カヤック日記


2020年6月の出来事



写真:26日のウミガメ調査の際に南房総市太平洋岸でオオミズナギドリのカタクチイワシ捕食の場面に遭遇しました。(右手前はおこぼれを拾いに来たウミネコ)YouTubeの動画も是非ご覧ください。













写真:26日のウミガメ調査の際に南房総市太平洋岸でオオミズナギドリのカタクチイワシ捕食の場面に遭遇しました。(右手前はおこぼれを拾いに来たウミネコ)
YouTubeの動画も是非ご覧ください。

今年も例年通り6月からウミガメの産卵調査を再開することができました。
2000年から手探りで始めた調査ですが、今年はちょうど20年目の調査となります。
その節目の年の調査で海水浴場、海岸キャンプ場不開設という大きな変化を記録することになるとは思っていませんでした。
滅多にない機会となりましたので、今までの人利用の影響の強い夏の産卵地の状況と、それが削減された状況との比較をすることが可能になるはずです。
今のところはまだ梅雨時期ですし、例年も人出の量はさほど変わっていませんが7月からは学校の夏休み期間の短縮などもありますから、明らかに通常との人の量に差が生じてくるはずです。

写真:久しぶりにタマムシを海岸で見つけました。時々迷い込む個体がいます。















写真:久しぶりにタマムシを海岸で見つけました。時々迷い込む個体がいます。

また主に調査している南房総市の根本海岸は夏季にキャンプ場となっていましたので、産卵や孵化行動に直接影響する夜間にも人が海岸に滞在するという、あまり他では無い状況でのウミガメの繁殖地ですから特に変化が見られるだろうと考えています。
根本海岸に関しては既に26日に産卵上陸が確認できました。(6/5には南房総市で×1)
この上陸の足跡の様子は既にキャンプ場不開設の影響を表現していました。
このウミガメが産卵した位置では毎年砂丘はキャンプ客のクルマの出入りのために砂丘上に大きな段差を伴う通路を重機により造ります。
その高く角度の強い段差はウミガメが乗り越えることが難しく、ウミガメが本来産卵に適していると考える砂丘の高い位置まで到達することを阻んでいました。
そのため、ウミガメは砂丘に至る前の後浜という辺りで産卵してしまうために台風などの高潮の際には大きな影響を受けるという状況でした。
今回のウミガメの上陸では、そのような障壁はなく、昨年造られていた通路も一年の間に埋もれ、なだらかになり本来の砂丘の緩やかな斜面を維持していました。
その斜面を問題なく登り切りほぼ砂丘の天辺と言える場所で恐らく母亀にとっても完璧と言えるような場所で産卵を終えた痕跡が残っていました。

写真:広大で、砂丘が維持されて海浜植生も多く、チドリの繁殖にもウミガメの産卵にも最適な関東にあっては非常に貴重な海岸です。















写真:広大で、砂丘が維持されて海浜植生も多く、チドリの繁殖にもウミガメの産卵にも最適な関東にあっては非常に貴重な海岸です。

今年の海岸はどこも海浜植生が豊かで、波打ち際には適度で十分な間接的にチドリの餌となる海藻が打ちあがり、本来の南房総の海辺の姿を再現しています。
海岸清掃の際に漂着海藻を取り除くのはまだ供給がありますから良いかもしれないですが、海浜植生を草刈り機で刈り取ったり、重機で埋めてしまう海岸清掃の方法を行う場合は県や市などが生物種を判別できる担当の人を配置して行うべきだと思います。
住民に任せっきりで国定公園の清掃を行っているという事は、知識がなければ希少となっている植物を一日で根絶やしにしてしまう可能性が十分にありますし、そこに暮らす様々な希少生物の棲息に必要な条件を知らずに排除してしまうことにもなります。
そもそも県や身近な市にそういう事を判断し指導できる人間が配置されていないという事は大きな問題だと思います。
もしそういう人はいるのだとしたら機能しているとは思えません。
一体どうなっているのでしょう?
「国定公園」という名称を付けて満足していてもその地域の環境は維持されていかない筈です。
「絶滅危惧種」とか「要保護生物」などの指定にも同じことが言えます。
危惧したり、要したりすることは一般の人にもできますが、それを指定した者が対応まで実行して初めて指定する意味があると思うのですが。

写真:シロチドリのディスプレイから交尾に至る場面を初めて観察できました。YouTubeのコマ動画も是非ご覧ください。













写真:シロチドリのディスプレイから交尾に至る場面を初めて観察できました。
YouTubeのコマ動画も是非ご覧ください。

今月も南房総のいくつかの海岸でのいわゆる浜千鳥の繁殖について観察を行いました。
ウミガメ産卵調査のついでと始めた事ですが、生態を観察するというのは生きているものの姿を記録するので、ウミガメの足跡や痕跡を記録するのとは違い、片手間でやっても時間をかなり使い、あとは記録としての撮影にはなかなか労力が大きいなと感じました。
今月も日記の更新が遅かったですが、その月の全ての写真を整理して選択してその写真を用いて更新するという流れの中で写真の量がとても多くなってしまっていて処理に時間がかかってしまいました。
例年の観察頻度とのバランスを考えると単純に対比できないのですが、やはり今シーズンは繁殖数がかなり多いように思います。
コチドリとシロチドリでの巣や、巣が確認できていなかった親子など複数確認しています。
その後追跡観察していますが、雛が大きくなって広く動き出すと完全に追い切れなくなってしまうので率までは不正確なので出しませんが、少なくとも「海岸が利用、加工、人の積極的な侵入が省ければ、これだけの数が産卵を行った」という記録にはなると思います。

写真:親が警戒しない距離で観察していたところ雛の方から接近してきて焦りました。雛は飛ぶことができませんが歩いて自ら地上にいる小生物を採取しています。中央やや左手前が掌に乗るようなサイズの雛と右奥で心配そうに見ている親鳥。今まで以上に十分な距離を保って観察をと思いました。













写真:親が警戒しない距離で観察していたところ雛の方から接近してきて焦りました。
雛は飛ぶことができませんが歩いて自ら地上にいる小生物を採取しています。
中央やや左手前が掌に乗るようなサイズの雛と右奥で心配そうに見ている親鳥。
今まで以上に十分な距離を保って観察をと思いました。

いつもであれば人やトビ、カラスといった天敵に対しての行動が目立っていましたが、繁殖の密度が高いせいかコチドリ、シロチドリ共に縄張り争いが絶えない様子です。
カラス、トビの数には人の海岸への出入りと関係があるとみえて彼らは人の動きを見ていますし、捨てていったゴミなどにも反応が早く、それに伴ってチドリが繁殖している海岸へ現れるトビ、カラスの数は増える傾向があるように見えます。
また最近気になっているのは、海岸内、もしくは周辺に電柱などの高い設置物があることがチドリの繁殖に影響している可能性です。
雛のいる時期になるとカラスやトビは低空で雛を探すように親鳥の周辺を飛ぶ時がありますが、その他の場合では上空を低速で飛びながら探索をします。
それにはある程度の体力を消費しますし、ホバリングが苦手なトビやカラスは通り過ぎながら探すという方法しかできないのですが、高い設置物があるとその上に長い時間、休息しながら留まってチドリの動きを観察できるために、雛を発見する可能性が高まっていると思われます。
それで雛が捕食されたシーンを見るという機会はまだないのですが、有効に利用されてしまっているのは確かです。

写真:カツオノエボシの季節になりました。刺されたくはないですが大変興味深い美しい生き物です。YouTubeの動画で動く姿も是非ご覧ください。















写真:カツオノエボシの季節になりました。刺されたくはないですが大変興味深い美しい生き物です。
YouTubeの動画で動く姿も是非ご覧ください。

他の問題としては繁殖地でのイヌの放し飼いでしょう。
人出が少ないことで、その頻度が高まっているように思われますが、海岸で飛ぶことができずに過ごしている雛、その保護のために動く親鳥の動揺は非常に大きくなっています。
私が観察している種はシロチドリとコチドリですが、以前は見かけるのはシロチドリが主体でしたが近年コチドリの方が多く見られます。
シロチドリの巣は普通海辺の柔らかい砂の上に貝殻の欠片を集めて巣とするもので、周囲に囲いとなるようなものは不要なようです。
一方、コチドリは河原などでも繁殖するそうですし、空き地などでも普通に繁殖してしまう種で、地表面の質に対する拘りは少ないようです。
むしろ砂地は好まず小石交じりくらいで、周りに石や枝、ゴミなどの壁となるものがある状況を好む様子です。
海岸に礫が持ち込まれ、人が利用しやすいように固められたりする度にシロチドリの生息地は追いやられて、コチドリが優位になってきたと見られます。
海岸に持ち込む土、礫、砂などは人には全く問題と感じられないものかもしれませんが、このように生き物には影響が出てきますし、長い目で見れば台風などでそれらが海の中へ運び込まれる場合もあると考えれば、海の中の環境に変化が生じて、結果的に漁獲にも影響が出るかもしれないと考えてよいと思います。
漁獲といった経済に関わって初めて「問題」となる感覚はそろそろ終わりにしないと取り返しがつかないところに来ているように思います。

写真:アマモが大量に漂着した日、その上にムーアシロホシテントウがいました。どういう経緯なのでしょう?















写真:アマモが大量に漂着した日、その上にムーアシロホシテントウがいました。
どういう経緯なのでしょう?

これらは自然に接する人が少数派となりつつあるという現状を反映していると思います。
自然に接して自分なりに考えてみるという人が一定数いれば、こういう問題は限りなく見つかって国や自治体は対応に追われるはずです。
自然の中に人が入らないという事が今回のウイルス感染という出来事でも進んでいくわけですが、それは結果的に自然の荒廃を進める力になってしまうと心配しています。
人の目がなければ経済の視点でしか環境は評価されません。
人が楽しんだり、知る場所として保存するべき場所があり、それに触れるということが人の活動の活発さにどれくらい影響を与えるかの評価は簡単な数字では表せないでしょうから、数字を全て経済に還元する考え方の中に盛り込まれることはないでしょう。
自然をすっかり失って、人工物の中だけで生きる世界は経済的にもそれほど豊かにならないでしょう。
海の水、川の水、海岸の砂、山の土、それぞれの場所に棲む生き物に直に接する機会を保つことができれば、直感的に今起きていることが何なのか分かってくると思います。
それは結局、不安を解消し自分がどうすれば良いかということについての答えに繋がるはずです。
いろいろと大変な変化が起きていますが是非、自然と接する機会を保ち続けてください。

写真:久しぶりにグンカンドリに遭遇しました。コグンカンドリの幼鳥。(15日、根本)















写真:久しぶりにグンカンドリに遭遇しました。
コグンカンドリの幼鳥。(15日、根本)
以前のグンカンドリ科遭遇記事
2004年9月のカヤック日記
2012年8月のカヤック日記
2014年9月のカヤック日記(写真なし)
日記記事から6月に遭遇は今回初めてと気づきました。

メモ
南房総市南岸にてアカボシゴマダラ(チョウ)の飛来確認。(3日)
館山市のグンバイヒルガオ群落にてエビガラスズメ(ガ)の幼虫の食害および砂中への退避行動を確認。(21日)

お知らせ

○カヤックツアー再開について

先月のカヤック日記でお知らせしたとおり、7月1日以降のカヤックツアーのご予約受付を再開しております。
またツアーも催行可能な状況となりましたので、お知らせいたします。
ただし現時点でも感染者の増減は大変不安定ですので、ご予約頂いた日程までに感染拡大状況から判断し、中止及び休止をする場合があり得ますことをまず第一に予めご了解のうえでご予約ください。
その他、ご予約ご希望の方には注意事項と参加にあたってのお願いに関するご案内をご連絡いたしますので、まずはご希望日の日程をメールにてご連絡ください。
返信にてご案内をお送りします。
また本年1月から料金スケジュールなど変更をしましたので、以下ページにて再度ご確認ください。
※カヤックのページ
昨年までを平常とするなら現在の状況は平常とは言えませんが、海に来て太陽に当たり、海水に触れて汗を流すことの健康への良い影響を考えれば時間を作って海まで足を運んでいただく意味は少なくないと考えています。
皆様にお会いできるのを楽しみにしております。

○YouTubeにて以下アップ致しましたので、是非ご覧ください。













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