カヤック日記


2017年11月の出来事



大抵の場所で上陸できるカヤック。海岸線探索の足として、これ以上のものはありません。















写真:大抵の場所で上陸できるカヤック。海岸線探索の足として、これ以上のものはありません。

今月は10月の台風21号の影響で南房総の海岸線がどれくらい姿を変えてしまったのかを記録しようと思い、ツアー以外の日にはほとんど出かけていました。
南房総と言っても海岸線をすべて見ようとすれば、なかなか広いもので、とても時間のかかる作業になりました。
こういう時にはクルマと自転車を組み合わせるのが、やはり最も効率が良くなります。
海からでしかアクセスできない場所はもちろんカヤックになります。
自転車がマウンテンバイクであることで効率が良いだけでなく、ほとんどの海岸で水際を確認することができ、ほとんど徒歩で動くのと同じようなルートを見ることができます。
記録しているときには自転車を押しながら歩けば徒歩と同じようにものを見ることができますし、それでいて復路や記録したいものが少ない場所は素早く移動してしまうこともできますので、徒歩の場合に比べてかなり早く、それでいてしっかりと細かく観ることができます。
時々であれば輪行バッグを用いてマウンテンバイクとローカルバス、電車などの組み合わせも良いと思います。

波によって大きく削られ崖のようになってしまった平砂浦海岸の砂丘。手前には辛うじて地下茎を残したグンバイヒルガオ。




















写真:波によって大きく削られ崖のようになってしまった平砂浦海岸の砂丘。手前には辛うじて地下茎を残したグンバイヒルガオ。

これはウミガメの調査で長いこと実践してきた私には慣れた方法ですが、今回は岩場を含めた、今まで徒歩や海側からカヤックでしか行ったことがなかった海岸にも自転車を押したり背負ったりしながら入り込んだので、幾度も訪れていた見慣れた海岸がなんだか新鮮に見えたのが面白く感じました。
「こんなところ自転車で来た人は初めてだよ!」と土地の方に言われた時には、自分おかしなことしてるな…と思ったりもしましたが、今までもマウンテンバイクのフィールドを海岸線に求めていたのに、まだまだ開拓の余地があったと必要に迫られて感じた次第です。
今後の海辺のマウンテンバイクツアーは今までよりも「走れない」、ところどころ自転車を押したり背負ったりしながら行くようなハードなルートもご紹介できますので、ディープな方のリクエストお待ちしています!
もちろん、まったりルートをご希望の方も潮がよく退いて砂浜を走りやすい春はお勧めです。

写真:植生や積もった砂によって埋もれていた戦時中に掘られた横穴が高潮が流れ込んだことにより、内房岸の多くの入江で再び姿を見せています。













写真:植生や積もった砂によって埋もれていた戦時中に掘られた横穴が高潮が流れ込んだことにより、内房岸の多くの入江で再び姿を見せています。

そんなわけで内房は勝山以南、外房は和田浦以南の海岸線をほぼ隙間なく見てきました。
これでも本来の南房総の線引きになっている長狭街道以南をクリアできていないですが、今回の被害が主に西海岸にありますので、まあ良いかなと考えています。
今回分かったことは、波(というか高まった水面)が及び、被害が出たり、海岸植生が洗い流された場所で共通するのは津波と同じように海岸地形が入江状になっているところでした。
普段、カヤックで漕いでいる時には好んで上陸地にしているような岩場の隙間に岸へと延びる切れ込みのような場所も波を収束し高さが増していました。
人工的に岩場を削って造られた入江である港もそうでした。
普段の異常でないサイズの波であれば入江は口元で波を分散し奥の着岸地点では波の力を弱らせてくれる、船に乗るものにとってはありがたいものですが、今回のように周辺の岩礁よりも波(水面)が高い場合には、そういう場所は波を寄せ集める効果が大きくなるということで、むしろ危険な場所になっていました。
津波が川を遡上して行った様子を思い出してもらえれば想像しやすいと思います。

散々波に洗われてしまった海岸で地下茎を維持し、真っ先に葉を広げたクコ。













写真:散々波に洗われてしまった海岸で地下茎を維持し、真っ先に葉を広げたクコ。

また、波が海岸道路まで至って大きな被害のあったような場所は100年ほど前の地図を見ると、ほとんど道が無かった場所であることが分かりました。
その時代は関東大震災よりも前ですが、元禄大地震で津波を経験した記憶がまだそれほど薄れていなかったのかもしれないと思いました。
もちろん台風などでも繰り返し高潮を経験して、イザとなれば水はここまで来るということを熟知していたのだと思います。
今回の高潮被害を活かして、改めて100年前の地図に習う事が大切ではないかと感じました。

100年前の地図と現在の地図を簡単に比較できる「今昔マップ」という素晴らしいページがあります。
海辺にお住まいの方やこれから海辺に住みたいと考えている方、海岸線を持つ自治体の方には是非見ていただきたい素晴らしいサイトです。
もちろんシーカヤッカーの皆さんには、出艇したり上陸して休息するその海岸の一昔前を想像するのに最適なページですので、特にお勧めです。
館山の風景としては沖ノ島がまだ「本当の島」だったのが分かったりして面白いです。
この頃にカヤックで漕ぎ渡って沖ノ島に行けたら楽しかったでしょう。
またウミガメ産卵地の白浜の根本海岸もずいぶん様子が違い、沖の御神根島に伸びる砂洲が無く、逆にかなり内陸の奥まで砂丘が広がっていたことが分かります。
以前、土地の海女さんに教えてもらったように、当時はウミガメが海岸のかなり奥まで行って産卵していたことが想像できます。
最後に「今昔マップ」のリンクを貼りましたので、ぜひご覧ください。

南房総では難しいと思いつつも、いつか出逢いたいと願っていたアオバトが見つかりました。死んでしまっていたのは残念ですが、次は生態に出会えるかもしれないという期待が膨らみました。













写真:南房総では難しいと思いつつも、いつか出逢いたいと願っていたアオバトが見つかりました。死んでしまっていたのは残念ですが、次は生態に出会えるかもしれないという期待が膨らみました。

台風21号後の砂浜海岸の様子は場所によって随分と違います。
台風で漂着した大量のゴミが土地の人らによって片づけられたところもあります。
一方、人がほとんど入らない海岸では台風以前から大量のゴミがあったところに高潮、高波が寄せたため、低木も含めた植生が密生した所まで押し込めるようにそれらのゴミが入り込み、異様な光景になったままの場所が数多くあります。
しかし、そういう場所をよく見てみると実は昔からのゴミ捨て場だったところも多く、多くの海岸が昔はゴミの埋め立て地だったことが良く分かります。
ごみを捨てては、埋めを繰り返していた場所には不自然な土手があり、それらが今回の高波に削られてかなり古いゴミを吐き出しているところもあります。
海からもゴミが寄せ、埋め立てられた土手からもゴミが排出され、という海岸は目立たないですが意外と多いのが実際です。

この写真に写っている岩棚は全て波で覆われ、右奥の小高い植生群まで波が来た形跡がありました。













写真:この写真に写っている岩棚は全て波で覆われ、右奥の小高い植生群まで波が来た形跡がありました。

しかし日常的にゴミを海岸に捨てていたのは、ほとんどが自然分解されるものであった時代の名残で、プラスティック製品やアルミ製品がなかった時代であれば、自然分解せずにいつまでも形を留めるものは、せいぜいガラスくらいなもので、そのガラスさえも高波で土手から排出されて海に落ちれば浅瀬で削られて徐々に消えてなくなっていたはずです。
その生活習慣が悪いというよりも自然分解性でないものをゴミ回収の便が進んだ都市の生活形態だけをイメージして市場に送り出した結果なのではないかな?と考えさせられました。
今では地産地消という言葉が持て囃されていますが、それは食物の話だけで、パッケージについての地産地消も考える必要があるということでしょう。
結論としてはパッケージは地産もせず、地消も必要がないマイバッグや携帯ボトルをできるだけ使うということが最も近道ということになりそうです。
燃やせず、リサイクルもできないゴミは結局のところ地面に埋めているわけで、そのために大きな輸送コストと環境コストを払っているということを忘れてしまっているわけです。
地産地消ならゴミも地で「消す」のが無駄がないですし、消す方法に問題があれば「産む」無駄について考えが至りやすくなるはずで、結果的にいろいろなコストが下がるのではないでしょうか?

膨大な量のゴミが打ちあがっていた入江での清掃が行われていました。













写真:膨大な量のゴミが打ちあがっていた入江での清掃が行われていました。

アクセスが悪く、観光客も滅多に訪れない、しかしシーカヤッカーにはお馴染みというような目立たない海岸では、もう片付けが不可能なレベルですが、そのうちにゴミを覆い隠すように植生が繁殖し、それを元に隙間を砂が埋めていくでしょう。
そしてまたゴミは地中で数十年も、もしかすると数百年もそこに留まり、未来の人の好奇心を刺激するのではないかなと思います。
私自身も今回台風21号で排出された、様々な古いゴミからいろいろなことを考えさせられましたし、昔のモノの美しさや面白さにも改めて気づかされました。
そしてマイクロプラスティックが人の身体に取り込まれている可能性などの危険について改めて実感し、一方で不法投棄禁止という看板やビーチクリーン活動の一種の矛盾のようなものを、考えつつ過ごしています。
なかなか結論は出ないと思いますが、時代毎のゴミについての考え方の変化を実感する良い機会だと思います。

波で打ちあがったか、掘り出されたかしたフィギュア。「マグマ大使」だと教えていただきました。













写真:波で打ちあがったか、掘り出されたかしたフィギュア。「マグマ大使」だと教えていただきました。

今度海岸に行かれた時にはできれば住民人口が少なく、目立たない、しかし非常に多くのゴミが残っている海岸で、少しだけ、しかし特に自分の気に入ったゴミを拾って帰られることをお勧めします。
つまり単なるビーチコーミングですが、ビーチクリーンよりもビーチコーミングの方が楽しいですから長続きすると思うのです。
昔懐かしいデザインのガラス瓶はいつか割れて海岸で誰かの足を切るかもしれないのですし、懐かしいフィギュアのプラスティックも少しずつ細かく削られてマイクロプラスティックになっていくのですから、まずは拾いたくなるものから一人でも多くの人が拾って帰ることで、外から来たものが、外の人に持ち帰られることで「外産外消」が完結するのではないかな?と思ったりしています。
結果的にそれらの海岸をある意味で自分の大切なものとして見るようになれれば、その結果がゴミ拾いになるというのが自然で自主的で継続的なビーチクリーンに繋がると思うのです。

今月も風が強かったですが、青空に恵まれた月でした。















写真:今月も風が強かったですが、青空に恵まれた月でした。

「今昔マップ on the web」


メモ
11/6 平砂浦でウミスズメの死骸×1漂着〜報告
11/7 平砂浦海岸のグンバイヒルガオ最大群の群落サイズ減少も無事確認
11/17 館山市洲崎で不明角状生物部位発見
11/29 館山市正木で足環の付いたコサギ死骸×1漂着〜報告





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