カヤック日記


2020年1月の出来事



写真:館山湾の海岸で休息中のカワウたち













写真:館山湾の海岸で休息中のカワウたち

この冬は年の暮れからウに接する機会が増えました。
昨年12月29日のカヤックツアーの際、昼過ぎに勝山海岸上空をやや低空で南下する大きなウの群れを見ました。
その後、勝山港の南側に接する静かな入り江で凄い数のウの群れが岸辺で休んでいるところに遭遇。
群れは我々に驚いて飛び去り、その巨大なサイズのまま海岸線の山の上空を南に去って行く姿が見えました。
富津方面に行くとこういう大きな群れを結構見かけますが、南房総ではあまり見ないサイズの群れでしたので、とても気になりました。
その次の日、そのカヤックツアーに参加して頂いた館山在住のお客様から北条海岸に昨日のような大きな群れがいると連絡を頂きました。
しかし、その日は出向くことができず、その後も群れを探すことができずにそのまま年を越してしまいました。

写真:時化の日













写真:時化の日

正月2日、東京に行くために朝早めに出かけたところ、日の出時刻を少し過ぎた頃に北条海岸沿いの道で先日の勝山の時のような大きなウの群れが上空を北西に飛んで行くところに遭遇しました。
それは素晴らしい光景で朝の光の中でウの群れが低空で空一面に広がり、なんとも壮大な風景でした。
そして、先日のウの群れときっと同じだろうと思いながら、この群れに対する興味が増したのを感じました。
4日には館山湾湾奥の北条海岸から八幡海岸にかけて群れが集まっているところを確認できました。
さらに5日には館山市街を抜けてクルマを走らせていたところ、群れが断続的に山に向かって行くところに遭遇しました。
次々に飛んで来る群れを追いかけていくと館山市の山間部にあるダムに群れが帰ることが分かりました。
そんな感じで正月の間にウが気になって仕方なくなる準備が整ったのでした。
そして塒に戻って来るウの群れを出迎えるように観察するために夕暮れ目指して幾度か塒の手前へ出かけました。
大きな群れが山を越えて海から真っすぐに飛んでくる姿は私にとっては何回見ても飽きないような好きな自然の姿のひとつとなりました。

写真:塒を目指して飛ぶカワウの群れ













写真:塒を目指して飛ぶカワウの群れ

南房総の海岸線にいるウは大抵ウミウだと以前確認してから、みなウミウだと思って過ごすようになっていました。
しかし、今回はいつもより大きな群れを作るし、山の水辺に塒(ねぐら)を選ぶのは、もしかしたらカワウなのかな???
と思いはじめてTwitterで投稿したところ鳥の専門の方に遠目に見分ける方法と内陸に塒とるのであれば、カワウの可能性が高いということを教えて頂きました。
そのタイミングで次の日には船形の海岸で間近に群れ全体を見る機会に恵まれ、確かにカワウだと判別できました。
そして、その時撮影した500-600ほどの群れの中に黄色い足環を付けた個体がいることに気づきました。
この足輪は以前、カワウの死骸に付いているのを見つけたことがあり、足環による調査を行っている「カワウ標識調査グループ(JCBG)」へその死骸を郵送したことがありましたので見覚えがあります。※
足環にはアルファベットと数字で記号があり、その個体の情報が辿れます。
早速報告したところ、JCBGの福田道雄様より詳細な個体情報を教えていただき、掲載も許可いただきましたので、要約して掲載します。
写真左から個体1、個体2、個体3として報告してありますが、個体2は足環の記号が見えない角度でしか撮影できませんでした。

写真:足環をつけたカワウ(25日、船形)









写真:足環をつけたカワウ(25日、船形)

以下転載
『個体1は(FA4)です。拡大すると、「F」の字の下末端が直線に見えることで判定しました。この個体は2016/05/06に、 市川市の行徳鳥獣保護区で、ヒナ(約20日齢)にリングを装着しました。装着から1359日(約3.7年)目です。なお、 2019/07/27に三番瀬で一度観察記録があり、2回目の生存確認です。
個体2 これはお手上げです。
個体3は(0X6)です。混乱防止で(9X0)リングは存在しません。2009/04/27に江東区の夢の島マリーナの近くの、 東京都水道局の敷地内にあるコロニー(マリーナから荒川方向の、旧貯木場運河の奥の岸緑地です)で、ヒナ(約20日齢)に リングを装着しました。装着から3925日(約10.8年)目です。カワウでは10歳以上の個体はかなり少なく、高齢個体と言 えます。でも、生きていれば、ちゃんと繁殖しています(画像では健康そうで、しっかりと生殖羽も生えていますね)。 なお、2011/03/05に、以前あった小櫃川河口のコロニー内(旧浸透実験池)で確認されていて、今回が2度目の記録となります。』

写真:この冬はなんとなくツノガイ類にもはまってます。















写真:この冬はなんとなくツノガイ類にもはまってます。

野性で10年も生きると知らず、驚きましたが、その後の返信で『2016/10/16に木更津・金田漁港で、17.6歳の個体が観察されていて、これが国内最高齢記録です。外国では、デンマークで27歳の個体が見つかって』いるということも教えていただきました。
27年も野生で鳥が生き延びるには本当に大変なことだろうと思います。
その要因として国の自然環境の状況も大きく違いそうだなと感じました。
もうひとつ、掲載について確認した際の返信から引用させていただきます。
『カワウは、昔はどこにでも普通にいたのですが、戦後に急減して少なくなっていたことから、その空白期間中に人々が各地で漁業活動を拡大していて(勿論、戦前とは異なる水辺環境で)、 増加中の現在は、漁業関係者(特に内水面関係)らとの間で深刻な軋轢を生じさせています。そして、多数のカワウが駆除されていて、あまり歓迎されていませんので、少しでも正確な姿が伝わることは有り難いです。』
とのことで、とても勉強になりました。本当にありがとうございました。

写真:館山湾を漕いでいたところ、なんと北国から飛来の希少種ケイマフリに遭遇!(20日)















写真:館山湾を漕いでいたところ、なんと北国から飛来の希少種ケイマフリに遭遇!(20日)

南房総では内水面での漁業は無いと思いますから、カワウの安らかな棲息地として、そっと見守ってあげていただければと思います。
海では浅瀬でカタクチイワシを群れで追い込んでいたようです。
浅瀬での捕食が主なようですから、館山湾でカタクチイワシ漁をしているとしても、むしろ浅瀬から沖へカタクチイワシの群れを追い出す働きがありそうですから人も捕獲しやすくなるのでは?と思いました。
またカワウはウミウと違って砂浜に上陸して群れで休む事が多いようです。
ウミウは人が近づき難いテトラポッドや岩の上にいることが多いので、海に出る人以外はあまり近くでウを見た経験が無いようで、今回のカワウが砂浜で大きな群れになって寛ぐ姿に人々が多少違和感を覚えているというか、そっとしておけない感じもあるようです。
それが何となく心配ですが、みなさん早いとこ慣れちゃってくださいね。

写真:夏にしか観察に行っていなかった館山市某所のグンバイヒルガオ。夏には見えない地下茎が太くて驚きました!砂丘の守護神。















写真:夏にしか観察に行っていなかった館山市某所のグンバイヒルガオ。夏には見えない地下茎が太くて驚きました!砂丘の守護神。

あの年末に勝山で見た群れが南下して来て館山に落ち着いたのだとしたら、どんな経緯だったのでしょう?
塒にしていたどこかの池やダムの環境が急変したのでしょうか?昨年の台風の影響で樹木が薙ぎ倒されているとか?
そんなことを考えていたところ、鋸南の佐久間ダムの水がいつからだか調べていないのですが点検のために空になっていると知りました。
以前、佐久間ダムにカワウが塒をとっていたのかを知らないのですが、もしかしたらと思ったりしました。
そして佐久間ダムに水が戻ったら、また館山から去っていくのかな?とか、興味が尽きません。
館山湾にカタクチイワシが大量に発生した情報を得て、みんなで引っ越して来たと考えるのは難しいと思うのですが。
いずれにしても、もうしばらくは館山湾のどこかで毎日のようにカワウの群れが見られそうです。
群れ全体を撮影した写真をいくつか数えてみたところ最も多かった群れが、見えていない個体、重なっている個体を含めていない数として850以上でした。
このような群れを支えられる館山湾を自慢しても良いと思います。
一時期は日本中で3000羽以下(1971年)にまで減ってしまっていたというカワウが復活したように、館山湾の魚たちも数を増やしてきているのかもしれないなと思いました。

写真:冬の凪の日















写真:冬の凪の日

それで思い出すのは館山湾の中央に注ぐ大きな川、平久里川(通称湊川)から流れ出る大量の赤土です。
昨年の巨大なふたつの台風に引き続き、雨が多く、しかも台風で山の木々が大変な数倒れており、根が剥がされたことで雨の度に土が流れ出ています。
その赤土で生存が危ぶまれる海や川の生き物もいるはずですが、館山湾の栄養分は増していると思います。
それがカタクチイワシを増やした要因だったりしないかな?と思ったりしています。
赤土が大量に流れ出る様子は不安を感じさせますが、自然界に無駄はないと思いますから、きっと良い面もあると見て良いと思います。
そして、山の成分に加え、海の成分も含んだそのカタクチイワシをカワウが食べ、山の塒で排泄すればぐるっと戻って山に帰って行くわけですね。
そういう栄養分の移動は面白いなと思います、客船や旅客機に乗っているようなものでしょうね。
地球ってうまくできてるな〜と最近よく感じます。
しかし人間もその栄養を利用させてもらって暮らしているのですけど、人間は栄養をどこに運んでいるのでしょう?

写真:冬の夕景も良いですね。















写真:冬の夕景も良いですね。

参考

カワウ標識調査グループJapanese Cormorant Banding Group (JCBG)ホームページ

環境省ホームページ「特定鳥獣保護管理計画作成のためのガイドライン及び保護管理の手引き(カワウ編)V.資料編」

※2010年5月のカヤック日記(富津市カワウ死骸報告について)



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