写真:朝のウミガメチェック。
今シーズンもウミガメ産卵調査の3か月を欠かすことなく無事終了しました。
9月以降は孵化予定の時期頃に不定期に巣を見回ったりはしますが、毎日の出動は終わりました。
やはり毎日出動というのは、もうだいぶ長く続けていますが、なかなか厳しい時もありますね…。
毎年シーズンが近づくと今年は貫徹できるだろうか?と不安になります。
特に今年のようにウミガメの上陸頻度が低い年にはやはり気持ちの維持が難しく、それを気晴らすためにもビーチコーミングは大切な楽しみとなっています。
むしろビーチコーミングの合間にウミガメも記録しているんじゃなかろうか?と自分で思うこともありますが、実際のところはウミガメの産卵状況を記録することを主題として結果としてその時代の南房総の海岸線の記録を残しているという考えもあります。
ので、まあウミガメが来なくなったなら、それはそれで記録のひとつであって、その要因に海岸環境が絡んでいたりしないかと考察するにも海岸の状況の記録は必要ですし、漂着物の状況が海流や水温の変化などの情報をもたらす可能性もありますので、ウミガメの記録の中に漂着物の記録があっても不思議ではない、というか必要だと思います。
逆に言えばそういう環境を表現するものの変化の結果がウミガメの産卵行動の変化なのですから。
写真:22pもある浮石(軽石)。 どこから???
産卵上陸の総数は以下のようになりました。(まだ9月に見つかる可能性もありますが)
6/25白子、6/29根本、7/17平砂浦、7/23白子、7/23白子(他)、8/2平砂浦、8/3滝口。
このように南房総全体で7か所とひどく少ないです。
いずれもボディーピットありの産卵していると考えられる痕跡だったのは唯一の救いです。
(他)は他の方が既に発見し柵などを設置していたので、重報告などのトラブルを防ぐため日本ウミガメ協議会には報告しない巣です。
こういう上陸数の少ない年は過去にもありましたし、しかし来年また数が少なくてそれが何年も続くようでしたら「個体数が減った」ということなのかと思いますが、今回のような場合は「上陸する頻度が下がった」ということだと思っています。
しかし、どのくらいからそれが分かれるのか難しいなと思います。
写真:ウミガメ巣の上に見つけた窪み。巣の中で子亀が動き出したサインかもしれません。ちょっと嬉しい時。GPSは10p。
ウミガメの上陸の少なさの退屈さを晴らしてくれる漂着物は色々ですが、やはり生き物が特に興味深いのですが、この時期に最もよく出逢う漂着生物はカツオノエボシです。
もちろん肉眼で見つけやすいサイズの生き物の中ではという括りですが。
実は今月、私自身が初めてカツオノエボシに刺されました。
カヤックツアー中に内房の海で漕いでいてパドルに絡んだカツオノエボシの触手が右掌の小指側に数センチほど触れていた状態でした。
最初、水を掻きながら、非常に細い丈夫な釣り糸のようなものが触れた感触があって、一瞬釣り糸が絡んだ?と感じましたが、痛みを感じながらパドルを見るとカツオノエボシが絡んでいました。
それほど大きなものでは無かったので、痛みがこの程度なのかな?と思いながらすぐにパドルを持ったままのパドルを水流に沈めたところカツオノエボシはすぐに流れていきました。
手には2pほどの青い触手が残っていて痛みを感じました。
これは幾度か海に浸けて降り洗いしましたが、除去されなかったのでパドルのブレード先端で削ぐように一度で除去しました。
こういう時のためにピンセットは携帯していましたが、まずはこれで取り除けるか試してみようという感じでした。
これですっかり痛みも消え、結局腫れることもなく済みました。
写真:夏の海。出発前のワクワク。
このくらいの度合いで経験できたのは幸運でした、四半世紀ほどシーカヤックを漕いでいて今まで運良くカツオノエボシに刺されずに済んで来てしまったので、逆にいつもその経験不足が気になっていました。
痛みや腫れなどは体質で個人差があって大きく変わると思いますが、ピンセットなどで十分除去できそうだと感じました。
あとは刺された時に擦ったり適当に布などで除去しようとしたらもっと刺されて状況が悪くなるでしょう。
こういう生き物は海にいますし、危険な生き物は別に海だけにいるわけでなく、例えば館山ではハガチと呼ばれるムカデはもっと痛かったですし…。
自然の中で遊ぶのはこういうものもひっくるめてですから、とはいえ痛い事は無いに越したことはないですね。
写真:ツアーの昼食休みで上陸地を目指す。私自身が南房総に来た頃から好きな静かな入り江です。住民や漁業者の迷惑になるといけませんから少人数の場合のみ利用。
そんなわけで、それ以降は海岸で打ちあがっているカツオノエボシが違って見えるというか、かといって昔から観察している身近な生物ですから憎らしいとか嫌いという感じにもならず、痛みも含めて感じられる?というような少し身近になったような気分になりました。
これはハガチの時もそうでした。
そしてそれ以降は不思議なくらいハガチと縁がなくなりました。
向こうも経験を積んで近寄らなくなったのですかね?
きっとハガチ界ではあいつは齧っても不味いと知れ渡ったのでしょう。
カツオノエボシ界でもそうなると良いな〜と思います。
写真:台風のうねりが緩やかに入る日が多かった今月の海でした。南房総の海岸線を長年調べていますので、地形や海の状況を十分配慮して安全にご案内いたします。
今回パドルにカツオノエボシが絡んだのはパドルブレードの首のところでした。
カヤッカーの方なら、まあ絡むならそこだろうなと想像がつくかと思います。
この場所には多くのパドルでドリップリングという名称の輪っかがはめ込まれています。
これは水がデッキに落ちるのを防ぐためのものですが、海でそんな滴が気になるという場面はあるのだろうか?と考えるようになって私は取り除いています。
今回、カツオノエボシがするりと意外とあっさりと流れて行ってくれたのもドリップリングが無かったからだと思いました。
またドリップリングがある事でカツオノエボシの絡む確率を高める可能性も感じました。
やはりシーカヤッキングにドリップリングはいらないと再確認したのでした。
写真:新たに見つかった白い花を咲かせるシロバナハマゴウ。
今月は渡りの途中に南房総に立ち寄って食事をしているシギやチドリに会う機会が大変多くなりました。
台風の影響が大きかったことで、海岸に打ちあがった海藻の山が常にどこかにあり、彼らのご馳走を育んでくれた結果でした。
彼らのご馳走は海藻の中や、その下の砂の中で暮らす甲殻類たちで、海藻はその小さな生物によってみるみる分解され、そして鳥たちに餌を提供しています。
間接的にこの鳥たちは漂着した海藻を食べているのですね。
海藻の打ちあがった海岸が海水浴場だった場合には重機などを用いて除去されたりしますから、台風の頻度でその年の海岸整備のコストに影響が出ているはずです。
もし、もっとのんびり待てれば海藻の中で食べては増え食べては増えしている生き物たちが無料で片付けてくれて、さらにはその生き物を食べるために美しい鳥が海岸にひっきりなしにやって来るはずで、それは無駄が無く、そしてなかなか楽しい空間なのですが。
写真:海藻の中で食べ物になる小生物を探すシギたち。この写真の中にキョウジョシギが11羽、トウネンが2羽います。素晴らしいカモフラージュです。
今月は特にキョウジョシギが多く、長いことこの海岸線で同じ時期に歩いていますが、今年ほどキョウジョシギが多かった年はないと思います。
環境が変わると出入りする生き物が変わるということの一例でしょうか?漁師さん情報では浅瀬で海藻を食べているアオウミガメも多かったようです。
アカウミガメはあまり来なかったのに。
キョウジョシギに混ざるように、いろいろな種が見られました。
トウネン、オオソリハシシギ、ソリハシシギ、キアシシギ、メダイチドリ、シロチドリ、先月はツバメチドリも初めて見ました。
どれも珍しい種ではないですし普通にいつも見られる種も含みますが、これだけの種類を見た夏もなかったと思います。
キョウジョシギは月の後半になって若鳥を多く含む群れが現れてしばらく滞在し、いままであまり観察できずにいたキョウジョシギの若鳥の観察撮影を楽しめました。
というわけで私としては海藻は残しておいてほしいなと思っています。
そしてかれらのおかげでウミガメの来ない8月をなんとか乗り切る事ができました。
写真:フラッグを脚につけたトウネン。
シギについてはもうひとつフラッグという足環をつけた個体を2羽確認することができました。
これは足につけている色の組み合わせから足環装着地が分かるというもので、22日に南房総市東岸で確認したミユビシギにはオーストラリア、ヴィクトリアのフラッグが付いており、27日に南房総市南岸で確認したトウネンには宮城県、鳥の海で付けられた足環が確認できました。
詳細は山階鳥類研究所のサイトで見ることができます。
これら2件はメールにて報告済みです。
皆さんももし、そういう鳥を見かけたら報告してみてください。
海岸に現れる小鳥たちがこんなに長い旅をしているんだという事に気づくと彼らを迎えるのに日本の海岸はちゃんとしているのかな?食べ物は足りるのかな?とお迎えする気持ちになるかもしれません。
日本の海岸が自然を失うとウミガメが産卵する場所を失い、海鳥が長旅の体力を養うための餌を十分に取れなくなり、そして日本人は海辺で出逢う生物の存在を忘れていってしまうのかもしれません。
海水浴場と隣り合うように存在する人の泳がない、泳げない海岸にはできるだけ、見た目が美しいだけではない「本当の自然」が残るように、人のためではなく遠くから命がけでやって来る生き物たちのために残しておければと思っています。
山階鳥類研究所WEBサイト「渡り鳥と足環」
http://www.yamashina.or.jp/hp/ashiwa/ashiwa_index.html
写真:ハマカンゾウのきれいな季節です。
アカエリヒレアシシギという鰭のある海面で暮らしている時間の長い海鳥が海岸に上陸し、カラスに捕食されるという珍しい状況をたまたま撮影できましたので、コマ送り動画にしてYouTubeページに掲載しました。
シャッター速度が遅く設定してあったところで突然の出来事でしたので、やや見苦しいですが、状況は分かるかと思います。興味のある方はぜひご覧ください。
6DORSALS YouTubeチャンネル「ハシボソガラスに捕食されるアカエリヒレアシシギ」
https://youtu.be/u5pypGIHjwQ
過去の日記一覧へ
|