アカウミガメの上陸(産卵)



初めて南房総で海亀の卵を見つけたのは2000年の夏でした。
それ以前から足跡を見かけることがありましたが巣は見つけたことがありませんでした。
そこは夏には海岸キャンプ場になってしまう白浜町、根本海岸でした。
多くのテントと浜に出入りする自動車、そして沢山の海水浴客であふれる砂浜です。
こんな場所で今までにも人知れず海亀の卵が地中に産んであり、それを知らずに多くの人が巣の上を歩き、車を走らせていたのだと思うと大変残念に思いました。
見つけた巣だけでも何とかできないか?と思い、始めた小規模な調査です。

巣にはできるだけ手を加えない、移転は最小限にして時間がかかっても周囲の環境を改善していくことで結果的にウミガメの生息環境の保全を目指しています。
嬉しいことに最近では地元の方々にも興味を持っていただき、海水浴シーズンにはライフセーバーの人達も巣を見守ってくれるようになりました。
調査には九十九里浜で長年ウミガメの調査を行なっている元東邦大学教授の秋山章男先生に多くのアドバイスを頂きながら行なっています。
先生からはウミガメだけを見ればよいのではなく、それに関わる周囲の環境全てに興味を持たなければならないことを教えていただきました。
何十年、数百年先にもこの海岸でアカウミガメが当たり前に上陸してくる姿を想像して調査を続けたいと思っております。


ウミガメに関しての発表資料

2015年日本ウミガメ会議いちのみやにて発表した内容です。
ウミガメの産卵環境保全に向けたアイデアと南房総の状況を紹介させて頂きました。
是非ご覧ください。


調査の基本的な手順

画像をクリックすると大きな画像が見られます。


南房総市の白浜(根本〜滝口)にかけての海岸線を産卵シーズンの6-8月の間は毎日徒歩、もしくは自転車で確認調査します。
その他に館山市の平砂浦海岸、南房総市の名倉、千倉、白子、和田(和田港以南)を6-8月の間の月に2回ほど自転車を使って調査しています。
産卵シーズン中に海岸線を見ていくと時々写真のようなウミガメの足跡に遭遇します。



足跡が途中で急に途切れしかも砂がやけにフカフカとしていたら、そこは母ウミガメが卵を産もうとした痕跡です。
掘っても産まなかったり、穴だけ残して去って行ったりすることもあります。
特に写真のようにきれいにフワッと砂がもってある場合は卵が産んである可能性が高いでしょう。
ただしフカフカエリアが畳2畳分くらいにの広さのときもあり、そんな時は慣れるまでは卵を見つけるのはなかなか難しいです。
ちなみにフカフカエリアを正確にはボディーピットと言います。
しかしもしこのボディーピットを発見しても出来れば卵を探さずに置いてもらえるとウミガメの為になります。
調査のために私も卵の有無を確認したり、状況的に仕方なく移植を行ったりした例も多少ありますが、本来は卵を触るのは卵の中の子を殺す可能性がありますから、そっと砂の上から見守るのが良いでしょう。
もし足跡とボディーピットを発見された際には、位置とできれば写真を添えてご一報いただければ幸いです。



本来は巣らしき場所が確認できれば卵を掘り出して確認する必要ないと思いますが、特に海水浴場である根本海岸では必ず卵を確認してから柵を張っていました。(現在は状況によります)
しかし2015年現在ではボディーピットの状態からでも卵の有無をほぼ確認できるようになりましたので、掘り出し確認をやめています。
卵を探すのは非常に緊張する仕事でしたし、実は一度卵を割ってしまったことがあります。これでは本末転倒ですし、最近はそれに触れる事について厳しくなっています。



初期の頃は卵を確認したら巣を中心に流れ着いた竹などを利用して柵を張っていました。
看板も立てたりしていましたが、大抵台風などで折れたり倒されたりしてしまいます。
また柵があるために卵の所在が誰にでも分る事からイタズラや盗掘の可能性が高まるため、2015年現在柵は一切立てない方針で調査を行っています。
位置記録を終えたら、あとは孵化まで台風や人間による問題が起きないか見守るばかりです。



※例外的に大きな問題がある場合に限り、卵を浜の端に移植する場合があります。

他の調査
夜間の母ウミガメ上陸調査は産卵シーズン中、不定期に行う。(2015年現在行っていません。理由は調査者自信と対象生物である母ウミガメ双方への負担の大きさですね。)
子ガメの巣脱出の確認はそれぞれの巣について産卵から60日後を中心に不定期に行なっています。
孵化予定日から1ヵ月後には巣を掘り返し巣内の状態を確認する。(2015年現在行っていません。)
不定期に近辺の海岸における産卵も調べる(館山市平砂浦海岸、南房総市千倉から和田など)。

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