発表



2015年11月に千葉県一宮にて行われた日本ウミガメ会議で発表したものをご紹介させて頂きます。
ふたつあり、ポスター発表の「ウミガメによる砂浜の通信簿〜母ウミガメたちが残した産卵地の環境評価」と千葉県南房総地域の産卵地紹介として口頭発表した「南房総地域のウミガメ上陸痕跡の傾向」で使用したパワーポイント画像に解説を付けたものです。


「ウミガメによる砂浜の通信簿〜母ウミガメたちが残した産卵地の環境評価」

足跡経路の記録方法が定まった2005年から2015年までの足跡経路をサンプルとして、足跡経路記録の数値から母ウミガメの行動傾向を砂浜毎に年度毎に数値化するという内容です。
数字にすることで、それぞれの行動傾向を分かりやすく、更に比較しやすくしてみようと試みました。
今までは、この海岸とあの海岸では母ガメの行動はどういう風に傾向が違うか?という話になると、その状態を総じて表現することが難しく、膨大な写真や図が必要になりました。
更にはどちらがより問題が多いのか、その程度を比較しながら伝えたり考えたりする事は困難でした。
そしてなんとなく印象的な話になってしまいます。
しかし数字に変換できれば大雑把な状況をすぐに示すことが出来、問題のある場所に焦点を当てやすくなります。
そのうえで詳細を探る場合には記録数値の傾向を辿ったり、もっと進めるならば当日の写真やノートを引き出すということで段階を追って状況毎の確認、整理がしやすくなります。

これを参考にして各地で現場の都合に合う様にアレンジを加えて活用いただく事を期待しています。 更には徐々に標準化していき、世界中で同じ方法で記録されれば、母ウミガメが審査員の海岸健全度レースの世界ランクも決められるかもしれません。
母ウミガメには言い訳が聞きませんし、ヒトの都合は関係ありません。
母ガメが認めてくれた海岸はきっと素晴らしい場所な筈です!

※以下のポスター発表は一般に公開されているイベントでの表示という事と、この活用は学校の授業でも可能と考え、中学生くらいの方でも簡単に理解しやすい様なものにしてあります。


ウミガメによる砂浜の通信簿

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ウミガメによる砂浜の通信簿

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ウミガメによる砂浜の通信簿

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ウミガメによる砂浜の通信簿

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ウミガメによる砂浜の通信簿

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ウミガメによる砂浜の通信簿

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ウミガメによる砂浜の通信簿

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ウミガメによる砂浜の通信簿

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「南房総地域のウミガメ上陸痕跡の傾向」

口頭で行った解説を文字で加えてあります。 当日口頭で説明し損ねたことも付け加えておきました。
2001-2015年までに行った調査で得られた南房総地域の産卵上陸の数は毎年日本ウミガメ協議会に報告してありますので、数ではなく調査の方法を主体に調査の中心である根本海岸の現状に加え、大雑把なエリア紹介となっています。
全国のウミガメ関係者の方々に南房総の現状を知って頂く貴重な機会となりました。


南房総地域のウミガメ上陸痕跡の傾向

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カヤックのガイド業をしながら南房総のウミガメ調査をしています。
2000年にたまたまこの写真にあります根本海岸でウミガメの足跡を見つけ、卵も確認できたことで次年度2001年よりウミガメの産卵調査を始めました。
普段カヤックに乗っているためか、ヒトとしてウミガメや海の生物を見るというよりはウミガメの目線で世界やヒトの暮らしを見るという感覚が強い調査になっています。
カヤックに乗っているとウミガメやイルカなど海の生き物の一種になったような感覚があるのです。

南房総地域のウミガメ上陸痕跡の傾向

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写真のように調査初年度に根本海岸で見た足跡は驚くほど多様で、非常に迷った様子でした。
大きく蛇行しながら奥深い海岸の奥へ奥へと向かうものや、海岸線に沿って蛇行し続けるもの、上陸してすぐの場所に卵を産んでしまうもの等がありました。
これには訳があるだろうと考え、足跡に着目していくことになります。

南房総地域のウミガメ上陸痕跡の傾向

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足跡の記録を残してみようとしますが、なかなか苦労しました。
まず最初は大雑把な経路とGPSの座標で位置情報を補おうと考えましたが、GPSの誤差は大きく足跡の経路のようなものを記録するには不適と気付きました。
次に経路の長さを書き加えるようになり、進路の変化をコンパスを用いて角度で記録するようになりました。
最初は大雑把でしたが、徐々に細かく記録するようになり現在は写真のように距離や角度に関わらず出来るだけ細かく記録しています。
ただしこれには再現性がないことが確認できています。
角度、距離ともに計測の微妙な数字のずれが重なり、後半に行くほど実際とかけ離れた経路を辿ります。

南房総地域のウミガメ上陸痕跡の傾向

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足跡経路を再現できないという事で記録の意味を失いかねませんでしたが、数字に置き換える事で感覚的にではなく数値で状況がある程度までは表現できることが分かりました。
これについてはポスター発表にて詳しく説明しておりますので是非ご覧ください。(上記「ウミガメによる砂浜の通信簿〜母ウミガメたちが残した産卵地の環境評価」参照)

南房総地域のウミガメ上陸痕跡の傾向

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足跡の二次元的な情報と経路の記録の他に、上陸して来た母ウミガメが何を見たのかについても記録したいと考え足跡経路進行方向にウミガメの目線程度の高さで写真を撮影して「母ウミガメの見たもの」という記録を取っています。
これにより進路にあるウミガメの経路変更に影響を与えたものを確認しようとするものです。
また重要なのは高さで、ヒトの背丈ではなくウミガメの目の高さでカメラを構えていることが重要です。

動画はリンクからyoutubeでご覧ください。 youtube「050809根本」

南房総地域のウミガメ上陸痕跡の傾向

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このようにウミガメの足跡を追って行くことで見えて来た問題点は以上のようなものになります。
少しずつでも改善していき、現状の人々との生活を保ちながらウミガメの繁殖とのバランスをどこで取っていくかが課題となります。

南房総地域のウミガメ上陸痕跡の傾向

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根本海岸全景と年毎の上陸位置の記録です。
年度によって傾向が変わっている事が分かります。

南房総地域のウミガメ上陸痕跡の傾向

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根本海岸の調査と同時に根本海岸で見られた問題点の見当たらない海岸線での調査も不定期に行っています。
これはあくまで根本海岸との対比の為ですが、少なくともそれらの海岸にもウミガメの産卵上陸が続いているという事の確認という意味合いが強くなってきています。
これらの海岸は道路からのアクセスが悪かったり延長海岸線距離が長いことから大潮の干潮時に時間を合わせてマウンテンバイクで波打ち際を走りながら調査を行っています。
私がひとりでこの範囲を調査し続けて来れたのは自転車のお蔭で、時間とお金の両方のコストを大きく下げてくれています。
また動力の付いたオフロード車両とは違い人力のマウンテンバイクは上げ潮になれば波を被る場所を選んで走ることにより環境負荷はヒトが歩くよりも低く抑えられるかと思います。
是非、他の海域での調査にも導入を検討されることをお勧めいたします。

南房総地域のウミガメ上陸痕跡の傾向

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南房総全体の調査エリアです。
広大ですが、産卵の可能性のある砂浜の総延長は18qほどとなっています。
またエリアによっては他の方が作成したウミガメ保護柵も多々見られますが、本人に承諾を得ていない場合は日本ウミガメ協議会への報告上陸数には加えていませんので、登録よりも実際の数はかなり増えます。

南房総地域のウミガメ上陸痕跡の傾向

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以上です。
会場での発表で加えていた謝辞につきましてはネットでの公開について承諾を頂いていない方がありますので省かせて頂きました。
秋山章男先生はじめ、海岸でお世話になった方々に御礼申し上げます。



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