カヤック日記


2018年1月の出来事



館山市の太平洋岸に吹き付ける猛烈な南西風。













写真:館山市の太平洋岸に吹き付ける猛烈な南西風。

今月は(「も」ですね…)風が強い日が多かったですから、随分とビーチコーミングができました。
あまりビーチコーミングばかりしていても身体が鈍ってしまいそうですが、特に自転車を漕いで浜を巡る時には地味ですが、実はそこそこな運動量になります。
海岸沿いに自転車を走らせて、砂浜に白い貝殻のラインが見つかれば、それに沿って眼を凝らしつつ自転車を押しながらトボトボと歩き、下を見ているので次第に背は丸くなり、好みのものが見つかれば急ぐ必要もないのに、なぜかつい素早い動きで全屈して腕を伸ばし拾うという動作の繰り返しは案外となかなかのものです。
私は座り込んで細かい貝を探すのが苦手で、ずんずん移動してしまうので足腰もかなり運動量が得られます。
良い場所に巡り合えれば数時間はあっという間に経ってしまい、その間中そういう運動の繰り返しです。

更に強風が吹いている最中のビーチコーミングは風で体温が奪われますし、潮風や砂が眼に入ってきて染みるので涙がぽろぽろしたり、なかなか厳しい遊びになったりもします。
傍から見たら???な人ですが、「ビーチコーミング」とか「貝殻拾い」という遊びが一般に認知されているのがありがたいです。
浜や磯を歩いていたら、昔の浜の人々なら「何か食べられるおいしい生物を採取して歩いているに違いない」と思って場合によっては事情を問われたでしょう。
先日もあまりビーチコーマーの来ない浜を歩いていたら、潮が退いた磯で貝類を採取していた地元のおばあちゃんに声をかけられました。
「サカナかい?」と訊かれました。
「釣りかい?」という意味のように感じたのですが、しかし釣り竿は持っていないですし、しかし遠目に見た動作では何か採取している様子だったからでしょう。
簡単に言えば「何取った?」という意味だったのだと思います。
「貝殻拾ってました」と言うと納得した様子でしたが、このゴツくて黒い男が貝殻を拾うかな?と思っていそうな感じも…。
この時に「ビーチコーミングです」と言ったらどうだったのか?海辺のおばあちゃんたちにも通じるほど認知されているのでしょうか?

個人的に好きな貝。最近東京湾岸でも大きい個体が見つかるようになりました。













写真:個人的に好きな貝。最近東京湾岸でも大きい個体が見つかるようになりました。

浜に揚がったもので、美味しいものと言えば浜の人にとってはワカメ、テングサといった海藻類とカタクチイワシの群れの漂着を想像していそうです。
イワシの群れがたくさん揚がった時にはどこからともなく土地の人がボールやバケツを持って現れてピチピチ跳ねるイワシを拾って歩いたりしています。
カラスやトビも騒ぎを聞きつけて集まっていて、沖にはオオミズナギドリの群れがイワシを求めて大群で浅瀬を飛んでいたりする時もあり、なかなか楽しい空間になります。
新鮮なクジラやイルカが打ちあがった時にも昔であれば似たような光景が見られたのだと思います。
だからあのおばあちゃんは僕が多分、イルカかイワシでも見つけたのだろうと思ったのかもしれませんね。
それならば私も採らねば、という情報収集だったかもしれません。

トビやカラス、海上ではカモメ類、ウの仲間、ウミスズメまで、広々とした海や海辺で暮らす鳥はかなり遠くの鳥の喧騒を素早く見つける能力に長けています。
トビは高さでその探索範囲を広げますが、ウミスズメは高く舞えませんので、水面で羽搏いて水面に立ち上がるようにしてできるだけ遠くを見えるようにしていました。
立ち上がってもほんの何センチほど高さが稼げるだけだと思いますが、凪の水面では大きな効果があるらしく、数百メートルも先の、私にはよく見えない仲間の動向を見て、そちらに飛んでいくというところを見たことがあります。
必死で漕いでついていくと、そこでは多数のウミスズメが潜水を繰り返して魚を捕っていました。
また、ウが繰り返し潜行する場面を見つけた時のカモメ類の対応はなかなか激しいもので、ウが潜り始めるとあっという間にカモメが集まって来て空襲を始めます。
魚を咥えて水面に戻ってきたウを脅かして魚を奪おうと水面では1羽のウに対して何羽ものカモメが纏わりついているのが普通です。
流動的で不定期な海の自然の恵みを求めて海辺の暮らしを営んできた人々も同じような眼の良さと素早さがあるかもしれないですね。

写真:水平線に目をやれば蜃気楼。













写真:水平線に目をやれば蜃気楼。

ところで私のビーチコーミングの対象が昨年の台風21号以降、人工物も加わったと書きましたが、海岸の清掃が進み、場所によっては重機での砂の移動などもあり、台風以降の一時的な人工物の漂着(もしくは崩れた土手からの供給)が落ち着いてきました。
あとは台風当日に土手から波によって海中に持ち去られたモノの再漂着や、昔から海底にあった人工物が台風で掻き回された事で海底表面に浮きあがってきたモノの漂着という感じになってきたようです。
先日まではなんとなくゴミ漁り的な感じがありましたが、今後は海からやってきた感じのする本来的なビーチコーミングな人工物拾いになりそうなので、数は減りそうですが楽しみです。

そういえばビーチコーマーが来る海岸に行くと、岩の上などに拾ったものを並べてある場面をよく見るようになりました。
たぶん、いろいろ拾った後に選んで、そのまま残していったのだという感じがします。
これがなんだか残念な風景で、あとから来た人が拾いたかったかもしれないものが既に並べてあるのではなんだかモチベーションが下がりそうです。
ひとくちにビーチコーミングといっても拾う対象は人それぞれで、求めている質も様々でしょう。
先に来たその人にとって置き去りにするようなモノも、次に来た人には持って帰りたいものかもしれないと考えれば、さりげなくまだ手垢がついていないかのように浜に置いておいてくれるのが次の人の喜びに繋がると思うのです。
もちろん、それがゴミだといえるものであるなら、持ち帰ってゴミに出すという流れもあるでしょう。
しかし置いていくのなら、自然にビーチから拾い上げる嬉しい場面を提供できる余裕がほしいです。

ミサゴの個体識別継続中です。このふたつの写真が同個体ならば10q離れた場所での別日確認となります。
















写真:ミサゴの個体識別継続中です。このふたつの写真が同個体ならば10q離れた場所での別日確認となります。

ビーチコーミングという言葉の中にどこまでの事が含まれているのか分からないのですが、例えば僕が続けているウミガメの足跡を探す行為が一種のビーチコーミングではないのか?と思う時があります。
あくまで「モノ」を見つけ拾得する行為がビーチコーミングではないような感じがしています。
「何を拾うか」が多様なように、何が「ビーチコーミング」なのかも多様に自由に捉えてよいんじゃないのかな?と思っています。
ある種の貝殻を探していたらウミガメの足跡を見つけることもあるでしょうし、ウミガメの足跡を探していたら滅多にないような貝殻を拾ったり、ガラス浮きを拾ったりするのですから、どこからがビーチコーミングなのか??と考えてみると、「ビーチコーミング」は海を歩く口実でしかなくて、ただ単に海を訪れてぼんやりと海辺を歩くということが本当はみんながしたかったことなんじゃないかな?と思ったりします。
少なくとも僕はそうなので。

歩いていれば、ウミガメの足跡が見つかったり、きれいな貝殻が見つかったり、カラカラの砂浜に花が咲いていたり、下ばかり見て歩いていたら何か臭いので見渡したらクジラやウミガメの死骸が転がっていて驚いたり…。
そんなことが南房総の海岸では実際に起こるわけですから、それだったら下ばかり見てないで、もう少し周りを見渡しながら歩けば沖にイルカの背びれが見えるかもしれないですし、ミサゴが魚を捕まえようと水面を突き破ってダイブする瞬間を見ることができるかもしれないですし、ハヤブサがすぐそこの崖の上にとまっているかもしれないですし、耳を澄ましたら雛の鳴き声が聞こえて実はそこで営巣しているかもしれません。
それを全部ひっくるめてビーチコーミングと呼べるのなら、それはシーカヤッキングと同等の言葉になるな〜と思っています。

BCの合間にハヤブサ登場。













写真:BCの合間にハヤブサ登場。

シーカヤッキングは魚を釣るためにするのではなく(それはカヤックフィッシングですね)、運動のためにただひたすら漕ぐのでもなく、もちろん高価でかっこよい自分のカヤックを自慢したり愛でるためでもなく、「海を観て歩く」という行為のことだと僕は思っています。
運動を伴って、身体で海を知ることができて、実際に海の生物や海の環境を観ることができるということの総称がシーカヤッキングで、そのためのシーカヤックなのです。
「シーカヤックに乗る」がシーカヤッキングではないんです。「靴を履く」のがハイキングでないのと同じです。
だから「海岸を観て歩く」という行為を「ビーチコーミング」という名称で呼ぶのだとするなら、ビーチコーミングはシーカヤッキングでもあるな〜と思うのです。
だとしたら、ビーチコーマーはみんなシーカヤッカーということに…。

そして、そのうえで更に僕としては海岸探索の足としてのマウンテンバイクの定着を進めていきたいと願っています。
数十年後には「ビーチコーマー」の足としてのマウンテンバイクが定着し、海岸には沢山の轍が残されるでしょう。
そしてウミガメの産卵地では轍が残らないように潮間帯を行くようにというマナーも定着するでしょう。
もちろん海浜植物の踏み付けには十分注意し…。
というようなことにはなかなかならないと思いますが、しかし海岸線の海側はシーカヤックで、浜側はマウンテンバイクでという姿が日本で定着し、そのあと世界中のビーチコーマーが真似をしたりするようになれば面白いなと思っています。
それに伴って、岩場を走ったり、砂地をスムースに走り抜けるスキルが欲しくなり、結果として運動の効果が大きく伴うようになっていけば正に陸のシーカヤッキングといえるアクティビティになるな!という妄想でした〜。

空気が澄んで夕焼けが素晴らしい季節です。













写真:空気が澄んで夕焼けが素晴らしい季節です。

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