写真:なぜか魚ではなく干からびた海藻らしきものを持って飛んでいたミサゴ。
この何年かは冬になるといつもミサゴのことが気になっています。
今月もまたミサゴ、ミサゴ…で過ぎました。
ミサゴは海に暮らす猛禽類で、つまりワシのような肉食の鳥です。
海辺ではトビが沢山見られますから、海で猛禽類と言ったらトビを思い出す方も多いかと思います。
少なくとも関東ではトビは最も頻繁に見られる猛禽類ですが、関東の海辺でも普通に見られる種としては、他にもノスリ、ハヤブサの仲間、そしてミサゴが見られます。
その中で、ミサゴは魚を捕食するという点が特徴です。
トビも魚を食べますが、普通は捕食するわけではなくて既に死んでいるものを見つけた時に食用にするだけなのです。
ミサゴは、海の中にいる、泳いでいる魚を自分で捕まえて食べるということに特化した猛禽類なのです。
写真:ずっと沖で魚を捕まえようと滑空し始めたミサゴ。
ミサゴは世界中にいるそうで、図鑑では分布が北半球全域となっていました。
魚の泳いでいる水圏を探せば多くの場所で見られる普通の鳥と言えそうです。
見慣れたトビと見分けるだけならば、お腹や翼の下面が白いということで見分けられます。
ノスリも白っぽいですが、水面の上を飛ぶことは普通ないですし、ハヤブサはもっと小さくて、ミサゴはトビと同じような大きさです。
私はカヤックを漕ぐようになって初めてミサゴを知り、見慣れたトビとは違う、魚を探す独特の行動や水面に身体が見えなくなる深さまで飛び込む激しい行動に興味が湧いてきました。
そして、カヤックを漕いだり海岸を探索するなかでミサゴに出逢うことの多い場所をある程度知るようになりました。
そして、ここにいるのはいつも同じ個体なんだろうか?と思うようになりました。
写真:これなら個体識別可能。
以前行っていたミナミハンドウイルカの観察では、まず個体識別ができて初めて、群れの個体数が正しく分かりましたし、同時にそれぞれの関わりなども分かってきて、更にはいつもとは違う場所で遭遇した時にいつもの彼らなのか?ということも確認できるということを経験的に知りました。
ミサゴの場合はイルカ以上にそれぞれの姿が似ているので、なにかマークを見つけて個体識別ができてはじめて、あそこの個体とここの個体が同じだとか違うだとかが分かるので、つまり、2か所のミサゴが1羽なのか2羽なのかも分からないという事になります。
現状では、結構たくさんいるな〜と思って眺めていたミサゴが実はとても数を減らしているのかもしれないですし、逆に同じ場所に現れていた1羽だと思っていたミサゴが実は複数だったりする可能性もあるのです。
それでイルカの時に背びれや胴体の傷で個体を見分けたようにミサゴも翼下面の模様で個体識別ができないものかと思って始めた個体識別でした。
そしてイルカの時もそうでしたが、個体を識別できるようになると、それぞれの個体に愛着も湧いてくるオマケがついてくるだろうと思います。
それも楽しみなのです。
写真:去っていくミサゴ。
ミサゴの個体識別を始めてからは海岸通りでクルマを走らせていても、自転車に乗っていても、海上でカヤックを漕いでいても、ミサゴを探して水平線上の空や上の方ばかり気になります。
とはいえクルマや自転車では他所見は危険ですし、カヤックでも他船の動きなどもちゃんと見てないと…なのはもちろんですが。
これだけ気にして行動していると流石にミサゴに逢える機会は増えてきます。
行けば大抵はミサゴがいるという場所もありますし、遭遇率は安定してきますが、もうひとつ、真下からの撮影に成功しないと個体識別に使えないところがなかなか難しいところです。
写真:館山湾の風浪の中を往く丸木舟。
今月は昨年10月以来の国立科学博物館による「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」の丸木舟の作業現場にも少しお邪魔してきました。
館山の海辺にある東京海洋大学の施設にメンバーが1週間ほど滞在しながら丸木舟の操船と船体を煮詰めていく作業でした。
27日には館山湾西端に近い海洋大の海岸から館山湾奥にある海洋大の施設までの往復練習を行うとのことで、今回僕は自分のカヤックで金魚の糞だか、コバンザメだかになって往路を一緒に漕がせて頂きました。
前回、幾度か丸木舟に乗せていただいて、その舟としての性能に感動し、また身近な館山湾に太古のものと変わらない丸木舟で浮かぶという新鮮な体験をさせていただいた中で、「客観的に外側から、できれば自分で漕いでいるカヤックから丸木舟が館山湾を漕ぎ進む姿も見たい!」という欲求が発生していたので、今回は最後の最後にまたまた願いが叶いました。
背の高いマンションなども立ち並ぶ館山市街を背景にした太古の舟である丸木舟とのコントラストはとても印象深い景色を演出していました。
これで漕ぎ手の人が原始的な衣服だったら「時空の歪みを間違えて超えて来てしまった太古の人々」みたいなSFっぽい絵になっていたかもしれないですね。
写真:写真:館山市街を背景にした丸木舟。
シーカヤックから丸木舟を見ると、それは母船のような感じで、複数のカヤックで海を漕いで行く時とは全然違う感じもありました。
丸木舟がそこにいることでなんだか安心を得られるような、なんだか人の暮らす島と共に海を進んでいくような不思議な感覚もありました。
これも丸木舟が試行錯誤を重ねて頼りがいのある舟になったからで、前回漕がせてもらえた事で私自身も、その安心感を実感しているからなのかもしれないと思いました。
もちろん、丸木舟を漕いでいる信頼できる人たちの姿がそう感じさせているのはもちろんなのですが。
台湾からの航海を無事に終えて、何かの縁でまたこの丸木舟が館山に帰ってきたりしたら楽しいなと思ったりしました。
個体識別をすると野生動物にも愛着が湧くように、「スギメ」と名付けられたこの丸木舟に私も愛着が湧いてきたようでした。
写真:穏やかな館山湾奥に上陸して一休みの丸木舟。
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前回の丸木舟の記事(2018年10月のカヤック日記)
http://6dorsals.com/column/1810.htm
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