あけましておめでとうございます!
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
写真:太陽とミサゴ。太陽には黒点も写っていました。
昨年はなかなかいろいろと変化の多い年となりました。
今年はどんな年になるのか?またはどんな年にしていこうか!?と思っているところです。
いろいろな制限がある中での活動は当初戸惑いもありましたが、やはり居住している近辺の自然を観る、記録するという事がどんな状況でも続けやすく、それでいて意味が大きいのだという事を実感したのも確かです。
私が見ている南房総の海辺には派手な生き物がいるわけでもありませんし、海岸の景観も地味といえば地味です。
自然物だけの海岸は結構ありますが、実際には人の手が加えられていて「自然」というには不自然な場所も多く、ヒトの居住区がそれらの自然空間に割り込んでいたり、海岸そのものが人工的に改変されている場合も多く、そのような場所で自然を記録することの難しさも感じます。
一方で、自然とヒトとの関わりや人が自然に与える影響を観察するにはとても都合のよい場所でもあり、その中で「自然」がどう変わっていくのか?どうやって折り合いをつけていくのかを観る面白さもあります。
「面白さ」と言ってもそれは「愉しさ」ではなく「興味深い」という意味での楽しさです。
写真:昔ながらの漁船の浜上げ場。ここには木造船が残っています。そしてゴミ。人の生活と自然が混然な場所。
数少ない自然物がヒトの活動で失われるのを繰り返し見ているのはなかなか苦痛ですが、そんな時にはそれを記録していくと将来の人たちが今の時代を見た時にどう思うのかに思いを馳せてみます。
きっとその頃には今のようなヒトだけが自由に自然を利用する世界ではなくなっていて、自然が存在する権利が強まっているはずです。
ヒトが自然に触れる時に今では想像もできないくらいの配慮をしていると期待しています。
今のままのやり方で進んでいくと、きっとその未来には自然が失われすぎていて、その影響によりヒトの生活に不便を強いられているのではないかと思います。
それで結局、地球を大切に扱わないと自分たち人間が生きていけないという段階に入って(もう入ってますが)誰しもそれを実感し、自分の行いが環境の変化にすぐに表れるという段階になってしまうと、例えば木を一本切ることの影響の大きさが現在の何倍になっているか分かりません。
そこまでいけば、規制や啓蒙活動といった形をとらなくても個々が進んでそれについて考えて行動する時代になっているはずです。
でなければ、もし気づかなかったとしたら、その時にはもういろいろ終わってしまっていると思います。
「自然を守ろう!」という風に考える必要もない段階がすぐそこに来ているような感じがしています。
「自然=自分」だったと気づき始めたら、変化は早いでしょう。
特に南房総は人口の多い首都圏の片隅ですから、変化が起きると動きも激しくなると思います。
日本の海辺の自然環境に対する変化は千葉県と神奈川県から変わっていくと思っています。
そういう時に今の時代に自然に対して行ってきたことを伝えるために、自分としてできることは「南房総の海辺の自然がどうだったか、そしてどうなっていったか」を記録することだと思っています。
そんなに上手に残せるのかは自信がないですが…。
写真:人気のない朝の館山市街の海岸を飛んでいくミサゴ(左上)に遭遇。ミサゴにとってここはどんな場所に見えるのでしょう?
今月はまだ海の上のムシを探していました。
以前成果のあった場所に固定していた範囲を広げてみました。
そして、この5年くらい続けているミサゴ観察。
こちらはとにかく継続、そして新たな傾向も確認できました。
それに加えてビーチコーミングもいつもよりも強化しました。
これについては家族の影響が大きかったのですが。
ビーチコーミングという行為が生物記録、環境記録だという感覚でやっている人は少ないのかもしれないですが、今ではSNSなど個人の方でもある意味の発表を日常的に行っていますから、WEB上には海岸に打ちあがる生物情報が溢れています。
これは世界中の人が共有できる、ただちょっとまとまりのないデータベースだと思います。
そういう風に考えて自分も南房総の漂着を記録するひとりになっておこうという考えもあり、元々はただ単にきれいな貝殻を拾い始めたビーチコーミングを今は海岸情報収集のひとつとして意識して行っています。
写真:館山湾で見つけたタコブネ。割れていても貫禄のある殻でした!
今月は家族も私もアオイガイとタコブネを拾いました。
私はアオイガイは多少拾ったことがありますが、タコブネは今まで出逢えていなかったのですが、今月ついに逢うことができました。
南房総で貝殻を拾うようになって四半世紀でやっと!
ただ残念なことにそれはかなり破損していて、しかしサイズは大きく最も長い部分で8pありました。
写真のような美しい褐色で、厳しい海での生活を生き抜いてきた貫禄のようなものが感じられました。
住人である中のタコは入っていませんでしたし、大きく殻の欠けたものでしたがとても嬉しかったです。
貝に入ったタコが漂着しやすくなる傾向は何なのでしょう?
以前には2017年の12月にも多数のアオイガイが漂着したのを確認しています。
2017年12月のカヤック日記
写真:5日以降には館山湾湾奥でアミかエビの大量漂着がありました。カラスは大喜びで大集結でした。
他にも奇妙なものを見つけました。
写真のような円錐形の弾力があって、しかも伸びるなんとも言えない感触の透明の物体でした。
全く何の類か分かりませんでした。
この日はサルパという透明の生き物をふたつ見ていましたので、その仲間かもしれないと思いつつ、しかし全体の印象が違う感じです。
劣化して変化したのかな?とか、そもそも生きものだろうか?と悩みましたが、知り合いからゾウクラゲでは?と教えてい頂き、調べてみると特徴が重なっていました。
おそらくゾウクラゲの一種で間違いなさそうです。
こんな不思議な生き物がすぐそばの海で泳いでいて、その上を我々は泳いだりシーカヤックを漕いでいるわけですね。
こういう時には水面の下の世界をまだまだ知らない自分をいつも感じます。
知らないことだらけの海の世界を知らぬが仏的に恐れることもなくシーカヤックで一人漕ぎ出すことについて考えれば、もし宇宙にひとりで出かけていく事ができたらシーカヤッカーのような人間は行くのかも?と思ってしまいます。
ちなみにゾウクラゲは怖い生き物ではないようで、インターネットで生態動画を見つけたので見てみると非常にかわいい生き物で一瞬でファンになってしまいました。
いつか生きている姿で出逢いたい生き物がまた増えたのでした。
是非皆さんもゾウクラゲ動画探してみてください。
写真:館山湾で見つけたゾウクラゲと思われるもの。
そしてミサゴはもう飽きてしまうのではないかと自分でも時々思う時がありますが、全然飽きるというような気配がなく、それはやはりあの予期せぬ場所で遭遇した時の驚きのような発見の喜びや、上手く写真が撮れなかった時の悔しさとか、あの素晴らしいダイビングのシーンが私にそうさせるのだと思いますが、ただ単にその姿を撮影しているだけだったらこうはいかなかったと思います。
写真は私としてはできるだけいろいろな場面を実際に見て撮ってみたいというのはありますが、何よりもそこにいたということの客観的な記録という意味が第一で、次に個体識別の可能性のある写真を撮ること、そのうえでミサゴの姿を愛でるためという順になっています。
そのため、そしてコストを抑えるために大きな望遠レンズを三脚に立ててということはしません。
最近は古いデジタルの一眼レフに、さらに古い丈夫なマニュアルレンズを付けて伸ばしても210oというコジンマリな装備で、その代りできるだけいつもカメラを背負って、予期せぬ場所でもミサゴが現れたらいつでも撮れるようにしておくようにしながらビーチコーミングをしたり、自転車を漕いだり、カヤックを漕いだりしています。
ですから本当に素晴らしい一瞬を捉えたミサゴの姿を愛でるにはインターネット上の誰かが撮って見せてくれている写真で楽しませていただいております。
本当に皆さんどうやってこんな瞬間を?!という写真が世界中からインターネットにアップされていて本当にありがたい時代です。
私はそういう写真はインターネット上に提供できないですが、代わりにいつかミサゴの生態の、南房総でのほんの少しの事実だけでも掴んでご紹介できる日が来るように気長にやっていきたいと思います。
次号のkayak誌「カヤック乗りの海浜生物記」はミサゴについて書いていますので、興味を持って頂ける方は是非読んでみてください。
写真:魚めがけて一直線。
あとは今年2月に富津市の沖で遭遇したクモから始まったといえる海面のクモや昆虫などのミリ単位の生き物の事ですが、この18日にはそういうものがいそうだと想像してカヤックを漕いで行ってみたところに、実際に多数の生き物が見つかったということがありました。
そういう小さな生き物ですから、彼らがどれくらい時化の中での耐性があるかには興味がありますが、まず何より私がそれを見つけられるように、それらの探索、観察にはベタ凪が条件となっています。
少々の風浪があっても見つけられたこともあったのですが、撮影も捕獲もままならず、必要な記録が残せませんでした。
そのため海況が非常に良い日を選んでそういうムシを探していましたが、入り江状になった海域ではある程度安定して海面は穏やかですから、そういう場所を狙ってみたのでした。
そこにはまずアブラムシの類が無数にいて、クモの類が時々、甲虫であるハネカクシの類は1、私には何の類か分からずにツイッター越しに教えて頂いたチャタテムシの類、その他小さすぎて写真がうまく撮れなかったものなど多数を観察、一部捕獲しました。
クモとハネカクシ以外は家に帰ると既に死んでしまっていて、いずれも水面で立ち上がって海面に適応しているように見えても大時化に近い条件になっていたであろう容器の中では短い時間しか生きられなかったものもいたと分かりました。
クモは帰ってからも観察してみると水中で長い時間過ごしていて驚きました。
そしてハネカクシはその後一週間、海水と上陸用の小枝を入れたプリンの容器の中で生きていました。
餌が分からなかったため与えることができずにいましたので最後の方は活発とは言えませんでしたが、必要な条件を与えると十分に動いていました。
一週間も飼っているとこういうo単位の生き物でも愛着が沸いて来るもので、餌を与えられないのが残念でした。
写真:海面で立っていたハネカクシ類。長さが5oくらい。小さいことで水面で立てる、つまり行動圏とすることができるのですね。
そのハネカクシは九州の研究者の方のところに送ることになり、発送しました。
無事に到着したそうですが、残念ながら死んでいたそうです。
道中のトラックの中は寒かったのでしょうか?
解剖して種を確認するとのことでしたので、生きていても可哀そうではありますが…。
海辺にはハネカクシの仲間は結構いるようで、以前海岸の漂着物の下によくいるハネカクシを探して撮影したことがありました。
あとは潮溜まりでハゼに捕食されるこれまた非常に小さなハネカクシ類と思われる昆虫も観察したことがあり、以前から少し気になっている類の虫でした。
今回はさらに海の上ということでシーカヤッカーであることの利点が活かせる仕事がまた見つかったと思っています。
海の上の「ムシ」の生態解明という小さくて大きな新たな課題、というか楽しみがまた増えました。
小さなものもしっかり見える年齢のうちにできるだけいろいろ見つけて記録していきたいと思っています。
きっと海の生き物の生活の知られていなかった一面が判ると共に、海そのものの知見も与えられる可能性があると思っています。
これから地味に気長に続けていきたいと思います。
写真:なかなか雪が積もらなかった富士山と魚を探すミサゴ。
今年もそんな感じで、ある意味大きく変わることなく継続的に活動していければと思っています。
ツアーに関しては社会的な様々な要請や条件がいろいろ出てくるかと思いますが、その中で十分に配慮して、そして皆さんにも今まで以上に身近な自然を見直して頂ける機会を提供していきたいという願いもあり、変わらず参加していただければと願っております。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
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