シーカヤッカーはその頻度に関わらずストランディングに遭遇する可能性の高い人達と考えられます。出艇前後に海岸を歩いている時、カヤックで海岸線に沿って漕いでいる時、あるいはカヤックを漕いでいて海上でもその可能性はあります。またパドリングによる移動の速度もストランディングの発見には最適です。ストランディングを発見する為にカヤックを漕ぐ必要はありません、普通に楽しくパドリングしながらも頭の片隅にちょっとストランディングについて考えていればきっといつか遭遇する類のものだと思います。 2001年館山市の海岸に漂着したコマッコウの死体 海上から見た砂浜に何か黒いものが打ち上がっているのを見つけたならば是非好奇心をもってそこに向かってください。近づいてみると大抵は大きな流木だったり、流されて漂着した漁網だったり、海藻がまとまって打ち揚がったかたまりだったりすると思います。 しかしがっかりせずに良かった良かったとまた海に漕ぎ出してください、もしそれがイルカだったらあなたは彼らの悲惨な姿を見なければならないのですし、ストランディングしないというのはイルカやクジラたちにとって良い事に違いないですから。 2002年茨城県波崎でのマスストランディング(生存複数同時漂着) それでも、もしどこかでストランディングに遭遇したら、しかも周りの状況からして自分が第一発見者で自分が何もしなければその動物は見殺しという状態だったらと想像してください。 動物が好きな人なら動揺してしまうかもしれません、動かそうにも動かせないし周りには人手もないし、実際どうしたら良いか助言してくれる人はいない、しかも自分にも危険があるかもしれない。せっかく携帯電話を持っていても良い連絡先が思いつかない、ということもあります。いつか来るかもしれないその時に慌てないように、カヤッカーが何も準備なくストランディングに遭遇した時に出来そうな初期の対応方法をまとめてみました。 生存個体を救出すべく走り回る研究者.現場では重労働が多い.(波崎02) 移動のためのトラックを待つ生存個体.濡らした毛布を被せ乾燥と体温の上昇を防いでいる.(波崎02) 遠浅の海岸では溺れやすいため漁港でリリースするために運ばれる生存個体.(波崎02) docファイル(35.0KB) Word文書ですので、印刷したものをパドリング中などに 常備していただければ幸いです。 コマッコウの記録をとる国立科学博物館 山田 格博士 他.(坂田01) またこのマニュアルでは生きていた場合以外に明らかに死んでいる場合の対応もまとめてあります。 通常、動物の死骸はできれば見ないで離れて通り過ぎたい物のひとつです。 しかし広い海洋で暮らす海棲哺乳類などの動物の生態は知られていない事が多く、種によっては遭遇する事自体が珍しいものもいます。 このような場合には例えば海亀なども含まれます。 地域にとってはイルカやクジラなどよりも海亀の死骸のほうが遭遇確立が高い場合もあります。 これら海洋生物の知識は死んでしまい流れ着いた動物からでも得ることができます。 ストランディングが起こると皆が口にする、なぜ死んだのか、なぜ陸にあがってしまったのかということが研究者たちの努力とそれに協力する人達によって将来明らかになり、死因が海の環境汚染に絡んでいれば人間が反省しなければならない事も明らかになりますし、ストランディングが予め防げるものになるかもしれません。 皆様のご協力をお願いいたします。 館山市の海岸で発見したアカウミガメの漂着死体.産卵に訪れる海域にはストランディングの可能性も高い.(平砂浦01) あなたがシーカヤッカーであれば海上で漂流している海棲動物の死骸に遭遇する可能性もある. 海上で発見したアオウミガメの死骸.(坂田02) 2002年 千葉県御宿ツチクジラの腐敗死体.ここまで大きなものは誰かが報告しているだろうと思わずにご連絡ください. |