カヤック日記


2019年11月の出来事



写真:11月は水も空気も澄んでいて太陽も水も十分暖かな最高のシーカヤック向きの季節。















写真:11月は水も空気も澄んでいて太陽も水も十分暖かな最高のシーカヤック向きの季節。

まだまだ暑いくらいな日もあったり、急に寒い日もあったり雨が長く続いたりとどうも不安定な11月でしたが、生き物の世界ではいつもと同じ冬が来ているように見えます。
私も例年通りミサゴを観察する季節になり、そのついでに夕焼けを眺めて帰るという、いつものパターンになってきました。
しかし、薙ぎ倒された木々や土壌を保っていた木々の根が失われた事で大雨の日の河口の水が赤土を多く含んで濁っていて、それが広範囲に海に広がっている様子などを見ていると台風で自然界が受けた傷が癒えるにはまだまだかなりの時間がかかると感じます。
それに人の生活の再建もまだまだこれからです。
それにしてもあの濃い赤土の混じった川の水があれほどの量で湾に流れ込んだ時に砂質の海底で暮らす生き物たちに何も問題が起きないとは思えません。
これから何か少しずつ海の中の変化が漁獲とか様々な形で人の生活の中にも見えるようになるかもしれません。

写真:イソギク。2度もの大きな台風に遭っても海浜植物はちゃんと花を咲かせてくれています。















写真:イソギク。2度もの大きな台風に遭っても海浜植物はちゃんと花を咲かせてくれています。

昨日もミサゴの現れる河口に立ち寄りましたが、大雨の時に海に流れ出されてしまったらしい大きなコイが1q弱の範囲に3体漂着していました。
川で問題があって川の中で死んで流れてきたのかもしれませんし、単に水流の強さに負けて塩水の中で死を迎えたのかは分からないですが、この海岸でこのような大きなコイの死骸は見た覚えがなくて、ちょっと気になりました。
ミサゴについては行動に変わりはないように見えますし、魚もちゃんといつもと同程度の頻度で捕獲できているようなので、今のところ心配はないようですが水の濁りは魚を空中から探すには邪魔になるだろうとは思います。
そういえば数日前に我が家の上空を3羽のミサゴが鳴きながら飛んでいくという事がありました。
数年前にもそういうことがあって、どうやら我が家はミサゴの寝床とエサ場の間にある通勤ルートのひとつなのかもしれないと思っています。
今回は残念ながら写真に収めることができませんでしたが、ミサゴの個体識別をもっと続ければ、それが誰なのか、いつもの彼らなのか、たまたま通った見慣れぬ顔のミサゴなのかという風に分かるようになるかもしれません。

写真:27qの移動を確認した「個体4」。




















写真:27qの移動を確認した「個体4」。

2015年に個体識別を意識してミサゴを記録し始めてから、いくつかの個体の移動を知ることができましたが、今回約27qの移動が確認できました。
この個体を撮影していたのは今年2019年の3月だったのですが、写真整理を怠っていて年度後半のミサゴ観察シーズンに入った今になって写真整理を行っていたところ確認ということになりました。
位置の情報は伏せますが、この個体は2015年3月と2016年2月に約6qに移動を確認していて、今回は2016年の観察位置と今年3月の観察位置の距離が約27qとなり、2018年に確認した別個体の20qの移動(※)を超えた記録となりました。
ミサゴは水の上を飛びながら魚を探しますが、我が家の上空を通過した時のように、移動や魚を取って帰る場合には低い山の上空を普通に超えたりしていますので、目的地があれば南房総にあるような低い山々は無視して最短距離を移動するでしょう。
また海上では沿岸の浅い海域で魚を探していることが多いですが、カヤックで沖に出ると意外と岸から離れたところでも飛んでいて、山を越えるのと同じように移動の為には岸からの距離は気にせずまっすぐに飛んでいくという印象があります。
彼らの飛ぶ速度は特に速い訳ではないですが、27qは日帰りで魚を探しに行くこともできるような気軽な距離でしかないのかもしれません。

写真:太陽の横に出る虹色の光。幻日と鳥たち。













写真:太陽の横に出る虹色の光。幻日と鳥たち。

そして30qに近い距離を楽に移動していくとすれば、館山の洲崎から大島までの35qほどの海上上空の移動も天候次第では無理のないエサ場への移動として可能なのではないかという想像もできるようになりました。
少なくとも東京湾を横断し三浦半島へ渡るのに10q足らずという位置に棲む個体にとって対岸はエサ場のひとつになっていると考えるに十分だと分かります。
そういう可能性を考える場合、個体識別をしていなければ「館山には○羽のミサゴがいて、三浦半島の東岸には○羽、大島には○羽」とは言えません。
識別のない状況でいくつかのエサ場でそれぞれ観察している人に、その数を申告してもらうと「ミサゴはいろいろなところに沢山いる」という事になってしまいます。
私自身も南房総でいろいろなものを観るようになりはじめた頃、その中で各海岸線でミサゴを見る度に「意外とよく見る鳥」と思い始めていました。
しかしミナミハンドウイルカの移動を確認した経緯が頭の隅にいつもあるので、「本当にそうかな?」という思いがあって、山を越えて飛んでいくミサゴの姿を見たりする度に「実は南房総全体で数羽程度の個体数だったりしないだろうか?」と考えたりしたのでした。

写真:潮が退いた時間でなければ通り抜けられない海岸で地層を見学しながらツアーの下見。自転車にも良い季節になりました!




















写真:潮が退いた時間でなければ通り抜けられない海岸で地層を見学しながらツアーの下見。自転車にも良い季節になりました!

それで1羽1羽を見分けていけば確かな数がそのうち分かるし、少なくとも行動範囲のサイズは分かってくるという事で始めた個体識別でしたが、今回の27qは予想以上に行動範囲が広いと感じました。
そして、もし島へも渡って、伊豆諸島の島々をハシゴして美味い魚を沢山食べて歩いて(飛んで)いるのだとしたら羨ましいような感じもしますね。
伊豆諸島の島々を転々としながら魚を食べて行くと、その向こうには伊豆半島も見えるはずで、もしかしたら伊豆まで…という思いが湧いてきています。
まあ楽しい想像は広げていく方がワクワクしますから。
その場合はやはり泊りがけなのでしょうから、各地にお気に入りの「ねぐら」もあるのかもしれません。
知りたいことがこうやってどんどん広がっていってしまいます。

写真:夕焼けの向こうに伊豆半島。最短で60q足らず。













写真:夕焼けの向こうに伊豆半島。最短で60q足らず。

しかし私は主に南房総とその少し北側のフィールドだけを対象にしていて、伊豆や三浦半島、伊豆諸島へ行くことは近年全く無く、もしたまに行けたとしてもミサゴの記録をしっかり取る様な長期の旅はできないので、むしろ現地でそれらを観察している方々との交流でそれを確認できれば、御蔵島から館山にやって来たミナミハンドウイルカの時のような楽しさがあると思います。
もし、それらのフィールドでミサゴを撮影記録されている方で写真を見せてくれる方がいたら是非ご連絡頂ければと思います。
少なくとも各地で同じような個体識別調査を誰かが行っていれば、いつか何か私たちにとっても興味深く、確かな増減の記録を人が認識しておくことでミサゴにとっても良いことがあるかもしれません。
でも、まあ、しかし、ミサゴの翼の模様を使った個体識別の精度を私自身の中のレベルでなく客観的にも通用できるような、現在のザトウクジラの尾ビレの模様による識別標識ような確かなものにしていく事が大切だと思います。

写真:日没が早いこの季節はサンセットパドリングがおすすめです!




















写真:日没が早いこの季節はサンセットパドリングがおすすめです!

※2018年2月のカヤック日記





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