そしてそこに暮らす小さな生き物も戻ってきてくれます。
だから海浜植物が見られる場所というのは、とても貴重なのです。
ハマダイコンが自らお花畑をつくっている、その場所は実は昔のゴミ捨て場だったりするかもしれません。
そんな場所をハマダイコンがせっせと自然に戻る筋道を作っている姿なのだなと思って見てみると、なかなか意味深い姿に見えてくるわけです。
そういうものは整った観光地でバスを降りて見て通り過ぎていく人は知ることもできないでしょうし、テレビや観光マップで紹介されたわけでもない地味な雑草の集まりに興味を示すだけの時間的余裕もないかもしれません。
でも、もっと海浜植物の自然界における偉大さ(?)とか美しさとか生息環境の危機とか、いろいろな海浜植物や海岸そのものの背景を知ってもらえたら、観光の人にも興味深い存在として目に入ってくるのじゃないかなと思ったりするのです。
一方、野草というと食べられるか否かで価値が変わるという場合が多いですが、それでは食べられない種はやっぱり無価値な雑草と見られて区別されてしまうので、あらゆる野草の姿を、別に種の名前なんて後で良いので単純に目で楽しめれば、結果的に海岸環境も大切にされていくかもと思うのです。
写真:潮の退いた磯で食事中だったコチドリ。
そんな海浜植物の残っている砂浜ではコチドリがソワソワして始めました。
毎年見てきたハヤブサもソワソワしていました。
ミサゴも冬の間好んで見られた場所で見る回数が減ってきました。
ユリカモメは見られなくなりました。
カモメの仲間はウミネコ以外は近いうちにみんな繁殖地へ行ってしまいます。
春なのです。
先日、仕掛けの付いた釣り糸が身体のどこかに絡んだまま飛んでいるカモメ類を見ました。
なんとか写真に撮れましたが、見かけることは意外とよくあるのです。
恐らくそれで壊死し脚を失ったと考えられる片脚のカモメ類も見られます。
両足でそれが起こった場合は死んでいるので人の目には触れないでしょう。
あの若いカモメは繁殖地に行けるのか、そもそも生き延びらるのか?気になります。
カモメでこういうことが多々あるのですから、水中に潜るウミウやウミスズメはもっと心配です。
海底に絡んだままになっている釣り糸が絡めば水面にも上がれずに溺れて死ぬという事もあり得ると思います。
写真:釣りの仕掛けが引っ掛かったカモメ類。
以前、カヤックを漕いでいるときに脚に釣り糸が絡んだ若いウミネコをカヤックの上に上げて糸を解いて放したことがありました。
放した後しばらく「???」という感じでカヤックのデッキに留まっていました。(トップページのプロフィールにその時の写真があります)
そういうことがあると、なんとなくやはりカモメの仲間を特に身近に感じたりするのですが、あの個体もまた糸に絡まって既に生きていないかもしれないな…と思ってしまったりもします。
そんなことで死んでいく生物がどれほどいるんでしょうか?
やはり忙しく観光していては見えないものが多すぎるような気がして、日本の一般的な観光の姿はなんだか勿体ないという感じがします。
一日だけでものんびりと自分なりの楽しみを見出してじっくり「観光」するという風に変わってほしいと思っています。
もちろん、このページを読んでくれているような人はカヤックをしていたり、自転車に乗っていたり、ビーチコーミングをしていたりと、観光という括りには収まらない特定の自分なりの楽しみ方を知っている人が多いと思うのです。
そういう人は自分の眼でものを見ることができる場合が多いと思います。
そんな今までの所謂「観光」とは違うものが標準化してきた時に、自然環境はどういう扱いになっていくのかな?と期待もあり、心配もあります。
環境型(?)の、自然をただただ愛でて、その自然なままの環境とそこに残っている貴重な自然物を見出し楽しむ「観光」が強まった場合には、自然はできるだけ自然のままに、適度に手入れされ大切に維持されていくのだと期待しています。
南房総に何が残っているのかをまず土地の人が知って、他所の人に見に来てもらえるような素晴らしいものだと気付くことがまず最初に必要だと思います。
こんなに豊かな海辺はそれほど残っていないのですから。
写真:水中も春です。
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